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第5章 サディウス王国編
諦めないでいること
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翌日。
一旦、塔の前に集合してこれからの動きを再確認した一同は、本日の即応待機に当てられている隊の隊長であるアルビウスに塔の鍵を開けてもらって中へと足を踏み入れた。
「……やっぱり何も感じないのよねぇ。魔王を直接見たらちょっとは分かるようになるかしら?」
「言われてみれば、私も見たのは艦のモニターとか照準器越しでしたわね……」
「まぁ、アレは魔王認定されて指名手配こそしてはいたけど厳密に言うと魔王として降誕してた訳じゃないからねー。けど、高過ぎる魔力の外的影響を考えれば、スコープ越しでも直視出来ただけで大したもんだと思うよ?」
2人の言葉に首の後ろを嫌そげに摩りながらスガルが答える。
「焦んなくても、すぐ拝むことにはなるさ。お姫さん。ヤツが少しでも動いたらすぐ分かるように追跡位置情報は表示しとけよ?」
「分かりましたわ」
「アストレイ、確認機の使い方と追加した機能の把握は出来たな?」
「任せといて。バッチリよ」
確認した2つの事柄へ、フィリアとアストレイが共に是を返したのを受け、ブルーはムスキアヌスに目を向けた。
「今回の転移は王子が一緒だから転移先を艦には出来ねぇ。と言うか、やったらやったで色々問題出るからやらねぇ。なんで、転移は王城の前庭に出るようにセットしてあるから、そこも忘れんなよ?」
「ええ」
「大丈夫よ。城内警備してるフィクトルちゃんの隊も対応してくれるそうだから、アンタ達がしくじってなけりゃ危険はないわよっ!」
バシバシと音が鳴る勢いでスガルとブルーの肩を景気付けするように叩いた。
「お前……今回、成り行きとはいえ、お姫さんと王子両方の護衛なんだからな? 頼むぞ? 割とマジで?」
「何よぅ! お姉兄様だってやる時ゃやるのよぉ?」
「そっちゃ期待してねぇから勇者として、やる時ゃやれよ」
魔王戦初陣と言うこともあってか、どうしても心配が拭えないらしいブルーが言い募る。
「ほんとアンタの小言って内容がまんま心配性お父さんよねぇえ」
アストレイがしみじみと口にしたことにスガルとフィリアが思わず吹き出した。
フィリアは以前、彼の言葉そのままの印象を抱いたことがあったので「やっぱりそう思う人、他にも居るんだ!」と思ってしまったからの笑いだった。
「笑うな、コラ。誰がお父さんだ」
「はいはい。そろそろ始めるよー?」
言いながらも笑いが引っ込まないスガルの頭を軽く小突いて、口には出さないまま「お前もだ」という意思表示だけしてみせたブルーは、それでも言葉自体には従って踵を返した。
大人しく近くに立っていただけだったムスキアヌスもアストレイとフィリアの側に無言のまま移動する。
「作戦開始! 皆、無事に戻るよ!」
「了解」
「ええ!」
「はいっ!」
「…⁈………お、おう!」
1人返事をしなかったムスキアヌスに4人の視線が集まって、一瞬、気圧された彼だったが何を求められているのかは場の空気から流石に理解できたらしく少し間を空けてしまってから応を返した。
…決して、空気が読めない人間なのではなかったらしい。
それで気が済んだのかスガルとブルーは外へ出てすぐ飛翔魔法を発動すると港の方へと飛んで行き、アストレイとフィリアは塔内の奥にある階段へと足を向けた。
「殿下、ご無事で」
「うむ。そなたらも警備を頼む。特に公爵や叔父上達、その派閥の者達は決して通してくれるなよ?」
「かしこまりました」
「では行ってくる」
アルビウスと短いやり取りを交わして、ムスキアヌスもまたアストレイとフィリアが待つ階段へと向かった。
塔も階段も素人目にはどうということのない普通の階段で、階下に着いても魔物が出るとかいうこともなく。
スガルやブルーのように魔王の気配や魔力がよく分からない3人には、ただただひたすらに下へと降りていくだけの道程が続いていた。
「ねぇ、殿下ちゃん。聞いてもイイ?」
敬う気があるのかないのか不明な呼びかけ方をされたムスキアヌスは、それでも階段から続く廊下へ降り立ちながら答える。
「何だ?」
「フィリアちゃんのドコ好きになったの?」
「……本人が居る所で聞くか? それを?」
「大丈夫よ。魔王と塔に気が行ってて聞こえてないわ。実際、あれだけ先に行っちゃってるし?」
「そなた、姫の護衛であろう? 追いかけようとは思わぬのか?」
「国王様が言ってたわ。この塔は、王族に罪人が出た時の幽閉に使う施設だから、巡回ルートにも入ってるし定期的に手入れもしてるって。だからこそこれまで魔王なんてもんが居るとは思わなかったんでしょうしね?」
それでこの勇者は、いやに余裕があったのかと思う反面、それでも警戒を怠らないフィリアは相当に真面目なのだろうな、と。
「で? なんで?」
他人の恋バナにデバガメする気満々な声音と表情にムスキアヌスは息をつく。
「私とて王族だ。幼少の砌より縁談話しは幾つかあった。だが、どれもこれも王族の、それも次期王との政略結婚であることを度外視して断られた。理由は様々あったようだが、披露目の時期になればそれが何故だったのかは、各国の姫達や国の内外問わずな令嬢達の顔や態度を見れば嫌でも分かった」
あの嫌悪と侮蔑と嘲笑の含まれた見下げるような視線は、恐らく一生忘れない。
チビでデブで顔中出来物だらけで、服も靴も己を結婚させる訳にはいかない叔母のお仕着せで、センスは古く、色使いも下品で着ている物にも本人自身の姿にも清潔感など欠片もない。
礼儀もマナーもろくすっぽ習っていないので、どこの貧民が王子に成り済まして入って来たのか、と陰口を叩かれたのも聞こえていた。
「フィリア姫だけだったのだ。普通に話してくれたのは。私が話しかけてすぐ顔を背けなかったのも、嫌そうに返事をしなかったのも、彼女だけだった。叔母と叔父に唆されてその気になり、もう1度彼女の国へ無理矢理押しかけて、自分のものになれと馬鹿みたいなことを口にするまでは、本当に……彼女だけが普通に……」
普通に接してくれること、それだけが当時の彼にとってどれだけ嬉しいことだったのかが、その言葉に滲んでいた。
「あの時の彼女とのやり取りを思い出してみても彼女が出来ない、応じられないと理由を述べて断っていた時点で私が引いて、ではせめて友誼を結ぼうとでも言っていたらもっと違う結果になっていたのではないかと今は思う。だが、当時の愚かな私は叔父と叔母の言葉を鵜呑みにしていて一歩も引かなかった。思い通りにならぬことなどある訳がないと、何の根拠もなく思い込んでいたのだ」
そう。
何の根拠もなく。
これは、国王・宰相・騎士団長の3人が「覚醒した」などと捉えている今の彼と昔の彼の決定的な違いの1つだった。
「何故、とか。どうして、とか。当時の私は深く追求して考えなかった。そんなことをする向こうが悪いのだから考えなくてよいと言われて、その方が多分、楽だったし。全て相手の所為にしてしまえたから考えることをやめてしまったのだ。考えること…唯一許されていた筈の自由で、1番やめてはいけないことを私は捨ててしまった」
話しながら足を進めている2人は、フィリアの背を追いかけるようにして廊下を進み、次の階段を降りだす。
「けれど、不思議だな。他の令嬢達と同じように私を毛嫌いするようになった彼女を私は諦められなかった。同じ言葉をぶつけられても嫌いになれなかった。何だ結局、彼女も同じだったんじゃないかと思えなかった。私が無理強いしようとした所為でそうなってしまったのだと、心の何処かでそう思っていたかったのかもしれん」
独白するような響きで続く話の間にも下階の廊下と石段は曲がりくねりながら伸びていて、3人は階下へ、階下へと進んでいく。
「私の気の所為でなければ、それは当たりだったのだと思う。今の姫からは、私への嫌悪を感じない。私が、一からやり直そうとしているのだけは認めてくれたのではないかと思う。嫌いなものは嫌い。1度嫌いになったらそう簡単に嫌い以外にはならない。そのような娘が多い中で、こんないい女を諦めてしまったら、それこそ私は愚か者ではないか。違うか?」
笑みさえ垣間見せながら問われたことに、アストレイもまた笑顔を返した。
「いいえ。それが殿下ちゃんの素の心根だっていうなら、前のアナタよりずっと素敵よ♡ お肌だってキチンとケアして清潔魔法と治癒の魔法を使えばキレイに治るわ。身長だって、ちょっと乱暴だけど伸ばす方法あるのよ?」
「本当か? やはり世の中には私の知らないことばかりだな。全部……何もかも諦めたつもりでいたが、ただ1つ、姫のことを諦めなかったというだけで、私はこんなにも救われた。私が自ら悟って動き出すまで静かに見守って、待っていてくれた父上の心も知ることが出来た。感謝せねばな」
「大事よ、それ。忘れないでね?」
「うむ」
アストレイの言葉にムスキアヌスが素直な首肯を返した時、不意にフィリアが階段前で足を止めた。
「アストレイ様、ムスキアヌス殿下。封印の扉は次の階のようですわ」
「分かったわ。ここからは念の為、離れないようにして行きましょう」
「魔王の封印か。開ける手順を間違えぬように気をつけねばならんな」
「あら。手順なんてあるの?」
「ああ、大丈夫だ。きちんと覚えておるし、間違えても最初からやり直しになるだけで他に何かが起きる訳ではない」
「それでも想定外のことが起きると焦ってしまうものですわ。慎重に参りましょう」
「うむ」
フィリアの言葉に力強く頷いて、階段を降り始めたムスキアヌスについて行く形でアストレイとフィリアもまた、石段を降っていった。
一旦、塔の前に集合してこれからの動きを再確認した一同は、本日の即応待機に当てられている隊の隊長であるアルビウスに塔の鍵を開けてもらって中へと足を踏み入れた。
「……やっぱり何も感じないのよねぇ。魔王を直接見たらちょっとは分かるようになるかしら?」
「言われてみれば、私も見たのは艦のモニターとか照準器越しでしたわね……」
「まぁ、アレは魔王認定されて指名手配こそしてはいたけど厳密に言うと魔王として降誕してた訳じゃないからねー。けど、高過ぎる魔力の外的影響を考えれば、スコープ越しでも直視出来ただけで大したもんだと思うよ?」
2人の言葉に首の後ろを嫌そげに摩りながらスガルが答える。
「焦んなくても、すぐ拝むことにはなるさ。お姫さん。ヤツが少しでも動いたらすぐ分かるように追跡位置情報は表示しとけよ?」
「分かりましたわ」
「アストレイ、確認機の使い方と追加した機能の把握は出来たな?」
「任せといて。バッチリよ」
確認した2つの事柄へ、フィリアとアストレイが共に是を返したのを受け、ブルーはムスキアヌスに目を向けた。
「今回の転移は王子が一緒だから転移先を艦には出来ねぇ。と言うか、やったらやったで色々問題出るからやらねぇ。なんで、転移は王城の前庭に出るようにセットしてあるから、そこも忘れんなよ?」
「ええ」
「大丈夫よ。城内警備してるフィクトルちゃんの隊も対応してくれるそうだから、アンタ達がしくじってなけりゃ危険はないわよっ!」
バシバシと音が鳴る勢いでスガルとブルーの肩を景気付けするように叩いた。
「お前……今回、成り行きとはいえ、お姫さんと王子両方の護衛なんだからな? 頼むぞ? 割とマジで?」
「何よぅ! お姉兄様だってやる時ゃやるのよぉ?」
「そっちゃ期待してねぇから勇者として、やる時ゃやれよ」
魔王戦初陣と言うこともあってか、どうしても心配が拭えないらしいブルーが言い募る。
「ほんとアンタの小言って内容がまんま心配性お父さんよねぇえ」
アストレイがしみじみと口にしたことにスガルとフィリアが思わず吹き出した。
フィリアは以前、彼の言葉そのままの印象を抱いたことがあったので「やっぱりそう思う人、他にも居るんだ!」と思ってしまったからの笑いだった。
「笑うな、コラ。誰がお父さんだ」
「はいはい。そろそろ始めるよー?」
言いながらも笑いが引っ込まないスガルの頭を軽く小突いて、口には出さないまま「お前もだ」という意思表示だけしてみせたブルーは、それでも言葉自体には従って踵を返した。
大人しく近くに立っていただけだったムスキアヌスもアストレイとフィリアの側に無言のまま移動する。
「作戦開始! 皆、無事に戻るよ!」
「了解」
「ええ!」
「はいっ!」
「…⁈………お、おう!」
1人返事をしなかったムスキアヌスに4人の視線が集まって、一瞬、気圧された彼だったが何を求められているのかは場の空気から流石に理解できたらしく少し間を空けてしまってから応を返した。
…決して、空気が読めない人間なのではなかったらしい。
それで気が済んだのかスガルとブルーは外へ出てすぐ飛翔魔法を発動すると港の方へと飛んで行き、アストレイとフィリアは塔内の奥にある階段へと足を向けた。
「殿下、ご無事で」
「うむ。そなたらも警備を頼む。特に公爵や叔父上達、その派閥の者達は決して通してくれるなよ?」
「かしこまりました」
「では行ってくる」
アルビウスと短いやり取りを交わして、ムスキアヌスもまたアストレイとフィリアが待つ階段へと向かった。
塔も階段も素人目にはどうということのない普通の階段で、階下に着いても魔物が出るとかいうこともなく。
スガルやブルーのように魔王の気配や魔力がよく分からない3人には、ただただひたすらに下へと降りていくだけの道程が続いていた。
「ねぇ、殿下ちゃん。聞いてもイイ?」
敬う気があるのかないのか不明な呼びかけ方をされたムスキアヌスは、それでも階段から続く廊下へ降り立ちながら答える。
「何だ?」
「フィリアちゃんのドコ好きになったの?」
「……本人が居る所で聞くか? それを?」
「大丈夫よ。魔王と塔に気が行ってて聞こえてないわ。実際、あれだけ先に行っちゃってるし?」
「そなた、姫の護衛であろう? 追いかけようとは思わぬのか?」
「国王様が言ってたわ。この塔は、王族に罪人が出た時の幽閉に使う施設だから、巡回ルートにも入ってるし定期的に手入れもしてるって。だからこそこれまで魔王なんてもんが居るとは思わなかったんでしょうしね?」
それでこの勇者は、いやに余裕があったのかと思う反面、それでも警戒を怠らないフィリアは相当に真面目なのだろうな、と。
「で? なんで?」
他人の恋バナにデバガメする気満々な声音と表情にムスキアヌスは息をつく。
「私とて王族だ。幼少の砌より縁談話しは幾つかあった。だが、どれもこれも王族の、それも次期王との政略結婚であることを度外視して断られた。理由は様々あったようだが、披露目の時期になればそれが何故だったのかは、各国の姫達や国の内外問わずな令嬢達の顔や態度を見れば嫌でも分かった」
あの嫌悪と侮蔑と嘲笑の含まれた見下げるような視線は、恐らく一生忘れない。
チビでデブで顔中出来物だらけで、服も靴も己を結婚させる訳にはいかない叔母のお仕着せで、センスは古く、色使いも下品で着ている物にも本人自身の姿にも清潔感など欠片もない。
礼儀もマナーもろくすっぽ習っていないので、どこの貧民が王子に成り済まして入って来たのか、と陰口を叩かれたのも聞こえていた。
「フィリア姫だけだったのだ。普通に話してくれたのは。私が話しかけてすぐ顔を背けなかったのも、嫌そうに返事をしなかったのも、彼女だけだった。叔母と叔父に唆されてその気になり、もう1度彼女の国へ無理矢理押しかけて、自分のものになれと馬鹿みたいなことを口にするまでは、本当に……彼女だけが普通に……」
普通に接してくれること、それだけが当時の彼にとってどれだけ嬉しいことだったのかが、その言葉に滲んでいた。
「あの時の彼女とのやり取りを思い出してみても彼女が出来ない、応じられないと理由を述べて断っていた時点で私が引いて、ではせめて友誼を結ぼうとでも言っていたらもっと違う結果になっていたのではないかと今は思う。だが、当時の愚かな私は叔父と叔母の言葉を鵜呑みにしていて一歩も引かなかった。思い通りにならぬことなどある訳がないと、何の根拠もなく思い込んでいたのだ」
そう。
何の根拠もなく。
これは、国王・宰相・騎士団長の3人が「覚醒した」などと捉えている今の彼と昔の彼の決定的な違いの1つだった。
「何故、とか。どうして、とか。当時の私は深く追求して考えなかった。そんなことをする向こうが悪いのだから考えなくてよいと言われて、その方が多分、楽だったし。全て相手の所為にしてしまえたから考えることをやめてしまったのだ。考えること…唯一許されていた筈の自由で、1番やめてはいけないことを私は捨ててしまった」
話しながら足を進めている2人は、フィリアの背を追いかけるようにして廊下を進み、次の階段を降りだす。
「けれど、不思議だな。他の令嬢達と同じように私を毛嫌いするようになった彼女を私は諦められなかった。同じ言葉をぶつけられても嫌いになれなかった。何だ結局、彼女も同じだったんじゃないかと思えなかった。私が無理強いしようとした所為でそうなってしまったのだと、心の何処かでそう思っていたかったのかもしれん」
独白するような響きで続く話の間にも下階の廊下と石段は曲がりくねりながら伸びていて、3人は階下へ、階下へと進んでいく。
「私の気の所為でなければ、それは当たりだったのだと思う。今の姫からは、私への嫌悪を感じない。私が、一からやり直そうとしているのだけは認めてくれたのではないかと思う。嫌いなものは嫌い。1度嫌いになったらそう簡単に嫌い以外にはならない。そのような娘が多い中で、こんないい女を諦めてしまったら、それこそ私は愚か者ではないか。違うか?」
笑みさえ垣間見せながら問われたことに、アストレイもまた笑顔を返した。
「いいえ。それが殿下ちゃんの素の心根だっていうなら、前のアナタよりずっと素敵よ♡ お肌だってキチンとケアして清潔魔法と治癒の魔法を使えばキレイに治るわ。身長だって、ちょっと乱暴だけど伸ばす方法あるのよ?」
「本当か? やはり世の中には私の知らないことばかりだな。全部……何もかも諦めたつもりでいたが、ただ1つ、姫のことを諦めなかったというだけで、私はこんなにも救われた。私が自ら悟って動き出すまで静かに見守って、待っていてくれた父上の心も知ることが出来た。感謝せねばな」
「大事よ、それ。忘れないでね?」
「うむ」
アストレイの言葉にムスキアヌスが素直な首肯を返した時、不意にフィリアが階段前で足を止めた。
「アストレイ様、ムスキアヌス殿下。封印の扉は次の階のようですわ」
「分かったわ。ここからは念の為、離れないようにして行きましょう」
「魔王の封印か。開ける手順を間違えぬように気をつけねばならんな」
「あら。手順なんてあるの?」
「ああ、大丈夫だ。きちんと覚えておるし、間違えても最初からやり直しになるだけで他に何かが起きる訳ではない」
「それでも想定外のことが起きると焦ってしまうものですわ。慎重に参りましょう」
「うむ」
フィリアの言葉に力強く頷いて、階段を降り始めたムスキアヌスについて行く形でアストレイとフィリアもまた、石段を降っていった。
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