無色の男と、半端モノ

越子

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四、温と冷

鉄輪

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 ハクはセツを見守る中、一つ懸念があった。

(セツの首に鉄輪が嵌められている。何のためだ?)

「ハク、いつまでここに居るつもりだい?」

 ハクが振り向くと、レイと細身の眼鏡をかけた研究者が立っていた。

「師匠、いつまでここにセツを閉じ込めておくつもりですか?」

「ヒヒっ。それは決まっているじゃないですか。死ぬまで研究材料になってもらいますよ」

 研究者は両手を広げ、昂っている。

「この鬼の特異能力は素晴らしい! 術式が成功したら、人が鬼を支配することも不可能ではない! ただ、彼の特異能力が半端なのが残念ですね。今のところ、人を喰った鬼には効かないようです。半端な身体が影響しているのですかねぇ」

「ハク!」

 気付いた時にはハクは研究者に刀を向けていた。レイは研究者を庇うようにしてハクの目の前に立っている。

「ヒヒっ。怖い怖い。他人に無関心なハクさんをこうまでさせるなんて。この鬼は魔性の特異性でも持ち合わせているのでしょうか。でも、気をつけてくださいね。その鉄輪を嵌めている限り、貴方は私に歯向かえませんよ」

「どういうことだ?」

「鉄輪に私だけが使える特殊な術をかけています。万が一、私が死ねばこの鬼も道連れです」

 この鬼が歯向かって来ないよう対策したのが、まさかここで役立つとはね。と言い、研究者はレイの背中に隠れながらヒヒッと笑う。

 ハクはゆっくりと刀を下ろす。彼は無表情であったが、刀を握る手は怒りに満ちて震えていた。
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