無色の男と、半端モノ

越子

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六、研究と私怨

焦心

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 卯ノ国にある退治屋の屋敷では、研究者であるケントが研究に没頭していた。

「やはり術式を完成させるには、どうしてもあの半端な鬼が必要ですね」

(辰ノ国では、あの半端な鬼を見つけることが出来ませんでしたが、銀白色の髪の男の話は本当なのでしょうか)

 ケントは辰ノ国で話題になっていた銀白色の男の話を耳にした。

(私の耳に入っているということは、きっとレイさんの耳にも入っていますね……)

 銀白色の髪の男がハクならば、と思うと、ケントの陰湿な雰囲気が更に陰りを帯びる。

「ケントさん、研究はいかがですか?」

 ケントが振り向くと、そこにはレイが手を後ろに組んで立っていた。

 ケントは驚いた。何故ならば、ハクが瀕死の状態でレイの前から姿を消したあの日から、レイは自室に塞ぎ込んでいたからだ。退治屋を統べる者として部下に指示は出していたが、表に顔を出すことは滅多になかった。

 わざわざ自分に会いに来てくれたのかと思うと、陰湿だったケントの気持ちが明るくなった。

「……これはこれはレイさん。研究室に来られるとは珍しいですね!」

 あの鬼さえ捕まえることが出来れば研究は更に進みます。と、ハキハキとした声でレイに伝えると

「きっと、あの鬼は自らこちらに現れますよ」

 レイは漆黒の横笛をケントに見せながら言った。

「なるほど。確かにその通りです。さすがはレイさんですね。ヒヒっ」

 ケントは媚びるように笑ったが、レイはそれを見ることなく溜め息と共に視線を落とした。

「あの鬼と一緒にハクも現れてくれるといいのですが……」

 ……ケントの笑みはなくなった。

「もしかして、レイさんも辰ノ国の話をお聞きになられたのですか?」

「ええ。銀白色の髪の男がハクであることを願っています」

 そう言うと、レイは仄かに笑ってみせた。

(レイさんは私を見ていない……)

 研究室からレイの姿が見えなくなるのを確認した後、ケントは焦心し研究書をぐしゃぐしゃにした。

(また……まただ! だけでなく、まで! 親子揃って何故、私の邪魔をする? 何故、レイさんの、大事な人の一番にさせてくれないのですか?)

 ぐしゃぐしゃになった研究書を見つめるケントの目には殺意が満ちていた。
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