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第2章~2回目の小学生~
第9話Part.2~俺は俺でしかない~
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「お見事。12歳でディエゴを倒すとは恐れ入りました。」
勝負がついた後、ゼオンからそう声を掛けられた。そうか、あと勝ったことがないのは父とこのゼオンだけか。まだゼオンと打ち合ったことは無い。だが確かめたくなった。ロートリース騎士団のトップの実力を。
「ゼオン。ディエゴを倒したからには次はお前なんだろ?」
俺はディエゴの首筋に押しつけていた木剣をゼオンに向けて、次はお前が戦ってくれるのかと軽く挑発した。ゼオンは武人らしく大きく豪快に笑ってから
「良いでしょう。しかしそうですな、まずはシェーベリー戦闘大学校入学の準備を終わらせた後ですな。」
ゼオンに条件付きで模擬戦の相手をすることを認めさせた。
シェーベリー戦闘大学校とは学園都市シェーベリーにある学校だ。シェーベリーはグレイティス王国のトップたちを育成する都市で戦闘学校だけではなく様々な国内トップの学校が集まった都市となっている。
俺は特に志望したわけではないが、ロートリース家ではもう既にシェーベリー戦闘大学校に行くことは確定している。
家柄、学力、戦闘能力。どれをとっても落ちる事はないだろうとは思っているが、グレイティス王国最高の戦闘学校である。入りたい人間は吐いて捨てるほど居る。油断をすれば落ちるかもしれない。
俺が東亜として生きていた時は間違いなく受かるし、倍率の低い学校を志望して、実際に受験勉強などせずに高校大学は受かった。
しかし今回そうはいかないのは分かり切っていた。初めてと言っていい受験戦争に正直不安がある。
だがここで「受かるかどうかまだ分からないんだぞ。」とは口が裂けても言えない。ゼオンを含む家中の誰もが俺は受かるとしか考えていない。受かって当然なのだ。
落ちる以前に俺が弱気な発言をした時点で家中の誰もが失望するのは想像に難くない。
なまじ能力を得てしまったのも余計に期待をかけられる要因になっている。これで俺が素の東亜のままなら出来が悪いと言われつつもそこそこの戦闘学校に通ってそこそこの将として生きられたかもしれない。
だが周囲より頭1つ2つ抜けた逞しい体格。騎士団のナンバー2を倒す膂力、学業の成績も良いともなれば誰だって期待する。まったく考えれば考えるほど頭が痛い。
現代日本に生きていた頃、持てる者の責任や義務という考え方を読んだことがあった。『持てる者は社会的規範になるよう振舞うべきだ。』という考え方だったか。
俺は力を与えられた。だがそれに相応しい精神は与えられなかった。俺は俺でしかない。現代社会に生きていた怠惰な地井東亜なのだ。
勝負がついた後、ゼオンからそう声を掛けられた。そうか、あと勝ったことがないのは父とこのゼオンだけか。まだゼオンと打ち合ったことは無い。だが確かめたくなった。ロートリース騎士団のトップの実力を。
「ゼオン。ディエゴを倒したからには次はお前なんだろ?」
俺はディエゴの首筋に押しつけていた木剣をゼオンに向けて、次はお前が戦ってくれるのかと軽く挑発した。ゼオンは武人らしく大きく豪快に笑ってから
「良いでしょう。しかしそうですな、まずはシェーベリー戦闘大学校入学の準備を終わらせた後ですな。」
ゼオンに条件付きで模擬戦の相手をすることを認めさせた。
シェーベリー戦闘大学校とは学園都市シェーベリーにある学校だ。シェーベリーはグレイティス王国のトップたちを育成する都市で戦闘学校だけではなく様々な国内トップの学校が集まった都市となっている。
俺は特に志望したわけではないが、ロートリース家ではもう既にシェーベリー戦闘大学校に行くことは確定している。
家柄、学力、戦闘能力。どれをとっても落ちる事はないだろうとは思っているが、グレイティス王国最高の戦闘学校である。入りたい人間は吐いて捨てるほど居る。油断をすれば落ちるかもしれない。
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しかし今回そうはいかないのは分かり切っていた。初めてと言っていい受験戦争に正直不安がある。
だがここで「受かるかどうかまだ分からないんだぞ。」とは口が裂けても言えない。ゼオンを含む家中の誰もが俺は受かるとしか考えていない。受かって当然なのだ。
落ちる以前に俺が弱気な発言をした時点で家中の誰もが失望するのは想像に難くない。
なまじ能力を得てしまったのも余計に期待をかけられる要因になっている。これで俺が素の東亜のままなら出来が悪いと言われつつもそこそこの戦闘学校に通ってそこそこの将として生きられたかもしれない。
だが周囲より頭1つ2つ抜けた逞しい体格。騎士団のナンバー2を倒す膂力、学業の成績も良いともなれば誰だって期待する。まったく考えれば考えるほど頭が痛い。
現代日本に生きていた頃、持てる者の責任や義務という考え方を読んだことがあった。『持てる者は社会的規範になるよう振舞うべきだ。』という考え方だったか。
俺は力を与えられた。だがそれに相応しい精神は与えられなかった。俺は俺でしかない。現代社会に生きていた怠惰な地井東亜なのだ。
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