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二、鬼と人
賊の隠れ家
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「なあ、俺、アンタから逃げないから術を解いてくれ」
「駄目だ」
このやり取り、山に入ってかれこれ何回目だろう。目には見えないが、ハクと繋がっているこの感覚をセツはむず痒く感じている。
「どうしてそこまで俺に付き纏う?」
セツは怪訝そうな顔でハクを見ると、彼は彼女を一瞥して呟いた。
「どうして気になるのか……わからない」
その時だった。
二人の進む先に伝霊煙が上がった。
伝霊煙は特殊な煙のため、丹を持つ者にしか見えない。そして、色によって伝える内容が異なる。今、上がっている煙の色は〈赤〉だ。その色の意味は――。
「鬼がいる」
ハクが言うと、二人は煙の先に駆け出した。
◇ ◇ ◇
伝霊煙が上がる数分前のこと。
「た、助けてくれ!」
洞窟から賊たちが駆け寄ってきた。ルリ姫を探していた二人の退治屋は、その賊たちから鬼が現れたことを聞き、急いで伝霊煙を打ち上げた。
「貴方たちはこの者とここに居てください」
一級の退治屋は賊たちにそう言うと、そのまま洞窟へ、二級の者は逃げて来た賊たちの見張りへと二手に分かれた。
一級の退治屋が歩き進める洞窟の中は、不気味なほど静かだった。
(もう鬼は居ないのか? 鬼の匂いを感じない)
辺りが暗くて視界が悪い。退治屋は陣を描き、術式を発動させて辺りを照らした。
「こ、これは……」
賊たちが血を流して死んでいる。なかには頭や四肢、内蔵のない死体もあった。
状況を飲み込もうとしている退治屋の背後で、黒い影がゆらゆらと動き出していた。
「駄目だ」
このやり取り、山に入ってかれこれ何回目だろう。目には見えないが、ハクと繋がっているこの感覚をセツはむず痒く感じている。
「どうしてそこまで俺に付き纏う?」
セツは怪訝そうな顔でハクを見ると、彼は彼女を一瞥して呟いた。
「どうして気になるのか……わからない」
その時だった。
二人の進む先に伝霊煙が上がった。
伝霊煙は特殊な煙のため、丹を持つ者にしか見えない。そして、色によって伝える内容が異なる。今、上がっている煙の色は〈赤〉だ。その色の意味は――。
「鬼がいる」
ハクが言うと、二人は煙の先に駆け出した。
◇ ◇ ◇
伝霊煙が上がる数分前のこと。
「た、助けてくれ!」
洞窟から賊たちが駆け寄ってきた。ルリ姫を探していた二人の退治屋は、その賊たちから鬼が現れたことを聞き、急いで伝霊煙を打ち上げた。
「貴方たちはこの者とここに居てください」
一級の退治屋は賊たちにそう言うと、そのまま洞窟へ、二級の者は逃げて来た賊たちの見張りへと二手に分かれた。
一級の退治屋が歩き進める洞窟の中は、不気味なほど静かだった。
(もう鬼は居ないのか? 鬼の匂いを感じない)
辺りが暗くて視界が悪い。退治屋は陣を描き、術式を発動させて辺りを照らした。
「こ、これは……」
賊たちが血を流して死んでいる。なかには頭や四肢、内蔵のない死体もあった。
状況を飲み込もうとしている退治屋の背後で、黒い影がゆらゆらと動き出していた。
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