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第2章~2回目の小学生~
第14話Part.10~俺を選んでくれてありがとう(ふざけんな!)~
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ペイツエルヴィンとペイツイリィス。エルヴィンは騎士、イリィスは貴婦人という意味だ。元はエルヴィンという騎士とイリィスというご婦人が居たそうだが、それがあまりにも理想的な人物とされたため彼らの名前がそのまま固有名詞となったらしい。そしてこのペイツで1番の男女にこの栄誉に預かれるとのことだ。
正直俺にとってはその栄誉とやらはどうでもよかった。武術や魔術でトップを取るのはともかく、別にペイツで絶対に1番になりたいという気持ちは無かった。むしろすこぶる面倒だという気持ちの方が強い。
周囲は俺とリータに惜しみない拍手を送っている。隣のペティもそうだ。周囲に促されて俺たちは代表を発表した初老の男が居る壇上に上がった。その時あのラークと目が合った気がした。その時は俺が前に抱いていた印象そのままの優し気な表情だった。
「俺が第……何回だっけ?あ~第34回のペイツエルヴィンの称号を頂いて良いものか、少し恐れ多いんですが、選んでくれてありがとう。」
「第34回のペイツイリィスに選んでくださり真に感謝いたしますわ。皆様の期待に恥じぬようしっかりと務めさせていただきますわね。」
壇上に上がると代表スピーチのようなものをやらされた。そんなものするつもりが無かったので当たり障りのない挨拶をするつもりだったが、今回が第何回のペイツだったかをそんなに重要でもないと覚えていなかったため、初老の男に小声で尋ねるハメになった。
対するリータの方はというとしっかりと挨拶をした。全体的にユルイ挨拶の俺とは大違いだ。
エルヴィンとイリィスは参加者全員が見守る中たった2人でダンスしなければならない。俺も注目されるのは正直嫌いではない。でもこれに関しては俺からすれば悪目立ちの部類に入る。悪目立ちは避けたいがもうどうしようもない。悪目立ちな上に無様を晒して侮られるのが1番頭に来るのでここは覚悟を決めるしかない。
ダンスの種類は聞かされていない。いやもしかしたら発表があったかもしれないし、プログラムみたいなものが張り出されていたかもしれないが少なくとも俺は認識はしていない。それなので曲を聞いて判断するしかなかった。
「おい……嘘だろ。」
俺は流れてきた曲を聞いて驚愕した。今演奏されている曲は激しく踊る曲で身体の接触は当たり前。それどころか色々な場所に触れてしまう演目だ。たしかに授業で習ってはいた。だが授業では男子同士、女子同士で行うよう配慮するくらいだった。
俺は困惑しきりだったが、リータはというと平然とした様子。彼女も同じ授業を受けているはずなので知らないはずはないのだが。
最初からいきなり彼女の胸に手を置く体勢。俺は少し手を浮かせて触らないようにする。東亜として学生やってた頃に女子慣れしてなくて肩を組めず手を浮かしていたのを思い出す。この後クラスメイトにバレてめちゃくちゃイジられた苦い思い出だ。
目を合わせることも多いこの演目。今の体勢のまま目線を向けてリータに合わせる。そのリータの表情だが、明らかに怒ったような目をしている。整った容姿でキリッとした目力を感じさせる目が特徴的なリータだが、その彼女の怒った表情は中々怖い。
「しっかりと手を置いて下さいまし。別のことに気を取られて美しく舞えない方が私は嫌ですわ。」
小声でリータは言って、俺が触れないように手を浮かしているところへ少し胸を張って押し付けようとする。ペティほどではないがリータも中々豊かなものを持っている。俺はこの妙な状況に耐えられずに「わ、分かった。分かったから押しつけるのはよそう。」と小声で宥める。
彼女は胸を張った体勢から元に戻り、目線で「さあっ。」と言う。俺は意を決してリータの胸に手を置いた。彼女の胸が多少沈み込むくらいに触れる。正直に言うと(や、柔らかい……。)と思ってしまった。何も考えないようにしようと思ったのだが。
リータの表情は怒っている様子から柔らかい表情になっていた。もうしっかりダンスを踊る準備に入ったようだ。
俺は初めて異性と踊るこの演目をこなしていった。授業では同性と組んでみて異性のパートもやってみることで、異性がどのように動きたいか、それには自分がどうフォローすれば良いかが分かってくると言われたが、なるほどたしかに良く分かる。
授業では同性で身長がそれなりに近い相手と組んでいたため、25センメラーくらいの差がある女性相手にこの演目で踊ったのは初めてだ。しかしリータも言うだけあってダンスの素養が高く、まるで何度も組んでダンスをしたことがあるのかと思えるくらいにしっくりと来た。
そして俺たちがダンスを終えた後、会場からは惜しみ無い拍手が降り注いだ。色々と大変だったがとりあえず乗りきれたようだ。
正直俺にとってはその栄誉とやらはどうでもよかった。武術や魔術でトップを取るのはともかく、別にペイツで絶対に1番になりたいという気持ちは無かった。むしろすこぶる面倒だという気持ちの方が強い。
周囲は俺とリータに惜しみない拍手を送っている。隣のペティもそうだ。周囲に促されて俺たちは代表を発表した初老の男が居る壇上に上がった。その時あのラークと目が合った気がした。その時は俺が前に抱いていた印象そのままの優し気な表情だった。
「俺が第……何回だっけ?あ~第34回のペイツエルヴィンの称号を頂いて良いものか、少し恐れ多いんですが、選んでくれてありがとう。」
「第34回のペイツイリィスに選んでくださり真に感謝いたしますわ。皆様の期待に恥じぬようしっかりと務めさせていただきますわね。」
壇上に上がると代表スピーチのようなものをやらされた。そんなものするつもりが無かったので当たり障りのない挨拶をするつもりだったが、今回が第何回のペイツだったかをそんなに重要でもないと覚えていなかったため、初老の男に小声で尋ねるハメになった。
対するリータの方はというとしっかりと挨拶をした。全体的にユルイ挨拶の俺とは大違いだ。
エルヴィンとイリィスは参加者全員が見守る中たった2人でダンスしなければならない。俺も注目されるのは正直嫌いではない。でもこれに関しては俺からすれば悪目立ちの部類に入る。悪目立ちは避けたいがもうどうしようもない。悪目立ちな上に無様を晒して侮られるのが1番頭に来るのでここは覚悟を決めるしかない。
ダンスの種類は聞かされていない。いやもしかしたら発表があったかもしれないし、プログラムみたいなものが張り出されていたかもしれないが少なくとも俺は認識はしていない。それなので曲を聞いて判断するしかなかった。
「おい……嘘だろ。」
俺は流れてきた曲を聞いて驚愕した。今演奏されている曲は激しく踊る曲で身体の接触は当たり前。それどころか色々な場所に触れてしまう演目だ。たしかに授業で習ってはいた。だが授業では男子同士、女子同士で行うよう配慮するくらいだった。
俺は困惑しきりだったが、リータはというと平然とした様子。彼女も同じ授業を受けているはずなので知らないはずはないのだが。
最初からいきなり彼女の胸に手を置く体勢。俺は少し手を浮かせて触らないようにする。東亜として学生やってた頃に女子慣れしてなくて肩を組めず手を浮かしていたのを思い出す。この後クラスメイトにバレてめちゃくちゃイジられた苦い思い出だ。
目を合わせることも多いこの演目。今の体勢のまま目線を向けてリータに合わせる。そのリータの表情だが、明らかに怒ったような目をしている。整った容姿でキリッとした目力を感じさせる目が特徴的なリータだが、その彼女の怒った表情は中々怖い。
「しっかりと手を置いて下さいまし。別のことに気を取られて美しく舞えない方が私は嫌ですわ。」
小声でリータは言って、俺が触れないように手を浮かしているところへ少し胸を張って押し付けようとする。ペティほどではないがリータも中々豊かなものを持っている。俺はこの妙な状況に耐えられずに「わ、分かった。分かったから押しつけるのはよそう。」と小声で宥める。
彼女は胸を張った体勢から元に戻り、目線で「さあっ。」と言う。俺は意を決してリータの胸に手を置いた。彼女の胸が多少沈み込むくらいに触れる。正直に言うと(や、柔らかい……。)と思ってしまった。何も考えないようにしようと思ったのだが。
リータの表情は怒っている様子から柔らかい表情になっていた。もうしっかりダンスを踊る準備に入ったようだ。
俺は初めて異性と踊るこの演目をこなしていった。授業では同性と組んでみて異性のパートもやってみることで、異性がどのように動きたいか、それには自分がどうフォローすれば良いかが分かってくると言われたが、なるほどたしかに良く分かる。
授業では同性で身長がそれなりに近い相手と組んでいたため、25センメラーくらいの差がある女性相手にこの演目で踊ったのは初めてだ。しかしリータも言うだけあってダンスの素養が高く、まるで何度も組んでダンスをしたことがあるのかと思えるくらいにしっくりと来た。
そして俺たちがダンスを終えた後、会場からは惜しみ無い拍手が降り注いだ。色々と大変だったがとりあえず乗りきれたようだ。
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