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第2章~2回目の小学生~
第7話Part.20~やっと一人前に……~
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バルトルメスがイングジャミを一瞬で倒した後、撤退した足跡を追ったが途中で途切れてしまっていた。魔界に撤退したようだ。
こうしてグレイティス王国は自らの領土を守り切った。
「やはり戻るか。」
「ええ。その約束ですから。」
「少しは期待したんだがな。まあいい、アーシュレ殿にもバルトルメスが感謝していたと伝えておいてくれ。」
「ハッ。閣下、それでは。」
戦闘が終わり、バルトルメスの元を去るホルト。少し残念そうなバルトルメスだったが約束は約束なので、アーシュレに感謝の言葉を伝えてほしいと送り出してくれた。
グレイティス王国側の本陣は少し慌ただしくも戦時のようなピリピリした様子はなかった。指揮を執りそうな魔族の姿も無くなりひとまずの平和が訪れたことが分かり安堵した様子が感じられた。
中に入るとアーシュレの護衛部隊の隊長を代理で任せたあの副将がホルトの姿を視認して駆け寄ってきた。
「戻ったか!よか……ッ。じゃなく、やっと戻りやがったか。やっぱり隊長なんて面倒な役回りはお前がやれ!」
「素直に生きて戻ってくれてよかったと言えば良いものを……。」
「何ッ!?さっきのは弾みでつい。とにかく後は任せたからな!」
本陣はバルトルメスの部隊やカール一世の近衛部隊が前方で敵の攻撃を抑えきったため被害はなかったが、戦況は常に伝わっていたと思われるため副将もホルトの身を案じていたようだ。
しかしそれを言うのが照れ臭いようで言いかけた言葉を飲み込んで結局いつもの憎まれ口だった。
やれやれとは思いつつもそれも彼のらしさなので、やっと自分の家に戻ったような感覚になる。
「ホルト……!」
そしてホルトが最も敬愛し、最も会いたかった女性の声がした。
ホルトはその声の方向へと向き返り
「ただいま、戻りました。」
ホルトは頭を下げて主に挨拶する。彼女との約束をしっかりと守り帰還したのだ。激戦で幾度となく諦めかけたが、心には常に彼女の言葉があった。バルトルメスにも救われた。様々な人間のお陰で再びこの地に帰って来れたのだ。
「おかえりなさい、ホルト。」
「はい。」
「大きくなりましたね。」
「い、今更ですか?」
「そういうことではありません。」
アーシュレは感極まってホルトに抱き着いた。出会った頃は小さな小さな子供だったが、今は立派な体躯となったホルト、その事を言われたのかと思って今更ですかと困惑したように答えたが、アーシュレはクスクスと笑いながら「心の話ですよ。」と答えた。
ホルトはこの時初めて彼女に一人前と認められたと思ったと述懐している。
「掻い摘んで読んでみたけどしっかり読みたいな。今度読みに来よう。」
「夢中になって読んでたね。」
「ああ!課題の勉強にもなったし、おもしろかった。」
俺はホルト・ローズの功績は事象としては父や戦術・戦略の先生から聞いたことはあった。だがアーシュレ・ホイケとの関係や彼の残した言葉、知らないことが多かった。
そしてアメリアにこの図書館に連れてこられて初めて、これに触れることができた。自分から触れる事は恐らくなかっただろうと思う。
俺はアメリアの手を握って、「ありがとう。」と言った。アメリアは顔を赤くしながら「うん。」とだけ答えた。
俺は今、彼女の手を握ったことに気づいて、パっと両手を開くようにして離して「ごめん。ちょっと興奮しちゃって。」と謝るがアメリアは首を横にブンブン振って「大丈夫だよ。」と答える。
少し気まずくなってしまった。アメリアはあれ以来しばらく呆けた様子で上の空、こういう時どうしたらいいか分からない。
結局図書館から学校まで俺とアメリアはほとんど言葉を交わさずに帰ることになってしまった。
こうしてグレイティス王国は自らの領土を守り切った。
「やはり戻るか。」
「ええ。その約束ですから。」
「少しは期待したんだがな。まあいい、アーシュレ殿にもバルトルメスが感謝していたと伝えておいてくれ。」
「ハッ。閣下、それでは。」
戦闘が終わり、バルトルメスの元を去るホルト。少し残念そうなバルトルメスだったが約束は約束なので、アーシュレに感謝の言葉を伝えてほしいと送り出してくれた。
グレイティス王国側の本陣は少し慌ただしくも戦時のようなピリピリした様子はなかった。指揮を執りそうな魔族の姿も無くなりひとまずの平和が訪れたことが分かり安堵した様子が感じられた。
中に入るとアーシュレの護衛部隊の隊長を代理で任せたあの副将がホルトの姿を視認して駆け寄ってきた。
「戻ったか!よか……ッ。じゃなく、やっと戻りやがったか。やっぱり隊長なんて面倒な役回りはお前がやれ!」
「素直に生きて戻ってくれてよかったと言えば良いものを……。」
「何ッ!?さっきのは弾みでつい。とにかく後は任せたからな!」
本陣はバルトルメスの部隊やカール一世の近衛部隊が前方で敵の攻撃を抑えきったため被害はなかったが、戦況は常に伝わっていたと思われるため副将もホルトの身を案じていたようだ。
しかしそれを言うのが照れ臭いようで言いかけた言葉を飲み込んで結局いつもの憎まれ口だった。
やれやれとは思いつつもそれも彼のらしさなので、やっと自分の家に戻ったような感覚になる。
「ホルト……!」
そしてホルトが最も敬愛し、最も会いたかった女性の声がした。
ホルトはその声の方向へと向き返り
「ただいま、戻りました。」
ホルトは頭を下げて主に挨拶する。彼女との約束をしっかりと守り帰還したのだ。激戦で幾度となく諦めかけたが、心には常に彼女の言葉があった。バルトルメスにも救われた。様々な人間のお陰で再びこの地に帰って来れたのだ。
「おかえりなさい、ホルト。」
「はい。」
「大きくなりましたね。」
「い、今更ですか?」
「そういうことではありません。」
アーシュレは感極まってホルトに抱き着いた。出会った頃は小さな小さな子供だったが、今は立派な体躯となったホルト、その事を言われたのかと思って今更ですかと困惑したように答えたが、アーシュレはクスクスと笑いながら「心の話ですよ。」と答えた。
ホルトはこの時初めて彼女に一人前と認められたと思ったと述懐している。
「掻い摘んで読んでみたけどしっかり読みたいな。今度読みに来よう。」
「夢中になって読んでたね。」
「ああ!課題の勉強にもなったし、おもしろかった。」
俺はホルト・ローズの功績は事象としては父や戦術・戦略の先生から聞いたことはあった。だがアーシュレ・ホイケとの関係や彼の残した言葉、知らないことが多かった。
そしてアメリアにこの図書館に連れてこられて初めて、これに触れることができた。自分から触れる事は恐らくなかっただろうと思う。
俺はアメリアの手を握って、「ありがとう。」と言った。アメリアは顔を赤くしながら「うん。」とだけ答えた。
俺は今、彼女の手を握ったことに気づいて、パっと両手を開くようにして離して「ごめん。ちょっと興奮しちゃって。」と謝るがアメリアは首を横にブンブン振って「大丈夫だよ。」と答える。
少し気まずくなってしまった。アメリアはあれ以来しばらく呆けた様子で上の空、こういう時どうしたらいいか分からない。
結局図書館から学校まで俺とアメリアはほとんど言葉を交わさずに帰ることになってしまった。
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