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第2章~2回目の小学生~
第7話Part.19~戦いの終結~
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ホルトたちは登山道を進んだ。斜面はそれほど厳しくはなく、この山には様々な薬草などが取れるため薬草を摘みに馬車なども通るため道も広く舗装されているため楽とは言わないがかなり上りやすい山だった。
斥候の報告通り特に障害も無く山頂に作られている本陣まで行くことができたがリール山の山頂は敵軍の本陣にしては静かだった。
ホルトの脅しが効いたのか。いやしかし何者かが居る気配をホルトだけではなく他の兵卒も感じていた。
陣内は幕が張られており中の様子をうかがい知ることはできない。その為兵卒たちが幕を剣で斬り裂いて陣内に突撃した。
そこに居たのはイングジャミと呼ばれる魔物だった。
5メラーを超える体長で腕や脚は丸太のごとき太さで、人間に近い動きをする二足歩行の生き物にしては腕や脚が非常に短く、脚は体長の3分の1程度の長さしかなく、腕の長さもイングジャミの両腕を広げさせてその長さを測らせてみると体長の3分の2程度しかない。
顔は血色の良い赤ら顔で、小さな目が広い感覚で2つついている。頭頂部にほど近い左右の頭に大きな巻貝の入り口のようにも見える耳がついており、鼻は元の魔物の名残か大きく立派な角が生えている。
歯が生えそろっており、特に上部の犬歯は発達して立派な牙となっている。
そんな見た目の魔物であるが単純な力なら魔物の中でもトップクラスに位置している非常に強い魔物だった。しかもそれが2体残っている。
イングジャミは獰猛な魔物だが、突入してきた兵卒たちに一瞥をくれるだけで襲い掛からなかった。この魔物が大人しいのは眠っている時と食事をしている時くらいだ。
後続して陣内に入ったホルトたちが見たものは、イングジャミが何かの肉を貪っているところだった。奴の口から何か足の様なものが見える。
魔族側の総大将は撤退したようだが、足止めの為に強力な魔物を殿に置いて逃げたのだろう。獰猛で高位の魔族の言うことですらあまり聞かない魔物であるため、ここから離れないための餌まで用意して。
「た、助けて……!助けてェぇぇェェッ!!」
ホルトはイングジャミの足元で叫ぶ者に見覚えがあった。そう、あの指揮官と戦った時に居た魔族の女の1人だった。よく見るとイングジャミの口から出ている足はその片割れの衣服を身につけている。
どうやら指揮官をみすみす討たれた上にすごすごと帰ってきた2人を役立たずと断じてそれならば最期に餌くらいにはなると放置していったようだ。
どうやら何かの魔術が掛かっているのか首から上以外は動かせないらしい。
「何でもします。何でもしますから私を助けてくださいィぃィィぃぃぃっ!!」
多少は情けのつもりで解放してやったのだが、まさかこんなことになってしまうとはホルトも思いもよらず、ホルトは愕然とした。
セオリーならばここはあの女が食べられるのを待った方が良い。イングジャミは食事中は大人しいが食事を邪魔されればその場に居る生き物を全て殺しつくすまで暴れる。いや、それでも収まらずに更に血を求めて暴の限りを尽くす。
そうなればせっかく守り切った街に被害が及ぶかもしれない。それだけは避けなければいけなかった。
できるならあの女も助けてはやりたい。人間は彼女らを魔族と呼称し、彼女らもそう自称しているが魔族だから即ち悪というわけでもなく、悪い人間も居るように悪い魔族も居り、そして価値観の違いがあるというだけのことだった。
だが今のホルトにはあの女を助け、なおかつ暴れさせないほど早く倒す力量も獲物も無かった。
折れた剣の代わりはとりあえず指揮官の長剣をそのまま使っているが、慣れた武器ではないため普段と同じように扱えそうにはなかった。
敵方の者と同胞、比べるまでも無く。ホルトは助けを乞う女を見捨てる判断をした。
「何を立ち止まっている?ふむ、そうか……。」
この軍の将軍であるバルトルメスが前に出てきてホルトに尋ねる。だがホルトは何も答えられなかった。何も答えないホルトを置いて前を向くとイングジャミが魔族の女の脚を掴んでいた。最早女の叫び声は言葉になっておらず、とにかく必死に命乞いを続けている。
それを見て得心が行ったという顔を見せるとホルトたちの前から姿を消した。
いや、本当は消えてはいないのだが彼の動きが速すぎて一瞬消えたように思ってしまったのだ。
そしてホルトたちが見たのはイングジャミ2体の首を刎ねたバルトルメスの姿だった。
斥候の報告通り特に障害も無く山頂に作られている本陣まで行くことができたがリール山の山頂は敵軍の本陣にしては静かだった。
ホルトの脅しが効いたのか。いやしかし何者かが居る気配をホルトだけではなく他の兵卒も感じていた。
陣内は幕が張られており中の様子をうかがい知ることはできない。その為兵卒たちが幕を剣で斬り裂いて陣内に突撃した。
そこに居たのはイングジャミと呼ばれる魔物だった。
5メラーを超える体長で腕や脚は丸太のごとき太さで、人間に近い動きをする二足歩行の生き物にしては腕や脚が非常に短く、脚は体長の3分の1程度の長さしかなく、腕の長さもイングジャミの両腕を広げさせてその長さを測らせてみると体長の3分の2程度しかない。
顔は血色の良い赤ら顔で、小さな目が広い感覚で2つついている。頭頂部にほど近い左右の頭に大きな巻貝の入り口のようにも見える耳がついており、鼻は元の魔物の名残か大きく立派な角が生えている。
歯が生えそろっており、特に上部の犬歯は発達して立派な牙となっている。
そんな見た目の魔物であるが単純な力なら魔物の中でもトップクラスに位置している非常に強い魔物だった。しかもそれが2体残っている。
イングジャミは獰猛な魔物だが、突入してきた兵卒たちに一瞥をくれるだけで襲い掛からなかった。この魔物が大人しいのは眠っている時と食事をしている時くらいだ。
後続して陣内に入ったホルトたちが見たものは、イングジャミが何かの肉を貪っているところだった。奴の口から何か足の様なものが見える。
魔族側の総大将は撤退したようだが、足止めの為に強力な魔物を殿に置いて逃げたのだろう。獰猛で高位の魔族の言うことですらあまり聞かない魔物であるため、ここから離れないための餌まで用意して。
「た、助けて……!助けてェぇぇェェッ!!」
ホルトはイングジャミの足元で叫ぶ者に見覚えがあった。そう、あの指揮官と戦った時に居た魔族の女の1人だった。よく見るとイングジャミの口から出ている足はその片割れの衣服を身につけている。
どうやら指揮官をみすみす討たれた上にすごすごと帰ってきた2人を役立たずと断じてそれならば最期に餌くらいにはなると放置していったようだ。
どうやら何かの魔術が掛かっているのか首から上以外は動かせないらしい。
「何でもします。何でもしますから私を助けてくださいィぃィィぃぃぃっ!!」
多少は情けのつもりで解放してやったのだが、まさかこんなことになってしまうとはホルトも思いもよらず、ホルトは愕然とした。
セオリーならばここはあの女が食べられるのを待った方が良い。イングジャミは食事中は大人しいが食事を邪魔されればその場に居る生き物を全て殺しつくすまで暴れる。いや、それでも収まらずに更に血を求めて暴の限りを尽くす。
そうなればせっかく守り切った街に被害が及ぶかもしれない。それだけは避けなければいけなかった。
できるならあの女も助けてはやりたい。人間は彼女らを魔族と呼称し、彼女らもそう自称しているが魔族だから即ち悪というわけでもなく、悪い人間も居るように悪い魔族も居り、そして価値観の違いがあるというだけのことだった。
だが今のホルトにはあの女を助け、なおかつ暴れさせないほど早く倒す力量も獲物も無かった。
折れた剣の代わりはとりあえず指揮官の長剣をそのまま使っているが、慣れた武器ではないため普段と同じように扱えそうにはなかった。
敵方の者と同胞、比べるまでも無く。ホルトは助けを乞う女を見捨てる判断をした。
「何を立ち止まっている?ふむ、そうか……。」
この軍の将軍であるバルトルメスが前に出てきてホルトに尋ねる。だがホルトは何も答えられなかった。何も答えないホルトを置いて前を向くとイングジャミが魔族の女の脚を掴んでいた。最早女の叫び声は言葉になっておらず、とにかく必死に命乞いを続けている。
それを見て得心が行ったという顔を見せるとホルトたちの前から姿を消した。
いや、本当は消えてはいないのだが彼の動きが速すぎて一瞬消えたように思ってしまったのだ。
そしてホルトたちが見たのはイングジャミ2体の首を刎ねたバルトルメスの姿だった。
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