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2-2 そっか another story
しおりを挟む最初に見つけたのは俺だったのに
*
同じクラスのあの子は、いつも本を読んでた
最初は、読みながら百面相する様子が面白くって、見つめていただけだけど
1冊読み終わった後、名残惜しそうな、でも満足そうに笑う姿が、とても綺麗だと思ってた
ー今度、話しかけてみようかな
なんて思った翌日には、あいつが話しかけてて
部活が同期のあいつは、男から見てもいいやつで
おまけにサッカーも上手いし、勉強もできる
そんなやつに先に話しかけられたら、俺なんか、話しかけれるわけねーじゃねーかって
ーなんで昨日、話しかけなかったんだろう
行き場のない気持ちを抱えたまま、毎日を過ごしてた
*
それからどんどん、あの子は可愛くなった
本を読む時以外にも、あいつと話す時は特に
他のやつは気づいてなかったけど、ずっと見てた俺からすれば、一目瞭然で
ーあぁ、俺がその相手になれたらな、なんて
負けるとわかって立ち向かえるほど、俺は強くなかった
*
「は?彼女できた?」
部活の休憩中に、あいつから落とされた爆弾に部員は大盛り上がりで
俺の心臓はあり得ないくらいの速さで脈打ってた
ー遂に、か
最悪だ、心の準備はしてたのに、この期に及んで俺はまだ、諦めてなかったのか
周りが茶化す声も聞きたくなくて、席を立とうとしたら
聞こえてきた名前はーーーーあの子のものではなかった
*
登校日、やっぱり話題はあいつの恋バナで持ちきりで
どうかあの子が来るまでに話終わりますようにと祈っていたけど、そんなうまいこといくわけもなく
入ってきたあの子は今まで見たことない、絶望した顔をしてた
そのまま、終わりの時間まであの子の表情は暗いままで
あいつが付き合った理由まで耳にしてしまい、走っていってしまった
下校の時間だから、誰も気にしてない
俺以外、誰も
*
居ても立っても居られなくて、あの子を追いかけた先は図書館で
学校で初めてきた場所だった
中に入ると、人から見えない隅っこで、あの子は泣いていた
ーどうしよう
俺はあいつみたいに、サッカーも上手くないし、勉強もできない
本も、あまり読まない
でも、でも
俺なら絶対泣かせない
だって君があいつを好きになる前から、俺は君が好きだったから
*
「なぁ」
『え!?あ、その、ごめんなさい、すぐ退きます』
「いや、いい、あんたのこと追いかけてきた、から」
『…あ、そうだったんだ…でも、なんで?変、だった…?あの時は泣いてなかった、よね?』
「…泣きそうになってた、他のやつはわからないと思うけど、俺はずっと見てたからわかる」
『ずっと見てたの…?』
……
夏休みに、あいつが爆弾落とした時と比にならないくらい、心臓がうるさい
ーでも、言わないで後悔するのは、嫌だから
「あいつが、あんたに話しかける前から、俺はあんたのことずっと見てた、本を読む姿が綺麗だな、可愛いなって」
「あんたが、あいつのこと好きなのも知ってる、ずっと見てたから、でも、俺もずっとあんたのこと好きだった」
「こんなところで1人で泣かせたくないから、だから!!まずは俺と友達になってくれませんか!!」
言えた、言えたぞ
目の前のあの子は、驚きのあまり涙が引っ込んで、みるみるうちに真っ赤になって
ーあ、その顔は見たことないな
なんて呑気に考えてた
『あ、あの、その、私』
「驚かせて、ごめん、今言うのは卑怯だなと思ったんだけど、後悔したくなくて…」
沈黙が、苦しい
「と、とりあえず俺部活あるから!行くわ!ごめん!!!」
『…ま、まって!!!』
俯く彼女に袖を掴まれて、思わず立ち止まる
『私ももう言わずに後悔したくないから、言うから、聞いて!!!』
「う、うん」
『えっと、私のために、ありがとう、まだ次の恋とか考えられないけど、でも
ーよかったら、今度一緒に本を読みませんか?
顔を上げた彼女は少し不安げで、でも、嬉しそうで
また初めて見る顔だ、なんて俺も嬉しくなった
ーそれから、俺たちが無事付き合うことになったのは、また別のお話
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