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第4章 集まれ仲間達

ダンジョン行こうぜ! -1-

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「えっ? 12にちで、レベル30⁈」
「たんじゅんけいさんで、1にち2.5レベルアップ……かのうなんですか? ししょう?」
「1にち3レベルあげりゃいいだけじゃん」

 わたくし達の中で、1番レベルの低いエンディ兄様とマックス様が問うことにエルドレッド様が、事もなげに言い切りました。

 何気にマックス様の問いより0.5レベル上がっている辺りに、彼がそれを如何に簡単なことだと認識しているのかが分かります。

「エンディにはアリィが、マックスにはルナが、リリエンヌとフランには、おれがつねについてるかたちになるからしんぱいすんな。それより、ほんめいのヴェスタハスラムへんきょうはくりょうは、モンスのレベルも28オーバー、ベーターグランディアへいにいたっては、しょうへいクラスに40、50のレベルもちがいてもふしぎじゃない」

 あくまでもレベルを上げるのは、ヴェスタハスラム辺境伯領での戦闘を想定してのことだと言われて、エンディ兄様とマックス様のお顔も引き締まりました。

「たいじんせんは、かのうなかぎり、えんきょりこうはんいまほうこうげきで、そくめつするつもりではいるが、それでも。アルフレッドうつフラグせんのメインせんじょうが、ヴェスタハスラムへんきょうはくりょうになることがわかってるいじょう、レベル30にみたないものをつれていくわけにはいかない」

 ダンジョンでの戦いならば、最悪、撤退という手段も取れるでしょう。

 ですが、ヴェスタハスラム辺境伯領での戦いは、わたくし達が退けば、その後ろに居る者達が壊滅するという未来が確定しているのですから、敗北まけは許されないのです。

「つれていけないのなら、とうぜん、おうとで、るすばんしてもらうことになる。アリィは、あと8レベル。フランが、あと15。ルナが、あと19、リリエンヌが、あと20。エンディとマックスは29ある」

 遠い。

 後15レベルアップが、わたくしにとっては途轍もなく遠く感じます。

 けれど、アルフレッド様をお助けしたいのは、誰よりもまず、わたくしなのです。

 それを叶える為ならば、上げてみせようじゃございませんの、後レベル15程度!

 女は度胸ですわ!

「かのうなんですか? じゃ、ねぇ。さんかはしたい、だけどしにたくもねぇ、そうおもうなら、やれ。アルフレッドは、げんじてんでもうレベル30あるはずだぞ?」
「それは、かれがへんきょうはくりょうで、もうじっせんをつんでるからってこと?」
「そうだ」

 エンディ兄様の質問に、エルドレッド様の端的なお答えが返ります。

「ベーターグランディアとのこっきょうまもるってことは、ねんれいも、せいべつも、かいきゅうも、なにひとつやくにたたないせかいで、まものだけじゃなく、じぶんとおなじにんげんをじぶんのてでころして、いきぬくってことと、どうぎだ。りょうぐんへいしのかんがえかたや、しせいそのものは、ぐんたいきはんだが、こころいきはむしろ、ようへいや、ぼうけんしゃのそれにちかいとおもっていいだろう」
「ぼうけんしゃのこころいき、ですか?」

 マックスさまの問いかけに、軽く肩を竦めながら同時に小さく右へと首を傾げてみせるエルドレッド様。

 よく見る彼の仕草なので、きっと癖なのでしょうね。

「くたばったヤツに、わけまえはでねぇ。そういうせかいだからな。ああ……とうぞくとかも、そうかもな?」
「………」

 分け前。

 この場合は、給与とか報酬だけでなく、敵から得られる様々な物、全てを指すのでしょう。

「しなないことが、だいぜんていなんだから、とうぜん、あらゆるいみと、あらゆるばめんでの、つよさがもとめられる。うまれたときから、そのさいぜんせんである、こっきょうのとりででそだったアイツだ。じょうしきでかんがえたって、レベルがひくいわきゃあねぇ」
「そうですわね。サブスト “へんきょうはくりょうのらくじつ” では、アルフレッドさまの3さいじてんでのレベルは、すいていで32から35といわれておりましたわ」
「ああ。じっさいみてみないとわからないが、そのくらいないと、ここまでいきのこれてはいねぇだろうからな」

 ゲーム内で自分のキャラレベルを上げる時にはレベルを3つとか、特に深く考えないで済む事柄でした。

 クリアに必要だから上げる。

 認識としては、その程度。

 ですが、昏森塚くらもりづかの地下迷宮で、それを体験済みの今、その3つを上げ続けるのが、如何に大変で、覚悟を要し、自分の中の恐怖を克服することが必要なのかは分かります。

 特に、わたくしとお姉様は、初級ダンジョンである昏森塚から始められましたが、エンディ兄様とマックス様は、最初からレベル15以上推奨の王都近郊ダンジョンからスタートです。

 分からないゆえの怖さ、というものも当然あるだろうと推察いたしますわ。

「ねぇ」

 静まり返ってしまった場にルナが呼びかけの言葉を発して、ご自分へと注目を集められました。

「わたくし、アルファードゥルークにいたときから、ぶきやぼうぐ、まどうぐなんかを、いつか……やくにたつときがくれば、っておもって、いくつか、つくっておりましたの。よろしければ、それを、みなさまにつかっていただきたいのですわ!」

 ドレスについている隠しポケットからコインケースみたいな、小さな皮袋を摘み出して告げた彼女の言葉にエンディ兄様とマックス様、そしてリリエンヌ様が不思議そうなお顔をして、目を瞬かせておられました。

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