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第2章~2回目の小学生~
第14話Part.11~俺は悪くねえっ。だってみんながやれって言ったんだ~
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「お優しいのですね。もっと激しい気性のお方かと思っていたのですが。」
リータがふとそう言った。俺は優しいわけではなくただヘタレているだけだ。暮らす世界が変わってしまって見る景色が一変してしまったが結局根っこの部分は変わらない。良くも悪くもだ。リータの表情を見ると今はそれが良い方に作用しているようだが。
「初めての人が貴方で良かった……。また私と踊って下さいますか?」
「も、もちろん。」
初めてこの演目で踊った男がという意味で言っているが、言い回しが妙に意味深に聞こえる。いや、他に誰も聞いていないのだから気にする必要は無いのだが。
俺とリータは万雷の拍手で祝福されながら壇上から降りた。最初は少し嫌だったが、やってみれば中々楽しかった。俺はさっきまでペティと会話していた場所に戻った。
「ただいま。いや、参ったね。こんなことになるなんて。」
俺は苦笑いしながらペティに話しかける。だがペティは何故か答えてくれない。こちらを無言で見つめるだけ。
「ど、どうしたの……。」
「何でもありません。」
絶対に何でもある態度のペティ。少し頬を膨らせて、むーって声が脳内で再生されそうな表情だった。俺がペイツエルヴィンに選ばれた時はあんなに拍手していたのに……。
俺が悪いのだろうか。いや、俺は悪くねぇっ。しかしこうむくれられたままなのはまずい。
「何でも無さそうだけどどうしたの?話せないことなら別に無理には聞かないけど。」
ペティを見つめながらとりあえず無難に、話聞くけど嫌なら話さなくても良いと言ってみる。ペティは何も返さなかったが彼女の顔をしばらく見つめているとどうも耐え切れなくなったようで
「ご、ごめんなさい。ファンデン様とアヴォット様のダンスがすごく息が合っていたので、私はうまくできなかったなって思っただけで、ファンデン様が悪いわけじゃ無いんです……。」
それじゃあ俺に対しての膨れっ面の理由に合致しない気がするが……。これも嘘ではないのだろうが本心は別のところにあるような感じがする。しかしそれを言わないのは理由はどうあれ言いたくないのだろうからそれでも構わない。
「謝らなくてもいいよ。俺はペティさんと息ピッタリに踊れたって思ってるよ。それをみんなが見て俺をペイツエルヴィンに選んでくれたのかもしれない。ペティさんとのダンスは楽しくて結構ウキウキだったんだよ?」
別にペティとダンスしていて不都合な所はなかったし、楽しく踊れたのは事実だった。ちょっと話を盛り気味に話したが嘘は言っていない。
「本当、ですか?」
「ああ。ペティさんとペイツに来れてよかったと思ってるよ。」
「えへへ。私もファンデン様とペイツに来れてうれしいです!」
膨れっ面から少し困ったような顔、そして笑顔に戻ってきたペティ。機嫌を直してくれたようだ。俺はシェーベリー戦闘大学校へ、ペティはシェーベリーで家業の商人を。もう同じ学校には通うことがないので頻繁に会えるかは分からない。
それなのに何か行き違いを抱えたままだと、取り返しのつかないことになるかもしれない。せっかく友人になったのにそれではあまりに寂しい。だが今回はそうなることはなさそうで一先ず安心した。
「ロートリース様、馬車の準備ができました。」
この会場で働いている使用人の1人が外で家の馬車の準備ができていることを伝えに来てくれた。俺は彼に礼を言って、ペティを連れて外へ行く。そして来た時と同じように馬車に乗って彼女をフィオーニ家の邸宅まで送り届けた。
「今日はありがとう。すごく楽しかった。それとシェーベリーでもまたよろしくね。」
「はい。絶対にお店に来てください。たくさんサービスします。」
「行きつけにさせてもらうよ。じゃあまたね。」
俺は屋敷に入っていくペティを見届けてから馬車に戻った。やっと緊張から解放され、俺はドカッと勢いよく座る。行儀もクソも無く股を広げてだらしない体勢で、さっきからずっと苦しかった襟を緩める。その様子を御者に見られてしまったが
「セバスティアンには内緒にしておいてくれよ。もう緊張しっぱなしで俺ぁ疲れた!楽しいのは楽しいんだがこう柄じゃあないんだよ。」
と御者には口止めしつつ外で馬を操る御者に一方的に話しかけ続けて実家の屋敷へと戻って行った。
リータがふとそう言った。俺は優しいわけではなくただヘタレているだけだ。暮らす世界が変わってしまって見る景色が一変してしまったが結局根っこの部分は変わらない。良くも悪くもだ。リータの表情を見ると今はそれが良い方に作用しているようだが。
「初めての人が貴方で良かった……。また私と踊って下さいますか?」
「も、もちろん。」
初めてこの演目で踊った男がという意味で言っているが、言い回しが妙に意味深に聞こえる。いや、他に誰も聞いていないのだから気にする必要は無いのだが。
俺とリータは万雷の拍手で祝福されながら壇上から降りた。最初は少し嫌だったが、やってみれば中々楽しかった。俺はさっきまでペティと会話していた場所に戻った。
「ただいま。いや、参ったね。こんなことになるなんて。」
俺は苦笑いしながらペティに話しかける。だがペティは何故か答えてくれない。こちらを無言で見つめるだけ。
「ど、どうしたの……。」
「何でもありません。」
絶対に何でもある態度のペティ。少し頬を膨らせて、むーって声が脳内で再生されそうな表情だった。俺がペイツエルヴィンに選ばれた時はあんなに拍手していたのに……。
俺が悪いのだろうか。いや、俺は悪くねぇっ。しかしこうむくれられたままなのはまずい。
「何でも無さそうだけどどうしたの?話せないことなら別に無理には聞かないけど。」
ペティを見つめながらとりあえず無難に、話聞くけど嫌なら話さなくても良いと言ってみる。ペティは何も返さなかったが彼女の顔をしばらく見つめているとどうも耐え切れなくなったようで
「ご、ごめんなさい。ファンデン様とアヴォット様のダンスがすごく息が合っていたので、私はうまくできなかったなって思っただけで、ファンデン様が悪いわけじゃ無いんです……。」
それじゃあ俺に対しての膨れっ面の理由に合致しない気がするが……。これも嘘ではないのだろうが本心は別のところにあるような感じがする。しかしそれを言わないのは理由はどうあれ言いたくないのだろうからそれでも構わない。
「謝らなくてもいいよ。俺はペティさんと息ピッタリに踊れたって思ってるよ。それをみんなが見て俺をペイツエルヴィンに選んでくれたのかもしれない。ペティさんとのダンスは楽しくて結構ウキウキだったんだよ?」
別にペティとダンスしていて不都合な所はなかったし、楽しく踊れたのは事実だった。ちょっと話を盛り気味に話したが嘘は言っていない。
「本当、ですか?」
「ああ。ペティさんとペイツに来れてよかったと思ってるよ。」
「えへへ。私もファンデン様とペイツに来れてうれしいです!」
膨れっ面から少し困ったような顔、そして笑顔に戻ってきたペティ。機嫌を直してくれたようだ。俺はシェーベリー戦闘大学校へ、ペティはシェーベリーで家業の商人を。もう同じ学校には通うことがないので頻繁に会えるかは分からない。
それなのに何か行き違いを抱えたままだと、取り返しのつかないことになるかもしれない。せっかく友人になったのにそれではあまりに寂しい。だが今回はそうなることはなさそうで一先ず安心した。
「ロートリース様、馬車の準備ができました。」
この会場で働いている使用人の1人が外で家の馬車の準備ができていることを伝えに来てくれた。俺は彼に礼を言って、ペティを連れて外へ行く。そして来た時と同じように馬車に乗って彼女をフィオーニ家の邸宅まで送り届けた。
「今日はありがとう。すごく楽しかった。それとシェーベリーでもまたよろしくね。」
「はい。絶対にお店に来てください。たくさんサービスします。」
「行きつけにさせてもらうよ。じゃあまたね。」
俺は屋敷に入っていくペティを見届けてから馬車に戻った。やっと緊張から解放され、俺はドカッと勢いよく座る。行儀もクソも無く股を広げてだらしない体勢で、さっきからずっと苦しかった襟を緩める。その様子を御者に見られてしまったが
「セバスティアンには内緒にしておいてくれよ。もう緊張しっぱなしで俺ぁ疲れた!楽しいのは楽しいんだがこう柄じゃあないんだよ。」
と御者には口止めしつつ外で馬を操る御者に一方的に話しかけ続けて実家の屋敷へと戻って行った。
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