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第2章~2回目の小学生~
第7話Part.9~ホルト・ローズ、破剣公バルトルメスの旗下に入る~
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リール山の戦いで従軍することになったアーシュレとホルト。今まで彼女らは戦に出た事など無かったが、リール山に集まった魔族の軍団は非常に多く騎士や魔術師を総動員して戦わなければ国の存亡に関わるものだった。
アーシュレは防御魔術や回復魔術に長けていたため従軍することになった。当然仕えるホルトも彼女の護衛としてついて行くことになったのだが、軍議の場に一兵卒のホルト、従軍した魔術の一人というだけのアーシュレも呼ばれた。意味も分からないまま末席に座らされて軍議が進むのを黙ってみていた2人だったが、ここで最前線の指揮官であるバルトルメスが
「この状況を打ち破る為に、アーシュレ・ホイケ殿からホルト・ローズを借り受けたい。」
と言い出したのだ。どうやら2人が軍議に呼ばれたのはその事が関係していた。バルトルメスはホルトが魔物と戦っている姿を何度か見かけたことがあり、自身の旗下に加えたいと考えて何度か勧誘を行ったことがあった。その度にホルトは断っていたが、今この場で旗下に誘われたのだ。
総大将で当時のグレイティス王のカール一世から促されて答える。アーシュレは複雑そうな表情が一瞬見えたものの「ご随意のままに。」と要請を受諾した。
しかしホルトはアーシュレを護衛する必要があることと、大規模な戦闘に参加したことは無く他の騎士と足並みを揃えられないため足手まといになり、とても期待には応えられないと自身の力不足を理由に固辞した。しかし
「お前の忠誠は大したものだ。しかしだからこそ頼みたい。俺もグレイティス一の豪勇と言われた男。その誇りを懸けて突破などさせぬと考えている。だがお前が居ればそれが揺るぎないものとなるのだ。それはすなわちアーシュレ殿を守ることに繋がる。俺はこのグレイティス王国とその民を守りたい。お前もアーシュレ殿に民を救う光を見たのならば、アーシュレ殿を守り、そして民を救う為に俺に力を貸してくれ。」
ここまで言われて断る言葉をホルトは持ち合わせていなかった。ホルトはバルトルメスの要請に応じて、彼が率いる最前線の部隊に組み込まれることとなる。
ホルトはバルトルメスが布陣する最前線の陣へ行く前に副将にアーシュレ護衛の指揮を任せる事を告げた。この副将はホルトが王都に来た時に友となった者だ。
彼もアーシュレに仕えるようになってからはほとんどの仕事を彼と一緒に行った戦友で、後を託せるのは彼しか居ない。しかしその事は言わずただ任せると言ったのみだった。
しかし彼の今から行く場所、そして彼自身の様子からおおよその気持ちは伝わったようで
「必ず戻れ。俺は隊長など性に合わん。あくまで臨時だ臨時!」
と友としての言葉で返した。ホルトは苦笑いしながら「そうだな。お前に隊長続けさせたら護衛隊も終わりだ。さっさと帰って来てやる。」と返してバルトルメスの陣へと向かうことにしたが
「私には何も言わずに行くのですか?」
背を向けたホルトに声が飛んでくる。その声の主はもちろん彼が仕えているアーシュレ・ホイケその人である。彼女の言葉の通り、ホルトはアーシュレに何も告げず行こうとしたのだが彼女には見抜かれており、そうさせてはくれなかった。
「ホルト。必ず戻ってきてください。」
「…………必ずアーシュレ様を守ります。」
「戻って来なさいと言っているのです。」
「わ、分かりました。必ず……戻ります。」
アーシュレの言葉に対して少し誤魔化した返答をするが、アーシュレはそれを許さなかった。彼女はホルトを年の離れた弟のように感じていたようで、厳しくも優しい態度でかならず帰ってくるように言った。
「ホルト、これを持っていきなさい。」
「これは?」
「傷の回復薬です。作る手順が長いのでこれ1つしか作れませんでしたが、必ずあなたを守ってくれるはずです。」
「そんなものを……ありがとうございます。」
アーシュレは小瓶を1つホルトに渡した。これは彼女が今研究している飲み薬で、効果は実証されているものの希少な素材が必要であり手順も多く、更に精製する人間の技量が高くなければ今のところ精製できず、魔術力回復薬と違って量産できていないものだった。
ホルトはやはり彼女の力は数々の人々を救うものであると確信を深めて、必ず守るのだという思いを強める。
ホルトは改めてアーシュレに頭を下げ、本陣から出てバルトルメスの陣がある最前線へと歩みを進めて行った。
アーシュレは防御魔術や回復魔術に長けていたため従軍することになった。当然仕えるホルトも彼女の護衛としてついて行くことになったのだが、軍議の場に一兵卒のホルト、従軍した魔術の一人というだけのアーシュレも呼ばれた。意味も分からないまま末席に座らされて軍議が進むのを黙ってみていた2人だったが、ここで最前線の指揮官であるバルトルメスが
「この状況を打ち破る為に、アーシュレ・ホイケ殿からホルト・ローズを借り受けたい。」
と言い出したのだ。どうやら2人が軍議に呼ばれたのはその事が関係していた。バルトルメスはホルトが魔物と戦っている姿を何度か見かけたことがあり、自身の旗下に加えたいと考えて何度か勧誘を行ったことがあった。その度にホルトは断っていたが、今この場で旗下に誘われたのだ。
総大将で当時のグレイティス王のカール一世から促されて答える。アーシュレは複雑そうな表情が一瞬見えたものの「ご随意のままに。」と要請を受諾した。
しかしホルトはアーシュレを護衛する必要があることと、大規模な戦闘に参加したことは無く他の騎士と足並みを揃えられないため足手まといになり、とても期待には応えられないと自身の力不足を理由に固辞した。しかし
「お前の忠誠は大したものだ。しかしだからこそ頼みたい。俺もグレイティス一の豪勇と言われた男。その誇りを懸けて突破などさせぬと考えている。だがお前が居ればそれが揺るぎないものとなるのだ。それはすなわちアーシュレ殿を守ることに繋がる。俺はこのグレイティス王国とその民を守りたい。お前もアーシュレ殿に民を救う光を見たのならば、アーシュレ殿を守り、そして民を救う為に俺に力を貸してくれ。」
ここまで言われて断る言葉をホルトは持ち合わせていなかった。ホルトはバルトルメスの要請に応じて、彼が率いる最前線の部隊に組み込まれることとなる。
ホルトはバルトルメスが布陣する最前線の陣へ行く前に副将にアーシュレ護衛の指揮を任せる事を告げた。この副将はホルトが王都に来た時に友となった者だ。
彼もアーシュレに仕えるようになってからはほとんどの仕事を彼と一緒に行った戦友で、後を託せるのは彼しか居ない。しかしその事は言わずただ任せると言ったのみだった。
しかし彼の今から行く場所、そして彼自身の様子からおおよその気持ちは伝わったようで
「必ず戻れ。俺は隊長など性に合わん。あくまで臨時だ臨時!」
と友としての言葉で返した。ホルトは苦笑いしながら「そうだな。お前に隊長続けさせたら護衛隊も終わりだ。さっさと帰って来てやる。」と返してバルトルメスの陣へと向かうことにしたが
「私には何も言わずに行くのですか?」
背を向けたホルトに声が飛んでくる。その声の主はもちろん彼が仕えているアーシュレ・ホイケその人である。彼女の言葉の通り、ホルトはアーシュレに何も告げず行こうとしたのだが彼女には見抜かれており、そうさせてはくれなかった。
「ホルト。必ず戻ってきてください。」
「…………必ずアーシュレ様を守ります。」
「戻って来なさいと言っているのです。」
「わ、分かりました。必ず……戻ります。」
アーシュレの言葉に対して少し誤魔化した返答をするが、アーシュレはそれを許さなかった。彼女はホルトを年の離れた弟のように感じていたようで、厳しくも優しい態度でかならず帰ってくるように言った。
「ホルト、これを持っていきなさい。」
「これは?」
「傷の回復薬です。作る手順が長いのでこれ1つしか作れませんでしたが、必ずあなたを守ってくれるはずです。」
「そんなものを……ありがとうございます。」
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ホルトはやはり彼女の力は数々の人々を救うものであると確信を深めて、必ず守るのだという思いを強める。
ホルトは改めてアーシュレに頭を下げ、本陣から出てバルトルメスの陣がある最前線へと歩みを進めて行った。
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