恋愛短編集

あい

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1-2 暑いね side story

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「おはよー!あんたも補習?よろしくね!」

なんだこのうるせぇやつは
それが、あいつへの第一印象だった



学校はあまり好きじゃなかった、正確には好きじゃなくなった

生まれつきの髪の色を理由に、先生にはやれ素行が悪い、口が悪いといちゃもんつけられ、生徒には無駄に絡まれるか遠巻きにされる

…まぁ、それに腹立ってピアス開けたのは、うん、俺が悪いか

そんなこんなで、毎日テキトーにやりすごしてたけど、テストは受けるつもりだったのに

めんどくせーけど、まぁ夏休みならあんまり人と絡まねーかって、淡い期待は早々に打ち砕かれた





『暑いねー』

「…俺に話しかけてる?」

『あんた以外誰もいないでしょ』

「…無理に話しかけなくていい、とっとと終わらせて部活行けよ」

『別にちょっと話したくらいでスピード変わんないもん!せっかくならこの時間も楽しみたい!』

「それ補習の意味あんのか?」

『あるに決まってんじゃん!それにあんた学校来ないから全然話した事なくて新鮮で楽しい』

「あっそ…」

ー話して楽しいなんて初めて言われた

そうやって、少しずつ話をした

勉強はできる方なのに、テスト範囲を間違えて補習になったこと

この夏は山派の勢いに負けて家族でキャンプに行くから海に行けないこと

青春したいこと

全部たわいもない話で、あいつは相変わらずうるさかったけど、それが心地良く感じるようになるまで、時間はかからなかった





『てかさ、あんたなんでテスト来なかったの?授業休むのとは訳が違うでしょ』

「俺だって行こうとしてたけど行けなかったんだよ」

『そりゃまたなんで』

「…他校のしらねぇやつに喧嘩ふっかけられた、なんかそいつの彼女?が俺に惚れたとかで」

『うわ、とばっちりじゃん、怪我してないの?大丈夫?』

「…疑わねーの」

『え、なんで』

「俺、見た目こんなだし」

『それ関係なくない?』

「…先生ですら、お前から喧嘩ふっかけたんじゃないのかって言うんだぜ、それにそんな見た目じゃ絡まれるのも仕方ないってさ」

『はぁ!?どの先生!?あんた見た目はチャラいけど、ちょっと話せばそういうことするやつじゃないってわかるじゃん!!まじで無いわ』

「めっちゃ怒るじゃん」

『当たり前でしょ、普通に気悪いよ、てか、言われっぱなしで終わってないでしょーね!?』

「どーせ説明しても、信じてくれねーもん」

『…もしかして今までもこういうことあったの』

「まぁな」

『…今度あったら、私のこと呼びなよ、私が言い返してやるから!!』

ほんっとサイテー、先生のくせにマジでありえないって、ずっとぶつくさ文句言ってる

俺より怒るとかおもろいなって、思わず笑っちまった

『今笑った!?あんた笑えたのね!』

「俺だっておもろいと思ったら笑う」

おもろいってなによ!!!あんたのために怒ってんのに!!って、デケェ声で言うからまた笑っちまった

誰かに信じてもらえるってのは、存外嬉しいもんだな





補習最終日、あいつのテンションはめっちゃ低かった

部活が無くなったから補習が無ければ遊べたのにって、俺と会うのは楽しくないのかよとか、柄にもなく思ったけど

『あんたと2人でくだらない話しながら補習受けるのも悪くなかったわよ』

「なんだよそれ」

『別にー』

…俺も悪くなかった、なんならもっとお前と


ーーーーー今日が最後、なら





到着した海は、事前に調べた通り人も少なくて、これてよかったなってって素直に思えた

でも海に入るのは却下だ

一緒に浜辺を歩きながら、またたわいもない話をして

そんなに私と一緒にきたかった~?なんてお前が茶化すように言うから、思わず立ち止まる

いつもなら俺もテキトーに答えるけど、でも今日はそれじゃダメだから

ちゃんと言う

だってお前は俺の話、ちゃんと聞いてくれるから





近づくに連れて改めて自覚する

同じ気持ちであってほしい

距離が縮んだ頃には、あいつはもう真っ赤で、答えは出てるも同然だった

これでこれからも一緒にいれるって油断した

その時

ー教室で、見たい、またくだらない話したい、多分私はそういうあんたを、好きになったから

って、特大の告白を喰らって俺も真っ赤になったのは一生の不覚だ





ーガタンゴトンー

寝たか…

俺の肩に頭を預けて気持ちよさそうに眠る顔を見る

ーねぇ、私のこといつから、というかなんで好きになったの?



そんなの

うるせぇー声も、キラキラした笑顔も、部活を頑張る姿も全部好きで

でもいつからってそれは

お前が俺のことで怒ってくれたあの瞬間から

話を聞いて信じてくれる人が、ずっと欲しかった

大袈裟だとお前は笑うだろうが、俺にとってはすげー大きなことで

俺自身より、俺のこと大事にしてくれるお前だから好きになった

誰に理解されなくても、お前が側にいて、俺のことわかってくれたら、それ以上のことはない

それくらい、嬉しかったんだ


ありがとう、俺のこと見つけてくれて、信じてくれて



「…補習、行ってよかったな」





こら!!!来たのはえらいが、ピアスは外せ!!制服はきちっと着ろ!!
わ、学校来てるじゃん、珍しー
ほんとだ、今日初日なのに


相変わらず、ごちゃごちゃうるせーな

でも

『おはよー!ちゃんと来たじゃーん!』

「約束したろ、それに」

『?』

「なんもねーよ、遅刻すんぞ」

ーお前に会えるんだから



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