18 / 61
三、団子と罠
釈放
しおりを挟む
次の日もセツは拘束されたままだった。……が、
「おい。もう出ても良いぞ」
部屋に入ってきた役人に言われ、セツはホッと息を吐いた。
役所を出ると、セツは外の眩しさに思わず目を細めた。門に向かって歩いて行くと銀白色の長髪を束ね、透き通るような青白い瞳をした男性が凛として立っている。
(髪の色と容姿は違うけど、こうして見ると昨日の男性にそっくりだ)
そう思いながら「もしかして、これはアンタに礼でも言うべきか?」と、セツがハクに話しかける。
「いや、不要だ」
ハクは彼女を一瞥した後、安堵の声色で言った。
「元気そうだな」
「ハハッ。当たり前だ! この俺を誰だと思っている!」
セツの戯言をそのままに、ハクが話を切り替えた。
「師匠が君に会いたいそうだ。今から屋敷に来てもらう」
(え!? 俺が? 退治屋の屋敷に!?)
「いやだ! 行くもんか! 絶対に行くもんか! 俺は鬼だぞ!?」
「今回、君が出られたのは師匠のおかげでもある」
「いやだ。いやだ。いやだ。いやだ!」
駄々をこねるかのようにセツが拒んでいると、ハクは突然屈み込み、彼女を抱き上げた。
「うわ!? 何するんだ!? 降ろせ!」
セツは驚きながらハクの腕の中で必死に暴れるが、がっちりと抱き込まれビクリともしない。端から見れば飼い主の腕の中で黒猫がぎゃあぎゃあ暴れているようだ。
「セツ。聞いて」
彼は宥めるようにして黒猫に言う。
「悪い人ではない。師匠は、私の大事な人だ」
それを聞いて、ようやく黒猫は静かになった。
セツが大人しくなると、ハクは歩きながら自分のことを話しだした――。
「おい。もう出ても良いぞ」
部屋に入ってきた役人に言われ、セツはホッと息を吐いた。
役所を出ると、セツは外の眩しさに思わず目を細めた。門に向かって歩いて行くと銀白色の長髪を束ね、透き通るような青白い瞳をした男性が凛として立っている。
(髪の色と容姿は違うけど、こうして見ると昨日の男性にそっくりだ)
そう思いながら「もしかして、これはアンタに礼でも言うべきか?」と、セツがハクに話しかける。
「いや、不要だ」
ハクは彼女を一瞥した後、安堵の声色で言った。
「元気そうだな」
「ハハッ。当たり前だ! この俺を誰だと思っている!」
セツの戯言をそのままに、ハクが話を切り替えた。
「師匠が君に会いたいそうだ。今から屋敷に来てもらう」
(え!? 俺が? 退治屋の屋敷に!?)
「いやだ! 行くもんか! 絶対に行くもんか! 俺は鬼だぞ!?」
「今回、君が出られたのは師匠のおかげでもある」
「いやだ。いやだ。いやだ。いやだ!」
駄々をこねるかのようにセツが拒んでいると、ハクは突然屈み込み、彼女を抱き上げた。
「うわ!? 何するんだ!? 降ろせ!」
セツは驚きながらハクの腕の中で必死に暴れるが、がっちりと抱き込まれビクリともしない。端から見れば飼い主の腕の中で黒猫がぎゃあぎゃあ暴れているようだ。
「セツ。聞いて」
彼は宥めるようにして黒猫に言う。
「悪い人ではない。師匠は、私の大事な人だ」
それを聞いて、ようやく黒猫は静かになった。
セツが大人しくなると、ハクは歩きながら自分のことを話しだした――。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる