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第4章 集まれ仲間達
調薬開始 -4-
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「いい? リリエンヌ。ここからは、わたしたちはきほん、ちょうやくざいりょうじたいには、てをだせなくなるわ。だけど、つくるかずが、かずなのもあって、さぎょうは、きっとたいへんになるとおもう」
アリューシャ様が、前提となる注意事項をわたしに確認させているように仰ったことに、ゆっくりとした頷きだけを返す。
自分の実力以上の高みに挑もうとしているのは、分かっている。
自らその高さの基準を上げるような望みを抱いているのだということも。
「だけど、ざいりょうをじゅんばんにこんごうしていくかていを、なんどもくりかえすことによって、アンタのちょうやくレベルがあがって、さいしゅうてきにルルアザミのみつだまをつくるだんかいまでくれば、もんだいなく、オリジナルちょうごうをせいこうできるだけのところまでこれるはずよ」
「わかりました」
聖女であるアリューシャ様がそう仰るなら、大して物を知らずここまで生きてきてしまったわたしが、いらぬ疑問や疑念を差し挟むよりずっと確かなのだろうと思って、答えを返した。
エルドレッド様が集めてくださって、エンディミオン殿下を始め、アリューシャ様や城の皆様が準備してくださった物が並ぶ長机。
その前にたった1つだけ置かれた、背凭れのない作業用の椅子へと腰掛け、目を閉じた。
深呼吸。
最初にしなくてはいけないのは、15種類の素材であったものを皆様が処理してくださって、5種類の材料にまで纏められたものを混合して3つの調薬原料へと仕上げること。
ルルアザミの蜜珠を調薬するのは、その調薬原料を全て作り終えてからになる。
もう1度、深呼吸。
大丈夫、わたしは、出来る。
お母様亡き後、お父様とお兄様に無理矢理作らされて来た様々な魔法薬。
去年、まだ2歳だったわたしには難しいことだらけで失敗ばかりしていた。
その度に素材を無駄遣いしたからと叩かれて、食事を抜かれて、どんなに泣いても叫んでも余計に煩いと怒鳴られるだけで状況は悪化することしかしなかった。
未だに、難しい魔法薬の調合だってあるし、お父様やお兄様に殴られたり鞭打たれたりするのもなくなりはしなかったけれど、その経験が、今は、わたしの力になる。
悲しかったし、痛かったし、そんな扱いをされるのだって嫌だったけれど、そんな状況でも魔法薬を作り続けたことは、無駄にはならなかった。
ラザエリーの雫が、ルルアザミの蜜珠によって無効化されても長期に渡る薬物摂取によって、お父様もお兄様も屋敷の皆も、完全に元の……昔の優しかった皆にすぐ戻れる訳じゃない。
それは、たかが1年程度でも魔法薬を作り続けてきて、その効能を……恐らくは、持っているのだろう調薬スキルによって、理解しているわたしにも感じ取れていた。
わたしが、きっと訪れることなんかないと諦めながら夢に見ていた状況には、やっぱり、なることはないのだと、今は分かる。
それでも。
わたしは、わたしの出来る全てのことをやり切ったと胸を張って言い切りたい。
例え、もう2度とお父様とお兄様が、わたしを認めてくれることはなくとも。
大丈夫。
わたしは、もう、大丈夫。
3回目の深呼吸をして、わたしは、ゆっくり目を開けた。
「ちょうやく、はじめます!」
意を決し、わたしはそれを宣言した。
アリューシャ様が、前提となる注意事項をわたしに確認させているように仰ったことに、ゆっくりとした頷きだけを返す。
自分の実力以上の高みに挑もうとしているのは、分かっている。
自らその高さの基準を上げるような望みを抱いているのだということも。
「だけど、ざいりょうをじゅんばんにこんごうしていくかていを、なんどもくりかえすことによって、アンタのちょうやくレベルがあがって、さいしゅうてきにルルアザミのみつだまをつくるだんかいまでくれば、もんだいなく、オリジナルちょうごうをせいこうできるだけのところまでこれるはずよ」
「わかりました」
聖女であるアリューシャ様がそう仰るなら、大して物を知らずここまで生きてきてしまったわたしが、いらぬ疑問や疑念を差し挟むよりずっと確かなのだろうと思って、答えを返した。
エルドレッド様が集めてくださって、エンディミオン殿下を始め、アリューシャ様や城の皆様が準備してくださった物が並ぶ長机。
その前にたった1つだけ置かれた、背凭れのない作業用の椅子へと腰掛け、目を閉じた。
深呼吸。
最初にしなくてはいけないのは、15種類の素材であったものを皆様が処理してくださって、5種類の材料にまで纏められたものを混合して3つの調薬原料へと仕上げること。
ルルアザミの蜜珠を調薬するのは、その調薬原料を全て作り終えてからになる。
もう1度、深呼吸。
大丈夫、わたしは、出来る。
お母様亡き後、お父様とお兄様に無理矢理作らされて来た様々な魔法薬。
去年、まだ2歳だったわたしには難しいことだらけで失敗ばかりしていた。
その度に素材を無駄遣いしたからと叩かれて、食事を抜かれて、どんなに泣いても叫んでも余計に煩いと怒鳴られるだけで状況は悪化することしかしなかった。
未だに、難しい魔法薬の調合だってあるし、お父様やお兄様に殴られたり鞭打たれたりするのもなくなりはしなかったけれど、その経験が、今は、わたしの力になる。
悲しかったし、痛かったし、そんな扱いをされるのだって嫌だったけれど、そんな状況でも魔法薬を作り続けたことは、無駄にはならなかった。
ラザエリーの雫が、ルルアザミの蜜珠によって無効化されても長期に渡る薬物摂取によって、お父様もお兄様も屋敷の皆も、完全に元の……昔の優しかった皆にすぐ戻れる訳じゃない。
それは、たかが1年程度でも魔法薬を作り続けてきて、その効能を……恐らくは、持っているのだろう調薬スキルによって、理解しているわたしにも感じ取れていた。
わたしが、きっと訪れることなんかないと諦めながら夢に見ていた状況には、やっぱり、なることはないのだと、今は分かる。
それでも。
わたしは、わたしの出来る全てのことをやり切ったと胸を張って言い切りたい。
例え、もう2度とお父様とお兄様が、わたしを認めてくれることはなくとも。
大丈夫。
わたしは、もう、大丈夫。
3回目の深呼吸をして、わたしは、ゆっくり目を開けた。
「ちょうやく、はじめます!」
意を決し、わたしはそれを宣言した。
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