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勇者の足あと
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目が覚めたら朝になっていた。
「あれ? 昨日のことは夢だったの?」
重いまぶたを擦りながら起きあがると、ぼくは昨日の夜とは違うズボンを履いていた。
「あれ? オネショをしていないのにズボンが違うぞ」
どうしてだろう、と思いながらドアを開けて階段に向かって歩いていると、じいちゃんとばあちゃんの部屋の障子が破れていた。
「あれ? なんで障子が破れているんだろう」
階段の所におもちゃの剣が落ちている……。
――あ……。昨日のことは夢じゃなかったんだ。
ぼくが剣を振りまわしたから、障子が破れちゃったんだ!
どうしよう、と思いながら階段を下りると、
「あ、駿、おはよう。ちょっとおいで」
ぼくに気づいたパパが、手をこまねいた。パパは難しい顔をしていた。
――怒っているのかな。
ぼくはドキドキしながらパパの所へ行くと、
「どうしてこうなったんだ?」
そう言うと、パパはトイレのドアを開けた。
そこにはトイレットペーパーが絡まってグシャグシャになっていた。ぼくのズボンとパンツがトイレットペーパーに埋もれているぞ。
「トイレの電気がつけっぱなしで、洗面台の蛇口の水も出しっぱなしだったんだぞ?」
パパが眉毛を吊り上げて厳しい顔をしていたから、ぼくは俯いてパパに昨日の出来事を全部話したんだ。
――やっぱり、怒っているかな?
ぼくはチラッと見上げると、パパは鬼のような顔をしていた。
――な、なまはげだ!!
「ご、ごめんなさい! もう、悪い子しません!」
「……」
――あれ? パパ、何も言わないぞ。どうしたんだろう。
「……駿、お前は強い子だ」
パパの大きくて重い手が、ぼくの頭を撫でている。
「俺に怒られたくなかったら、もっともっと強くならないとな」
ぼくは目を真ん丸にして、もう一度見上げた。
パパは、眉毛を吊り上げていた糸がプツッと切れたような顔になっていた。
パパの後ろでは、赤ちゃんを抱っこしているママが頷いてニコニコしている。じいちゃん、ばあちゃんもニコニコしている。
「さあ、朝ごはんにしましょう」
ママに言われて、皆と一緒にテレビのある部屋へ行くと、甘いバターの匂いがした。
「あ! ぼくの好きなホットケーキ!!」
「駿が一人で頑張ったご褒美よ。ただし、これを食べたら駿も一緒にトイレの掃除と、障子を貼り替えるのよ」
「うん! ぼく、お手伝いをするよ!」
「ばかやろう、調子に乗るな。何が手伝いだ。これはお前の『あとしまつ』って言うんだよ」
そう言って、パパがぼくの頭を鷲掴みしてグワングワン回した。
クラクラする頭を抑えて、ぼくは思った。
――ぼくは勇者だ。今度は、トイレの悪魔をやっつけてやる!!
「あれ? 昨日のことは夢だったの?」
重いまぶたを擦りながら起きあがると、ぼくは昨日の夜とは違うズボンを履いていた。
「あれ? オネショをしていないのにズボンが違うぞ」
どうしてだろう、と思いながらドアを開けて階段に向かって歩いていると、じいちゃんとばあちゃんの部屋の障子が破れていた。
「あれ? なんで障子が破れているんだろう」
階段の所におもちゃの剣が落ちている……。
――あ……。昨日のことは夢じゃなかったんだ。
ぼくが剣を振りまわしたから、障子が破れちゃったんだ!
どうしよう、と思いながら階段を下りると、
「あ、駿、おはよう。ちょっとおいで」
ぼくに気づいたパパが、手をこまねいた。パパは難しい顔をしていた。
――怒っているのかな。
ぼくはドキドキしながらパパの所へ行くと、
「どうしてこうなったんだ?」
そう言うと、パパはトイレのドアを開けた。
そこにはトイレットペーパーが絡まってグシャグシャになっていた。ぼくのズボンとパンツがトイレットペーパーに埋もれているぞ。
「トイレの電気がつけっぱなしで、洗面台の蛇口の水も出しっぱなしだったんだぞ?」
パパが眉毛を吊り上げて厳しい顔をしていたから、ぼくは俯いてパパに昨日の出来事を全部話したんだ。
――やっぱり、怒っているかな?
ぼくはチラッと見上げると、パパは鬼のような顔をしていた。
――な、なまはげだ!!
「ご、ごめんなさい! もう、悪い子しません!」
「……」
――あれ? パパ、何も言わないぞ。どうしたんだろう。
「……駿、お前は強い子だ」
パパの大きくて重い手が、ぼくの頭を撫でている。
「俺に怒られたくなかったら、もっともっと強くならないとな」
ぼくは目を真ん丸にして、もう一度見上げた。
パパは、眉毛を吊り上げていた糸がプツッと切れたような顔になっていた。
パパの後ろでは、赤ちゃんを抱っこしているママが頷いてニコニコしている。じいちゃん、ばあちゃんもニコニコしている。
「さあ、朝ごはんにしましょう」
ママに言われて、皆と一緒にテレビのある部屋へ行くと、甘いバターの匂いがした。
「あ! ぼくの好きなホットケーキ!!」
「駿が一人で頑張ったご褒美よ。ただし、これを食べたら駿も一緒にトイレの掃除と、障子を貼り替えるのよ」
「うん! ぼく、お手伝いをするよ!」
「ばかやろう、調子に乗るな。何が手伝いだ。これはお前の『あとしまつ』って言うんだよ」
そう言って、パパがぼくの頭を鷲掴みしてグワングワン回した。
クラクラする頭を抑えて、ぼくは思った。
――ぼくは勇者だ。今度は、トイレの悪魔をやっつけてやる!!
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