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第2章~2回目の小学生~
第6話Part.7~国の命運を託されたシルヴィ~
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「兄さん、綺麗な泉ですね!」
20歳のシルヴァは若く才知に溢れた美女だった。短めに切られた銀の髪はサラサラとした綺麗なもので、その美貌をますます際立たせていた。しかしそんな見た目とは裏腹に中々無邪気な女性だったらしく、泉を見てその綺麗な景色にはしゃいでいたそうだ。
この泉でシルヴァンは彼女に王カール・グレイティス一世から受けた多大な恩の話をした。その為に今佩いている剣を授けられたこの泉に彼女を連れてきたのだ。
「ラシュリー家は王家から多大な恩を受けている。しかしそれを快く思わない者も多い。だがそんなことはどうでもいい。ただ……それによって王が侮られる事などあってはならないのだ。」
王はラシュリー家に多大な恩恵を与えた、しかしそれをよく思わない者が多いのは王自身も知っていた。だがしかし王自身も若さゆえか、自身がシルヴァンを認めれば臣下も自然と認めるであろうと考えている節があったようだ。
その為剣を与えてみたり、戦いぶりを賞賛してみたりとしていたのだが、騎士や武功貴族層は働きを目の当たりにした上で彼を認めるようになったが、戦闘には無縁の貴族層には未だ認められず、シルヴァン・ラシュリーは王の側に仕えている故に王に取り入っていると陰口を叩かれたままだったようだ。
自分の陰口なら我慢できようが、それによって王の恩恵自体が疑われることには我慢ならなかった。
その為誰もが認めざるを得ない大功を残す他ない。その為今回の戦いに参戦することになった妹にも改めてグレイティス王家の恩恵を教える必要があると考えたのだ。
「兄さん、私もラシュリー家の子です。必ず命を懸けて守り抜きます。」
「……すまぬ!」
彼女が配置された位置はこの泉の近く。後方ではあるが非常に重要な拠点だった。すぐ後ろにも陣地はあるが、そこを抜かれれば街に魔物が流れ込み、そしてこの泉自体も重要だった。
この綺麗な泉の水には不思議な力があるようで、そこから魔術力を回復する水が生成できるそうだ。
魔術とは精霊に問いかけて力を借りるといったものだが、当然ちゃんと発音する事以外にも必要なものがあった。その力自体は今現在でも解明されていないのだが、精霊は魔術を使う者の何かを代償にして力を貸してくれるようなのだ。それを今は便宜上魔術力と呼んでいる。
この魔術力回復の水もたまたまにたまたまがかさなり生成され、効果も見られたものだった。
不思議な泉の水を飲料水として汲んでいた時、治癒力を高める為の飲み薬を水に落としてしまった。薬は貴重であるため、水に浸していても効果くらいはあるだろうとそのままにしていたらしい。
そして数日が経った後に強い魔物と遭遇してしまい、なんとか撃退はできたものの魔術力は尽き、それでも魔術を使った影響で体力も大きく落としていた。
どうも魔術力が切れた後は体力を消化して魔術を使えるらしい。いつ切れたのかは魔術の使用中に猛烈な疲労感が襲ってくるためその時初めて分かるのだが。
魔術力も体力もしばらく休息をとれば回復し、また使えるようになるが、正確な時間は当然個人差が現れる。
ともかく喉が渇いていたし、体力も回復してくれればということで、あの飲み薬を浸した泉の水を飲むと猛烈な疲労感がみるみる内に無くなったという。
水を飲んだ者は安全な場所まで味方を連れて行き回復魔術を使ってみると、疲労感が襲ってこなかったので、切れていたはずの魔術力が回復していたことが分かったのだ。
その後様々なものや人で試し、魔術力回復の効果があると認められて今日でも使用されている薬の1つである。
人間と魔族だと一部の上澄みを除けば基本的には魔族の方が強く、戦力の維持は不可欠で、魔術力もその大きな助けとなる。
精製水は当然王都からもリール・ア・リーフの街からも持ってきてはいるが無限ではない。そのため戦闘中でも作り続けなくてはならないが、精製水が作れる水はこの辺りではこの泉しかなく、ここを失えば戦局が大きく変わってしまうであろう。
それ故にシルヴィを含めて防御魔術に特に優れた魔術師を100人配置している。しかし攻められればそれでも厳しいかもしれない。妹を危険な場所に身を置かせてしまったことをシルヴァンは謝ったが、彼女も誇り高きラシュリー家の1人。とうに覚悟はできていた。
「シルヴィ・ラシュリー、この地を頼んだ!」
「はい。」
その覚悟を感じ取った兄は、彼女を妹としてではなく、1人の騎士として重要拠点を託した。妹はそれを知ってか知らずか、柔らかい笑顔で答えて兄を主君の元へと送り出した。
20歳のシルヴァは若く才知に溢れた美女だった。短めに切られた銀の髪はサラサラとした綺麗なもので、その美貌をますます際立たせていた。しかしそんな見た目とは裏腹に中々無邪気な女性だったらしく、泉を見てその綺麗な景色にはしゃいでいたそうだ。
この泉でシルヴァンは彼女に王カール・グレイティス一世から受けた多大な恩の話をした。その為に今佩いている剣を授けられたこの泉に彼女を連れてきたのだ。
「ラシュリー家は王家から多大な恩を受けている。しかしそれを快く思わない者も多い。だがそんなことはどうでもいい。ただ……それによって王が侮られる事などあってはならないのだ。」
王はラシュリー家に多大な恩恵を与えた、しかしそれをよく思わない者が多いのは王自身も知っていた。だがしかし王自身も若さゆえか、自身がシルヴァンを認めれば臣下も自然と認めるであろうと考えている節があったようだ。
その為剣を与えてみたり、戦いぶりを賞賛してみたりとしていたのだが、騎士や武功貴族層は働きを目の当たりにした上で彼を認めるようになったが、戦闘には無縁の貴族層には未だ認められず、シルヴァン・ラシュリーは王の側に仕えている故に王に取り入っていると陰口を叩かれたままだったようだ。
自分の陰口なら我慢できようが、それによって王の恩恵自体が疑われることには我慢ならなかった。
その為誰もが認めざるを得ない大功を残す他ない。その為今回の戦いに参戦することになった妹にも改めてグレイティス王家の恩恵を教える必要があると考えたのだ。
「兄さん、私もラシュリー家の子です。必ず命を懸けて守り抜きます。」
「……すまぬ!」
彼女が配置された位置はこの泉の近く。後方ではあるが非常に重要な拠点だった。すぐ後ろにも陣地はあるが、そこを抜かれれば街に魔物が流れ込み、そしてこの泉自体も重要だった。
この綺麗な泉の水には不思議な力があるようで、そこから魔術力を回復する水が生成できるそうだ。
魔術とは精霊に問いかけて力を借りるといったものだが、当然ちゃんと発音する事以外にも必要なものがあった。その力自体は今現在でも解明されていないのだが、精霊は魔術を使う者の何かを代償にして力を貸してくれるようなのだ。それを今は便宜上魔術力と呼んでいる。
この魔術力回復の水もたまたまにたまたまがかさなり生成され、効果も見られたものだった。
不思議な泉の水を飲料水として汲んでいた時、治癒力を高める為の飲み薬を水に落としてしまった。薬は貴重であるため、水に浸していても効果くらいはあるだろうとそのままにしていたらしい。
そして数日が経った後に強い魔物と遭遇してしまい、なんとか撃退はできたものの魔術力は尽き、それでも魔術を使った影響で体力も大きく落としていた。
どうも魔術力が切れた後は体力を消化して魔術を使えるらしい。いつ切れたのかは魔術の使用中に猛烈な疲労感が襲ってくるためその時初めて分かるのだが。
魔術力も体力もしばらく休息をとれば回復し、また使えるようになるが、正確な時間は当然個人差が現れる。
ともかく喉が渇いていたし、体力も回復してくれればということで、あの飲み薬を浸した泉の水を飲むと猛烈な疲労感がみるみる内に無くなったという。
水を飲んだ者は安全な場所まで味方を連れて行き回復魔術を使ってみると、疲労感が襲ってこなかったので、切れていたはずの魔術力が回復していたことが分かったのだ。
その後様々なものや人で試し、魔術力回復の効果があると認められて今日でも使用されている薬の1つである。
人間と魔族だと一部の上澄みを除けば基本的には魔族の方が強く、戦力の維持は不可欠で、魔術力もその大きな助けとなる。
精製水は当然王都からもリール・ア・リーフの街からも持ってきてはいるが無限ではない。そのため戦闘中でも作り続けなくてはならないが、精製水が作れる水はこの辺りではこの泉しかなく、ここを失えば戦局が大きく変わってしまうであろう。
それ故にシルヴィを含めて防御魔術に特に優れた魔術師を100人配置している。しかし攻められればそれでも厳しいかもしれない。妹を危険な場所に身を置かせてしまったことをシルヴァンは謝ったが、彼女も誇り高きラシュリー家の1人。とうに覚悟はできていた。
「シルヴィ・ラシュリー、この地を頼んだ!」
「はい。」
その覚悟を感じ取った兄は、彼女を妹としてではなく、1人の騎士として重要拠点を託した。妹はそれを知ってか知らずか、柔らかい笑顔で答えて兄を主君の元へと送り出した。
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