恋愛短編集

あい

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2-2 そっか another story

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最初に見つけたのは俺だったのに



同じクラスのあの子は、いつも本を読んでた

最初は、読みながら百面相する様子が面白くって、見つめていただけだけど

1冊読み終わった後、名残惜しそうな、でも満足そうに笑う姿が、とても綺麗だと思ってた

ー今度、話しかけてみようかな

なんて思った翌日には、あいつが話しかけてて

部活が同期のあいつは、男から見てもいいやつで

おまけにサッカーも上手いし、勉強もできる

そんなやつに先に話しかけられたら、俺なんか、話しかけれるわけねーじゃねーかって

ーなんで昨日、話しかけなかったんだろう

行き場のない気持ちを抱えたまま、毎日を過ごしてた



それからどんどん、あの子は可愛くなった

本を読む時以外にも、あいつと話す時は特に

他のやつは気づいてなかったけど、ずっと見てた俺からすれば、一目瞭然で

ーあぁ、俺がその相手になれたらな、なんて

負けるとわかって立ち向かえるほど、俺は強くなかった



「は?彼女できた?」

部活の休憩中に、あいつから落とされた爆弾に部員は大盛り上がりで

俺の心臓はあり得ないくらいの速さで脈打ってた

ー遂に、か

最悪だ、心の準備はしてたのに、この期に及んで俺はまだ、諦めてなかったのか

周りが茶化す声も聞きたくなくて、席を立とうとしたら

聞こえてきた名前はーーーーあの子のものではなかった




登校日、やっぱり話題はあいつの恋バナで持ちきりで

どうかあの子が来るまでに話終わりますようにと祈っていたけど、そんなうまいこといくわけもなく

入ってきたあの子は今まで見たことない、絶望した顔をしてた

そのまま、終わりの時間まであの子の表情は暗いままで

あいつが付き合った理由まで耳にしてしまい、走っていってしまった

下校の時間だから、誰も気にしてない

俺以外、誰も



居ても立っても居られなくて、あの子を追いかけた先は図書館で

学校で初めてきた場所だった

中に入ると、人から見えない隅っこで、あの子は泣いていた

ーどうしよう

俺はあいつみたいに、サッカーも上手くないし、勉強もできない

本も、あまり読まない

でも、でも

俺なら絶対泣かせない

だって君があいつを好きになる前から、俺は君が好きだったから



「なぁ」

『え!?あ、その、ごめんなさい、すぐ退きます』

「いや、いい、あんたのこと追いかけてきた、から」

『…あ、そうだったんだ…でも、なんで?変、だった…?あの時は泣いてなかった、よね?』

「…泣きそうになってた、他のやつはわからないと思うけど、俺はずっと見てたからわかる」

『ずっと見てたの…?』

……

夏休みに、あいつが爆弾落とした時と比にならないくらい、心臓がうるさい

ーでも、言わないで後悔するのは、嫌だから

「あいつが、あんたに話しかける前から、俺はあんたのことずっと見てた、本を読む姿が綺麗だな、可愛いなって」

「あんたが、あいつのこと好きなのも知ってる、ずっと見てたから、でも、俺もずっとあんたのこと好きだった」

「こんなところで1人で泣かせたくないから、だから!!まずは俺と友達になってくれませんか!!」

言えた、言えたぞ

目の前のあの子は、驚きのあまり涙が引っ込んで、みるみるうちに真っ赤になって

ーあ、その顔は見たことないな
なんて呑気に考えてた

『あ、あの、その、私』

「驚かせて、ごめん、今言うのは卑怯だなと思ったんだけど、後悔したくなくて…」

沈黙が、苦しい

「と、とりあえず俺部活あるから!行くわ!ごめん!!!」

『…ま、まって!!!』

俯く彼女に袖を掴まれて、思わず立ち止まる

『私ももう言わずに後悔したくないから、言うから、聞いて!!!』

「う、うん」

『えっと、私のために、ありがとう、まだ次の恋とか考えられないけど、でも



ーよかったら、今度一緒に本を読みませんか?


顔を上げた彼女は少し不安げで、でも、嬉しそうで

また初めて見る顔だ、なんて俺も嬉しくなった



ーそれから、俺たちが無事付き合うことになったのは、また別のお話
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