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第2章~2回目の小学生~
第15話Part.3~12歳の1人旅は危険だよ~
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俺を乗せた馬車、そして後ろをついて来る荷車がシェーベリーへの道を進んでいく。荷車も今回は帯同しているので前回受験のためにシェーベリーに行った際より護衛の人数が増えている。
グレイティス王国は政情が安定している状態なのであまり賊の類いは出ないが、それでも全く出ないわけでは無いし、荷車を見た魔物が食料と勘違いして襲い掛かってくることも度々あるので全く油断ならない旅となる。
初日は特に何も起こらなかった。今回も実家とシェーベリーの中間辺りの宿場町で1泊する。ここは前回よりも大きい宿だ。格としては前回の宿より落ちるらしいが、ここは商隊が利用することも多い宿で馬車や荷車を置けるスペースが広いので、荷車も率いている俺たちもこちらに泊まることになった。
格落ちと言ってもそれなりの商人たちが利用する宿。そして俺たちは1番上等な部屋に泊ったのでそこまでみすぼらしさなどは感じなかった。
宿で一晩を過ごして再びシェーベリーに向けて出発する。途中で魔物に襲われたものの、大して強くない魔物だったので護衛の騎士たちがあっさりと撃退してくれた。俺がそれを知ったのは撃退した後すぐに報告を受けてのことだった。
しかし馬車の中で1人は退屈だ。御者に何度か話しかけてみるがあまり答えてくれない。馬の操作に集中したいらしい。護衛の者も常に周囲に気を配っている状態なのであまりこちらを構う時間はないらしい。退屈しのぎに本を読んだりしているが、どれも何度か読んでいる本なので集中しきれない。新しい本でも買っておけばと今更後悔する。
そんな時少し外の空気を吸おうと窓を開けて顔を出す。すると前の方に大きな荷物を背負ってたった1人で歩いている人間の後ろ姿が見えた。背丈からすれば小柄でもしかすると俺と同じ歳くらいかもしれない。
俺はそれを見てすぐ横についている騎士に「1人で歩いている者が居るぞ。」と声を掛けた。すると騎士は騎乗している騎士にそのことを伝えたようで、それは確認していることを報告してきた。騎士は「退かせますか?」と聞いてきた。全くそんなつもりはないのだが、彼は俺が前を歩く人間に不快感を覚えたのかと思ったようだ。
「いや……そんな必要は無い。あの者の横まで行ってくれ。」
俺は騎士たちに指示を出す。少しだけペースを速めて俺たちは前を歩いている者のすぐ近くまで接近した。向こうからも自分たちが近づいていることは分かったようで、こちらが通れるように道の端に移動した。
俺は窓を開けて道の端に行ったものに声を掛けた。背丈から察していた通り、おそらく俺と同じ歳くらいの少女だった。見た目は大人しそうな感じで背丈も小柄。その小柄な子が非常に大きなリュックを背負っている。丸みを帯びて横に広いもので長さも彼女の肩からお尻の辺りまである。何が入っているのかは分からないが、相当重そうだ。
「君、1人かい?」
「は、はい……。」
「ふーん。どこまで行くの?」
「あ、シェ、シェーベリーまでです……。」
「俺もシェーベリーまでなんだ。もし良かったら一緒に行かないか?」
この時期に俺と同じ歳くらいの子が1人で街の外を歩いていることから何となく察してはいたが思った通り彼女もシェーベリーに向かうようだった。
平民で特にお金が無い層だとたまにこういったことがあるらしい。奨学金制度はあるが、シェーベリーに行くまでの費用は対象ではなく、護衛も雇えない為このようなことになるようだ。
俺としては話し相手が欲しい所だったし、放っておいて何かありましたではさすがに寝覚めが悪すぎる。俺は彼女を誘ってみた。
「で、でも……。」
「ん?もしかして怪しんでる?」
俺の言葉に対して何も言わないが、見たところそうらしい。まあ確かにいきなり騎士たちを引き連れた馬車が通れば何事かと思うのも無理はない。だが1人が危険なのも分かっているので少し決めかねている様子だ。
「俺はファンデン。ファンデン・ロートリースだ。一応リール・ア・リーフの子爵家の子なんだ。」
俺は身分を明かしてみた。しかし彼女の様子からするとロートリース家を知らないようだ。まあ上位の貴族ならまだしも下位の貴族などたくさん居るので、そう言われても分からないのは仕方がない。おそらく彼女はリール・ア・リーフとは違うところの出身だろうし。
「ど、どうだろうか……?馬車に1人で退屈なんだ。もし良かったら話し相手になってもらえたらなあ、なんて。」
「わ、分かりました。わ、私はエレナ・ノーンと申します。」
「おお、エレナさんだね。どうぞ乗って乗って。あ、荷物は後ろの荷車に乗せておこうか。頼むぞ。」
「ハッ。」
一応身分を明かされたということもあって、とりあえずは一緒に行ってくれることになった。名前はエレナ・ノーン。身長は145センメラーくらい、黒色のショートヘアーで瞳は茶色。素朴な顔立ちだがかわいらしい少女だ。
騎士に指示をしてエレナの荷物を後ろの荷車に乗せさせ、そしてエレナが馬車に乗り込んでくる。とりあえずシェーベリーに行くまでの話し相手を見つけることができ、俺はエレナと話し始める。
グレイティス王国は政情が安定している状態なのであまり賊の類いは出ないが、それでも全く出ないわけでは無いし、荷車を見た魔物が食料と勘違いして襲い掛かってくることも度々あるので全く油断ならない旅となる。
初日は特に何も起こらなかった。今回も実家とシェーベリーの中間辺りの宿場町で1泊する。ここは前回よりも大きい宿だ。格としては前回の宿より落ちるらしいが、ここは商隊が利用することも多い宿で馬車や荷車を置けるスペースが広いので、荷車も率いている俺たちもこちらに泊まることになった。
格落ちと言ってもそれなりの商人たちが利用する宿。そして俺たちは1番上等な部屋に泊ったのでそこまでみすぼらしさなどは感じなかった。
宿で一晩を過ごして再びシェーベリーに向けて出発する。途中で魔物に襲われたものの、大して強くない魔物だったので護衛の騎士たちがあっさりと撃退してくれた。俺がそれを知ったのは撃退した後すぐに報告を受けてのことだった。
しかし馬車の中で1人は退屈だ。御者に何度か話しかけてみるがあまり答えてくれない。馬の操作に集中したいらしい。護衛の者も常に周囲に気を配っている状態なのであまりこちらを構う時間はないらしい。退屈しのぎに本を読んだりしているが、どれも何度か読んでいる本なので集中しきれない。新しい本でも買っておけばと今更後悔する。
そんな時少し外の空気を吸おうと窓を開けて顔を出す。すると前の方に大きな荷物を背負ってたった1人で歩いている人間の後ろ姿が見えた。背丈からすれば小柄でもしかすると俺と同じ歳くらいかもしれない。
俺はそれを見てすぐ横についている騎士に「1人で歩いている者が居るぞ。」と声を掛けた。すると騎士は騎乗している騎士にそのことを伝えたようで、それは確認していることを報告してきた。騎士は「退かせますか?」と聞いてきた。全くそんなつもりはないのだが、彼は俺が前を歩く人間に不快感を覚えたのかと思ったようだ。
「いや……そんな必要は無い。あの者の横まで行ってくれ。」
俺は騎士たちに指示を出す。少しだけペースを速めて俺たちは前を歩いている者のすぐ近くまで接近した。向こうからも自分たちが近づいていることは分かったようで、こちらが通れるように道の端に移動した。
俺は窓を開けて道の端に行ったものに声を掛けた。背丈から察していた通り、おそらく俺と同じ歳くらいの少女だった。見た目は大人しそうな感じで背丈も小柄。その小柄な子が非常に大きなリュックを背負っている。丸みを帯びて横に広いもので長さも彼女の肩からお尻の辺りまである。何が入っているのかは分からないが、相当重そうだ。
「君、1人かい?」
「は、はい……。」
「ふーん。どこまで行くの?」
「あ、シェ、シェーベリーまでです……。」
「俺もシェーベリーまでなんだ。もし良かったら一緒に行かないか?」
この時期に俺と同じ歳くらいの子が1人で街の外を歩いていることから何となく察してはいたが思った通り彼女もシェーベリーに向かうようだった。
平民で特にお金が無い層だとたまにこういったことがあるらしい。奨学金制度はあるが、シェーベリーに行くまでの費用は対象ではなく、護衛も雇えない為このようなことになるようだ。
俺としては話し相手が欲しい所だったし、放っておいて何かありましたではさすがに寝覚めが悪すぎる。俺は彼女を誘ってみた。
「で、でも……。」
「ん?もしかして怪しんでる?」
俺の言葉に対して何も言わないが、見たところそうらしい。まあ確かにいきなり騎士たちを引き連れた馬車が通れば何事かと思うのも無理はない。だが1人が危険なのも分かっているので少し決めかねている様子だ。
「俺はファンデン。ファンデン・ロートリースだ。一応リール・ア・リーフの子爵家の子なんだ。」
俺は身分を明かしてみた。しかし彼女の様子からするとロートリース家を知らないようだ。まあ上位の貴族ならまだしも下位の貴族などたくさん居るので、そう言われても分からないのは仕方がない。おそらく彼女はリール・ア・リーフとは違うところの出身だろうし。
「ど、どうだろうか……?馬車に1人で退屈なんだ。もし良かったら話し相手になってもらえたらなあ、なんて。」
「わ、分かりました。わ、私はエレナ・ノーンと申します。」
「おお、エレナさんだね。どうぞ乗って乗って。あ、荷物は後ろの荷車に乗せておこうか。頼むぞ。」
「ハッ。」
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騎士に指示をしてエレナの荷物を後ろの荷車に乗せさせ、そしてエレナが馬車に乗り込んでくる。とりあえずシェーベリーに行くまでの話し相手を見つけることができ、俺はエレナと話し始める。
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