恋愛短編集

あい

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3-1 ねぇ

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ねぇ、好きって言ったよね、私だけだって言ったよね


~ピロン♪
『ごめん、今日も残業で会えない』
「大丈夫だよ、無理しないでね」
『今度絶対埋め合わせするから!』

はぁ~と心の中でため息をつくくらい許してほしい

社会人1年目、デザイン会社に就職した私は来る日も来る日も仕事に明け暮れていた

雑務、打ち合わせ、修正、納期、もちろんやりたかった仕事なのだけど、ハードな毎日に疲弊しているのも事実で

そんな中の唯一の癒しが、大好きな彼だった

今の彼とは、大学の頃に出会って、付き合って2年になる
就職した業種は全く別だったけど、お互い頑張ろうねと鼓舞しあっていたのだ

でも、頑張れば頑張るほど会う時間が減っていたのも事実で

休みの日は、お互いの体力を回復させるために別で過ごす日も多くなったし、急遽仕事になることだって少なくなかった

それでも、たまに会えた日は本当に嬉しくて

好きで好きでたまらなくて、お出かけデートもお家デートも何をしても楽しかった

だから、これが正解だと思ってた、だって彼もきっとおなじだとおもってたから




元々会う予定だったこともあり、今日は残業しないつもりだったのに、なんとなく家で1人も寂しくて、次会う時にすんなり帰れるよう、少しだけ仕事をする

ーーーーーそうして、時刻は21:00

もう私だけだ
今日もしっかり残業してしまった

慌てて、帰り支度を整えて、会社を出る

コンビニでアイスでも買って帰ろうかなって、そんなことを考えながら駅に向かっていた

「…え?…」

見間違いだろうか、今ー

少し先に、大好きな彼にそっくりな後ろ姿が、見えた気がした





思わず、追ってしまった
あの姿が彼だったのかどうしても確かめたかった

辞めておけばいいのに、なんて、どこからか聞こえた気がするけど、その声よりも胸騒ぎの方が大きかった

走って、走って、着いた先には


彼だ
彼とーーーー知らない女の人だ


動悸と冷や汗が止まらない、だって、ここは、そういうホテルがいっぱいある場所で、彼とその女の人は腕を組んでて、今にもー

ねぇ

声に出したつもりだった、でもそれは声にならずに終わっていたらしい

私に見守られながら、2人はホテルに消えていった




それから、どうやって帰ってきたかおぼつかないけど、家には着けた

何がダメだった?
お互い仕事が忙しいんじゃなかったの?
会えた時はあんなに幸せそうだったのに
私だってもっとあなたと会いたかったのに

ねぇ、ねぇ

私のこと好きだったんじゃないの?


さっきのが嘘のように、玄関で崩れながら泣き叫んだ




今出せても遅いのにね








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