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六、研究と私怨
殺意
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ケントがレイに救われてから一年が経った。今日もケントはレイのために研究に励んでいる。
「レイさん、新しい術式が出来ました! 是非試してみてくれませんか?」
ケントは興奮気味にレイに駆け寄り、用紙に描いた陣を見せた。
「ケントさん、もう出来たのですか? 凄いですね」
レイが褒めると、ケントは満足気な表情になる。
「おいおい。術式ばかりに頼っていると、刀が鈍ってしまうぞ」
レイとケントが振り返ると、銀白色の短髪に、竜胆色の瞳をした男性が立っていた。
「リクさん! 今日も任務ですか? 私もご一緒してよろしいですか?」
レイに「リクさん」と呼ばれた男性はハクの父親だった。レイはリクを尊敬し、慕っていた。
ケントはその様子が気に入らなかった。手に持っていた用紙がクシャっと音を立てる。
「リクさん。お言葉ですが、私が作る術式のおかげで鬼退治の効率が上がっています。甘く見ないでいただきたい!」
ケントがリクに言い返すと、リクは困った表情で謝罪した。
「ケント、気を悪くさせてしまったみたいだな。すまない。私は術式も良いが、刀の鍛錬も怠るなと言いたかったんだ」
ケントがリクに楯突くのは今に始まったことではない。半分は嫉妬が入っていた。
「ケントさん、リクさんは悪気があって言ったわけではないのです。大丈夫です。私は刀の鍛錬も怠りませんから」
リクさんのように強くなります。と、レイは笑顔で言った。ケントはレイの笑顔を見て複雑な表情になる。
(私にもそのような笑顔で話しかけて欲しい。どうしたら……)
ケントはどうしたらレイに振り向いてくれるのかを考えた。毎日、毎日考えた。食べることも寝ることも疎かになるほど考えた。
一ヶ月以上考え続けたある日、ある言葉が窶れたケントの脳裏をよぎった。
――丹がなくても人は簡単に殺せる――。
一度顔を出した殺意は、去ることなくケントの中に満ちていく。
(そうですね……そうですよ! 簡単なことでしたね。リクさんがイナクナレバ……ヒヒッ)
「レイさん、新しい術式が出来ました! 是非試してみてくれませんか?」
ケントは興奮気味にレイに駆け寄り、用紙に描いた陣を見せた。
「ケントさん、もう出来たのですか? 凄いですね」
レイが褒めると、ケントは満足気な表情になる。
「おいおい。術式ばかりに頼っていると、刀が鈍ってしまうぞ」
レイとケントが振り返ると、銀白色の短髪に、竜胆色の瞳をした男性が立っていた。
「リクさん! 今日も任務ですか? 私もご一緒してよろしいですか?」
レイに「リクさん」と呼ばれた男性はハクの父親だった。レイはリクを尊敬し、慕っていた。
ケントはその様子が気に入らなかった。手に持っていた用紙がクシャっと音を立てる。
「リクさん。お言葉ですが、私が作る術式のおかげで鬼退治の効率が上がっています。甘く見ないでいただきたい!」
ケントがリクに言い返すと、リクは困った表情で謝罪した。
「ケント、気を悪くさせてしまったみたいだな。すまない。私は術式も良いが、刀の鍛錬も怠るなと言いたかったんだ」
ケントがリクに楯突くのは今に始まったことではない。半分は嫉妬が入っていた。
「ケントさん、リクさんは悪気があって言ったわけではないのです。大丈夫です。私は刀の鍛錬も怠りませんから」
リクさんのように強くなります。と、レイは笑顔で言った。ケントはレイの笑顔を見て複雑な表情になる。
(私にもそのような笑顔で話しかけて欲しい。どうしたら……)
ケントはどうしたらレイに振り向いてくれるのかを考えた。毎日、毎日考えた。食べることも寝ることも疎かになるほど考えた。
一ヶ月以上考え続けたある日、ある言葉が窶れたケントの脳裏をよぎった。
――丹がなくても人は簡単に殺せる――。
一度顔を出した殺意は、去ることなくケントの中に満ちていく。
(そうですね……そうですよ! 簡単なことでしたね。リクさんがイナクナレバ……ヒヒッ)
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