お金がないっ!

有馬 迅

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第2章 ロウラフェンド王家亡命編

割と普通に酷かった

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 散々にポーションを眺め回していた師団長は、やっとその内の1本を開けて飲み干し、負っていた怪我を治してくれた。

 やれやれ。

「有り難い……残りの1本は、湯から上がって来られた姫様に差し上げてもよろしいか?」
「彼女は湯あみだけで治る程度の傷だ」
「では! 家宝として頂戴いた」
「いくらでも出せるから何かあったらすぐ使え」

 ポーションって薬だよな?

 そんでもって、一応飲み物なんだよな?

 腐ったらどうすんだよ⁈

 という俺の心配は、師団長の言葉を遮る形で、全く違うセリフになって、ズバッと投げかけられていた。

「……もったいなく、て、です……ね」

 あ……俺、これ、知ってる。

 この人(?)きっと、あれだ。

 勿体無い勿体無いってあれこれ使わずにとっといて、結局使わないまんま、押し入れとかタンスとか収納BOXとかの肥やしを増やしまくるパターンの人。

「千切れたり斬り飛ばされたりした四肢は、それでは繋がらぬ。効能はその程度だ」
「ですが、我らには最高級に位置する貴重品です! 低級ポーションや、下級ポーションすらも……最早、買える金がないのですから」

 お金がない。

 うん、何かついさっきも王妃様ともその話しした気がするなぁ。

「ここで、外の世界の貨幣に何の意味や価値があると?」
「うっ……たしかに……その、何と申しましょうか……蝗人と芥人達が、何もかも食い尽くしてしまうため、我らの世界では、ありとあらゆるものが値上がりし続けているもので、つい……」

(いなご人は何と半分なのか分かるけど、あくた人って、何と人が半分ずつの種族なんだ?)

【人型蜚蠊ゴキブリ種です】

 うえっ⁈

 えっ? 待って⁈ も、もしかして、ムッシー連邦のゴキ=ラ=キング首長って……?

【人型蜚蠊ゴキブリ種のおさ個体になります】

 うわぁ……マジで殺虫剤案件だった……。

 ゴ○ジ○ットとか、バ○サ○とか、虫○ロリとか、こっちで手に入んの?

 つか、その手のモン効くの⁈

【有効ではありますが、こちらの世界では同様の効果を齎す薬剤が手に入りません。万能花葉で作成することは可能です】

 はい、俺の役割見えてきたよー?

 殺虫剤大量生産して、こっちの世界で撒けばいいんじゃねぇの、これ?

 ところでさ?

「虫人とやらは、何の為に他国への侵略なぞ始めたのだ? 食料問題か?」
「いえ、それもあるかもしれませんが、主目的は違います。我らもそうですが、奴等も半分は人なので」

 師団長が、やや言い難そうに口にすることが、何を差しているのか分からなくて黙したまま彼を見詰めた。

「えっと、そのー、ようするに、他種族を利用した、繁殖行為の為かと? 同種ばかりで交配しておると異常種や疾患種ばかりが生まれてくるようになってしまいますので、その……強制交配とか、産み付けて生まれた子供がすぐ摂取できる栄養源にするとか、そういう……」
「なるほど。そういう話しなのか」

 割と普通に酷い扱いをする為だった。

 しかも師団長の口ぶりを推察するに交配=必要とするのは雄性、苗床=必要とするのは雌性+生まれた子供≒ご飯、という印象があるので、侵略で殺さずに捕らえられた人達は男女の別なく、そう言う目に遭うんだろうな、と分かってしまうのが、また嫌な感じだ。

 これさー?

 下手に繁殖されまくる前にさー?

 その計画ごとブッ潰すんデストロイでよくない?

 ダメ?

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