暗い海の見える家

水樹

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第二話

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引っ越してから約一ヶ月が過ぎて、新しい土地での生活に慣れてきた。小学校で友達ができてよく放課後にグラウンドで鬼ごっこやサッカーをした。
僕は小学校に上がったときにお父さんとお母さんと約束を作った。そのなかには放課後に遊んでもいいけど学校のグラウンドで遊ぶこと。必ず五時までには帰ること。という約束があった。まだ小学校の一年生だから、公園で遊ばれるより教師がいる学校で遊んだ方が安全だろうし、五時にかえるというのも暗くなると危ないと心配してくれたからだ。約束は面倒だと思ったこともあるけどきちんと守っていた。
ある日の放課後、いつものようにサッカーをして帰ろうと、ボールを用具室まで片付けに行った。そこはボールや陸上のバトンやコーンなど色々なものが入っていた。足場があまりなくてよろよろと歩いていたら野球ボールを踏んでしまい、思いきり擦りむいてしまった。
保健室に行って手当てをしてもらっていたら五時を過ぎてしまっていた。
急いで保健室を飛び出し走った。ヤバイ。と思いながらも擦りむいたところがずきずきと痛くてうまく走れなかった。
家に帰るとお父さんは仕事が早く終わったらしく帰宅していた。お母さんが、

「五時過ぎてるじゃない。どうしたの?」

と少し怒りながら聞いてきた。事情を説明すると納得してくれたようで、

「そう。じゃあお風呂入ったら絆創膏変えようね」

優しくいってくれた。でもお父さんは

「怪我をしたからって言い訳をするな!ギリギリまで遊ぶから遅刻するんだ!約束を破るならしばらく放課後の遊びは禁止だ!」

と、この前の夕食の時のように怒鳴った。僕は怖くなり泣きながら謝った。お父さんは怒っていたがそれ以上は声を荒げなかった。
でも、それからは夕食の時もお風呂の時もお父さんとは目が合わなかった。元々無口だが、妹には少し話していたけど僕とは話をしてくれなかった。
寝るとき僕は、ベッドのなかで泣いていた。なぜ僕だけあんなに怒られてしまうんだろう。お父さんは僕を嫌いになったのかな。考えていたけど、やがて眠りに落ちていった。
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