恋愛短編集

あい

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2-1 そっか

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ーなぁなぁ、あいつら夏休みの間に付き合ったらしいぜ

久しぶりの登校で、想い人である彼に会えると浮き足立っていた私に聞こえたのは、そんな彼と他クラスの女子との話だった


夏休み前、大きな花火大会に誘うかギリギリまで迷って、結局誘えなかったのだ
後悔しても知らないよ~なんて、背中を押してくれていた友達の言う通りになってしまった

サッカー部の彼は、クラスの誰にでも優しくて、人気者で、今までならあまり話すタイプではなかったんだけど、好きな作家さんが同じで仲良くなったのだ

まさか付き合えるなんて思ってなかった
でも、でもほんの少しだけ、付き合えたらな、なんて淡い期待を抱いていた

お相手の女の子は大人しい私とは真逆のタイプで、可愛くて笑顔がはつらつとした女の子
あぁ、付き合える可能性なんて1ミリもなかったんだなって、思い知らされる





今日は登校だけだから、昼にはもう帰宅してもいいことになっている
私もそそくさと帰り支度をしていると、嫌でも聞こえてくる会話

なぁ~!きっかけは!?どっちから告ったんだよ!
あの子のどんなところが好きなわけ!?めっちゃ可愛いもんなぁ
お前も隅におけないなぁ

なんて、男子たちの盛り上がる声がする

聞きたくない、早く帰ろ

ー彼女がさ、でかい花火大会誘ってくれて、そこで告白してくれたんだよ、それまであんまり意識してなかったんだけど、その時の彼女すごい可愛くて、告白も嬉しくてオッケーしちゃったんだよね

……私が、誘おうと思ってたやつだ

そこまで聞いて、走り出した




早く帰りたかったけど、下校中の人に見られたくなくて、咄嗟に人のこない図書室に忍び込んだ

だって、気を抜いたら泣いてしまうから

あの子は、勇気を出したんだ
私が、もだもだして、諦めてる時にはもう

タイプがどうとか、好きな人がいたんだとか、そういう話じゃない

一歩踏み出せたかどうか、それだけの違い

あの時、誘って断られたとして、今より傷はマシだったんじゃないかって思う
だってね、なんにもしてない、なんにもしてないの


「そっか、私のこの気持ち、伝える権利もなくなっちゃったんだ」


悲しくて情けなくて声を殺して泣いた


人生で初めての恋はなにもできずにおわってしまった
そんな夏の終わりのお話し



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