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第4章 集まれ仲間達
休憩のついでに -4-
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「ならいっか。ねぇ、アリィ。ぼくもキミにあーんしてたべてほしいな?」
「わたしもよ♡ エンディ、たべさせっこしましょ? はい、あーん♡」
「いいよ? ならアリィも、あーんてして?」
「あーん♡」
エンディミオン殿下とアリューシャ様は、そんな会話をしながらお互いが、ご自分のお皿から切り分けたパンケーキを食べさせ合っていらっしゃいました。
「……おはなしがすすみませんので、エンディにいさまとアリューシャおねぇさまは、おさらがカラになるまで、あのままほうちさせていただくとして。リリエンヌさま。さきほどのステータスのことなのですが?」
フランソワーヌ様が最早、止める気ゼロみたいな表情とお声で言い置いてから、あらためてもう1度、と言った風情でわたくしに問われます。
「あ、はいっ。わたくし、まだきょうかいに、もうでたことが、いちどもございませんので、どうやったらおみせできるのか、おおしえくださるとたすかります」
「そういうことでしたら……エルドレッドさま、リリエンヌさまにステータスボードのだしかたをごきょうじいただけますかしら?」
「ほいよ。とりあえず、リリエンヌもフランもパンケーキくっちまいな。べつにそれからでもだいじょうぶだろ?」
「はい」
「わかりましたわ」
エルドレッド様とフランソワーヌ様のお話し合いによって、ステータスの出し方を習うのは、軽食が済んでからとなりました。
「あ、エル。それぼくもおしえて?」
「おまえは、そのままアリィにならえ」
そのまま、と言う言葉の示す意味が、交差されたフォークと突き刺されたパンケーキに向いているような調子でエルドレッド様が答えます。
「それもそうだね」
エンディミオン殿下は、すぐに納得した返事をして、こちらをチラ見なさっていた視線をアリューシャ様に真っ直ぐ向け直しました。
「って、ことだから、ぼくにはアリィがおしえてね?」
「はぁい♡」
お2人は、プレ・デビュタントの時に婚約者となることを正式に発表なさるようですが、こんな様子を見せられたら他家令嬢の親御さん達は、正妃の座を諦めざるを得ないでしょうね。
ぼんやりとそんなことを考えながら、わたしも目の前のお皿へ乗るものを口へ運びます。
先程までは、フルーツもルルアザミの蜜も紅茶ですらも損なって感じられていた甘みが、今は、ちゃんと美味しく思えます。
(……知らなかった。美味しいって感じるのは、味だけが重要なんじゃないのね。楽しいと嬉しいも美味しいの仲間で、ちゃんと感じる為には必要なことだったんだわ……)
これまで味なんて二の次で、取り敢えず生かしておくために、死なない程度で与えられていた食事に対して、楽しさも嬉しさも求めていなかった筈なのだけれど。
「はい、リリエンヌ。あたらしいこうちゃいれたから、のんで」
「っ!」
傍にコトリ、と置かれたカップから柔らかな紅茶の香気がルルアザミの甘さを加えて立ち上り、わたしは、カップから視線を上げてエルドレッド様を見詰めます。
笑顔と共に、ほんの少しだけ傾けられた首の動きにエルドレッド様が声に出さず、紅茶を勧めてくださっているのが、何となく分かりました。
「ありがとうぞんじます、エルドレッドさま。いただきます!」
1つずつ、1つずつ、増えて積み重なっていく、わたしの「嬉しい」を齎してくれる彼のことを好きになっているのだと、最初に自覚したのは、この時でした。
「わたしもよ♡ エンディ、たべさせっこしましょ? はい、あーん♡」
「いいよ? ならアリィも、あーんてして?」
「あーん♡」
エンディミオン殿下とアリューシャ様は、そんな会話をしながらお互いが、ご自分のお皿から切り分けたパンケーキを食べさせ合っていらっしゃいました。
「……おはなしがすすみませんので、エンディにいさまとアリューシャおねぇさまは、おさらがカラになるまで、あのままほうちさせていただくとして。リリエンヌさま。さきほどのステータスのことなのですが?」
フランソワーヌ様が最早、止める気ゼロみたいな表情とお声で言い置いてから、あらためてもう1度、と言った風情でわたくしに問われます。
「あ、はいっ。わたくし、まだきょうかいに、もうでたことが、いちどもございませんので、どうやったらおみせできるのか、おおしえくださるとたすかります」
「そういうことでしたら……エルドレッドさま、リリエンヌさまにステータスボードのだしかたをごきょうじいただけますかしら?」
「ほいよ。とりあえず、リリエンヌもフランもパンケーキくっちまいな。べつにそれからでもだいじょうぶだろ?」
「はい」
「わかりましたわ」
エルドレッド様とフランソワーヌ様のお話し合いによって、ステータスの出し方を習うのは、軽食が済んでからとなりました。
「あ、エル。それぼくもおしえて?」
「おまえは、そのままアリィにならえ」
そのまま、と言う言葉の示す意味が、交差されたフォークと突き刺されたパンケーキに向いているような調子でエルドレッド様が答えます。
「それもそうだね」
エンディミオン殿下は、すぐに納得した返事をして、こちらをチラ見なさっていた視線をアリューシャ様に真っ直ぐ向け直しました。
「って、ことだから、ぼくにはアリィがおしえてね?」
「はぁい♡」
お2人は、プレ・デビュタントの時に婚約者となることを正式に発表なさるようですが、こんな様子を見せられたら他家令嬢の親御さん達は、正妃の座を諦めざるを得ないでしょうね。
ぼんやりとそんなことを考えながら、わたしも目の前のお皿へ乗るものを口へ運びます。
先程までは、フルーツもルルアザミの蜜も紅茶ですらも損なって感じられていた甘みが、今は、ちゃんと美味しく思えます。
(……知らなかった。美味しいって感じるのは、味だけが重要なんじゃないのね。楽しいと嬉しいも美味しいの仲間で、ちゃんと感じる為には必要なことだったんだわ……)
これまで味なんて二の次で、取り敢えず生かしておくために、死なない程度で与えられていた食事に対して、楽しさも嬉しさも求めていなかった筈なのだけれど。
「はい、リリエンヌ。あたらしいこうちゃいれたから、のんで」
「っ!」
傍にコトリ、と置かれたカップから柔らかな紅茶の香気がルルアザミの甘さを加えて立ち上り、わたしは、カップから視線を上げてエルドレッド様を見詰めます。
笑顔と共に、ほんの少しだけ傾けられた首の動きにエルドレッド様が声に出さず、紅茶を勧めてくださっているのが、何となく分かりました。
「ありがとうぞんじます、エルドレッドさま。いただきます!」
1つずつ、1つずつ、増えて積み重なっていく、わたしの「嬉しい」を齎してくれる彼のことを好きになっているのだと、最初に自覚したのは、この時でした。
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