SS集

朔月莉杏

文字の大きさ
上 下
1 / 1

過去に戻ったなら、うまくやってみせるのに

しおりを挟む
 今年の終わりが近づく十二月。クリスマスイブという名の、今年のわたしを嘲笑う日がやってきた。
 きっと子供たちはプレゼントを心待ちにしながら眠りについた、そんな夜遅くの時間帯。
 そして、大通りから一歩でも外れると、真夜中の暗さに覆われてしまうほど暗いこの時間は、この街の人々がイルミネーションを見る、定番の時間帯だった。
 そんな中、みんなそれぞれ大好きな人たちと一緒にこのイルミネーションを見ている。

 ……わたしはひとりぼっちだった。

 いつのまにか孤立していたわたしは、大親友に縁を切られ、声をかけてくる人なんて一人もいなくなっていた。

 ……去年はこんなことになるなんて思ってもいなかったな……。

 去年はあんなにも幸せな気分だったのに、今年はとても悲しい気分だ。

 目をつむり、去年の今頃を思い出す。

 仲が良かった大親友。一緒に遊んだ幼馴染。
 すべてが懐かしくてたまらない。

 ジャンパーに、もこもこ靴下に、フードに、マフラーに、耳あてに、手袋に。
 そんなにも防寒対策しているのに、どこか薄ら寒く感じるのは何故だろうか。
 こんなにも騒がしくて、にぎやかなのに、どこか静かなのは何故だろうか。
 去年はこの格好よりも寒い服を着ていたのに、暖かかった覚えがある。
 去年は今よりももーっと騒がしすぎて、耳を閉じた覚えがある。

 そんな、小さな暖かさは、騒がしさの楽しさは、失ってから気づいた。気づいてしまった。

 何故かなんて、わたしは分かっている。知っている。でも……。

 (それを理解してしまったら、わたしはいきていけなくなるような気がする)

 そのことに自嘲の笑みを浮かべる。

 遠目から見るみんなはわたしと一緒の時よりもずっと幸せそうな笑みを浮かべていた。
 あんな輝くような笑顔、一度も見たことがない。
 その様子は、わたしが邪魔者だったと伝えてくる。
 苦しくて、辛くて、見たくないに、それに吸い寄せられるように目が離せない。

(不満があるなら言ってくれればよかったのに。嫌なら注意してくれればよかったのに)

 そう思ってしまうけれど……。

 (きっと、わたしもそうだったとしても、わたしだって言わないだろうから、言う権利はないんだろうなぁ)

 最初は単なる喧嘩だった。いつものふとした時に起きる言い合いだった。
 でも、いつもよりエスカレートして行き、わたしにたいしての不満に引火した。
 そこから爆発的にわたしを彼女は責めたて、縁を切られた。

 そして彼女はわたしの悪いところのみ、学校中に広めた。
 そして、いつのまにか孤立した。

 いじめ、とかではあるのだろうけれど、彼女に、わたしの人生の一部を壊されたんだろうけど。
 でも、わたしは彼女が噂を広めているのを知っていた。わたしはそれで彼女の心がおさまるんだったら、と黙認した。

 だから、自業自得でもあるから、わたしも悪かった面があるから、とわたしは彼女を責めることも、噂を消すこともできないままでいる。

「過去に戻ったなら、うまくやってみせるのに」

 わたしはそう小さく呟くと、わたしはその場を後にした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

何度死んで何度生まれ変わっても

下菊みこと
恋愛
ちょっとだけ人を選ぶお話かもしれないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

新たな道

詩織
恋愛
恋人期間2年。 婚約までしてたのに突然逝ってしまった。 気持ちの整理が出来ない日々。 月日はたっても切り替えることが出来ない。

もしもゲーム通りになってたら?

クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら? 全てがゲーム通りに進んだとしたら? 果たしてヒロインは幸せになれるのか ※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。 ※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。

処理中です...