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第2章~2回目の小学生~
第6話Part.2~ラシュリー家と王家~
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【カニー=この国の貨幣の名前】
【1メラー=100センメラー】
活気のあった市場と打って変わってシーンと静まり返った泉。今は俺とアリア以外の人は居ないようだ。
水辺のほとりに高さ2メラーほど、厚さ30センメラーほどの石板のような石が建っている。
石の表面自体はごつごつとしていて人工的に切り出されたものではなさそうだが、この石にシルヴィ・ラシュリーが文字を刻んだようだ。
俺とアリアは石板の前に立ち刻まれた文字を見てみる。文章自体はそう長くない。しかし石板は長年雨風に曝されていたからか文字が風化してしまっており、2人で顔を見合わせてお互い読めないなという顔をする。
しかしこの泉の石にシルヴィが文字を刻んだということは当時でも知られていたため、石板のすぐ隣に立札が立っており、そこに彼女が何と刻んだのかが書かれていた。
【我はこのリールの地にて誓う
命の限りこの地と民を守護せん
我は敵を前にしてこの地より一歩たりとも退かぬ
たとえ命尽きようとも永久の繁栄の礎とならん 】
短くも彼女の不退転の誓いが刻まれていた。そして実際に自らが守っていた防衛地点から一歩たりとも退かず守り抜き、命を落とした。
いくら今日でも忠心篤い配下として名高いアシュリー家の娘、シルヴィ・ラシュリーでも何故そこまでと思う者も居るであろう程の凄惨な死に様だった彼女の忠心の理由は彼女の父の代に遡る。
彼女の出自であるラシュリー家は当時、代々の領地が痩せ衰えて生活にも難儀するほどで貧乏貴族と揶揄されていた。
そしてその貧乏貴族であった当時の当主で彼女の父であるシルヴァ・ラシュリーに、とある大貴族の妻のネックレスを盗んだという疑惑が掛かった。
そのネックレスはその貴族の妻の為に贅を尽くした豪華なもので、1億カニーもの大金を投じて作られたものだったそうだ。
俺の家である中層貴族ロートリース家の領地の全収入を合わせても1億カニーなどという収入はあるか無いかといった所だし、そこから自由に使えるお金ともなれば更に少ない。
ロートリース家ならネックレスに1億カニーという大金はとてもではないがかけられない。
そしてその一般的な貴族には持つことすらできぬ大金をかけて作られたネックレスが盗まれたのだから当然大騒動になった。そしてその容疑者とされたのがシルヴァだった。
さすがにネックレスをそのまま売り飛ばすことはできないが、様々な宝石や貴金属だけでもラシュリー家の1年間の収益を上回る価値があった。
生活にも難儀していたシルヴァが卑しくも盗んだのではないかと、王宮で行われるパーティーが始まる前、会場に控えていた時に大貴族やその取り巻きから詰問されたらしい。
シルヴァは当然そんなことはしていないし、考えもしていない為「天に誓ってそんなことはしない。」と答えたが、他の貴族は彼を信じなかった。
誇り高い性格だった彼は公衆の面前で辱められ、屈辱と怒りで顔を真っ赤に染め上げていたという。
しかし立場もあり、容疑を否認すること以外にできることは無かった。
事の真相は大貴族の妻が外したことを忘れていただけだったというマヌケな話で、すぐに彼の容疑は解けたが、大貴族は謝るどころか開き直り更に彼を辱める言葉を吐いて罵倒し続けた。
あまりの事に堪え切れず彼が詰め寄ろうとしたとき入り口の方から静止の声が響いた。声の主は当時のグレイティス国王、プロヴァン・グレイティス一世。
国王は側近から貴族同士の小競り合いと顛末を聞いて、服の着替えもそこそこにわざわざ出向いて小競り合いの静止を図ったのだ。
大貴族の方は性格に難のある人として知られており、自身に非があろうと開き直った態度を取り、誇り高いシルヴァを激昂させて収拾がつかなくなるだろうと見越しての事だった。
国王に静止されては何も言えない大貴族。シルヴァも冷静さを取り戻して会場は静まり返る。そして国王は大貴族ととりまきに対して、シルヴァへの謝罪を命じた。
明らかに不満げだったとされているが、一応大貴族はシルヴァへの謝罪の言葉を述べ、シルヴァもそれを受け入れて事無きを得る。
シルヴァは大貴族よりも筋道を優先してラシュリー家の面目を保ってくれた国王の行為に甚く感激し、娘のシルヴィやシルヴィの兄でリール山の戦い当時の当主にあたるシルヴァン・ラシュリーといった自らの子にグレイティス王家に誠心誠意仕えるようにと言いつけ続けたのだ。
【1メラー=100センメラー】
活気のあった市場と打って変わってシーンと静まり返った泉。今は俺とアリア以外の人は居ないようだ。
水辺のほとりに高さ2メラーほど、厚さ30センメラーほどの石板のような石が建っている。
石の表面自体はごつごつとしていて人工的に切り出されたものではなさそうだが、この石にシルヴィ・ラシュリーが文字を刻んだようだ。
俺とアリアは石板の前に立ち刻まれた文字を見てみる。文章自体はそう長くない。しかし石板は長年雨風に曝されていたからか文字が風化してしまっており、2人で顔を見合わせてお互い読めないなという顔をする。
しかしこの泉の石にシルヴィが文字を刻んだということは当時でも知られていたため、石板のすぐ隣に立札が立っており、そこに彼女が何と刻んだのかが書かれていた。
【我はこのリールの地にて誓う
命の限りこの地と民を守護せん
我は敵を前にしてこの地より一歩たりとも退かぬ
たとえ命尽きようとも永久の繁栄の礎とならん 】
短くも彼女の不退転の誓いが刻まれていた。そして実際に自らが守っていた防衛地点から一歩たりとも退かず守り抜き、命を落とした。
いくら今日でも忠心篤い配下として名高いアシュリー家の娘、シルヴィ・ラシュリーでも何故そこまでと思う者も居るであろう程の凄惨な死に様だった彼女の忠心の理由は彼女の父の代に遡る。
彼女の出自であるラシュリー家は当時、代々の領地が痩せ衰えて生活にも難儀するほどで貧乏貴族と揶揄されていた。
そしてその貧乏貴族であった当時の当主で彼女の父であるシルヴァ・ラシュリーに、とある大貴族の妻のネックレスを盗んだという疑惑が掛かった。
そのネックレスはその貴族の妻の為に贅を尽くした豪華なもので、1億カニーもの大金を投じて作られたものだったそうだ。
俺の家である中層貴族ロートリース家の領地の全収入を合わせても1億カニーなどという収入はあるか無いかといった所だし、そこから自由に使えるお金ともなれば更に少ない。
ロートリース家ならネックレスに1億カニーという大金はとてもではないがかけられない。
そしてその一般的な貴族には持つことすらできぬ大金をかけて作られたネックレスが盗まれたのだから当然大騒動になった。そしてその容疑者とされたのがシルヴァだった。
さすがにネックレスをそのまま売り飛ばすことはできないが、様々な宝石や貴金属だけでもラシュリー家の1年間の収益を上回る価値があった。
生活にも難儀していたシルヴァが卑しくも盗んだのではないかと、王宮で行われるパーティーが始まる前、会場に控えていた時に大貴族やその取り巻きから詰問されたらしい。
シルヴァは当然そんなことはしていないし、考えもしていない為「天に誓ってそんなことはしない。」と答えたが、他の貴族は彼を信じなかった。
誇り高い性格だった彼は公衆の面前で辱められ、屈辱と怒りで顔を真っ赤に染め上げていたという。
しかし立場もあり、容疑を否認すること以外にできることは無かった。
事の真相は大貴族の妻が外したことを忘れていただけだったというマヌケな話で、すぐに彼の容疑は解けたが、大貴族は謝るどころか開き直り更に彼を辱める言葉を吐いて罵倒し続けた。
あまりの事に堪え切れず彼が詰め寄ろうとしたとき入り口の方から静止の声が響いた。声の主は当時のグレイティス国王、プロヴァン・グレイティス一世。
国王は側近から貴族同士の小競り合いと顛末を聞いて、服の着替えもそこそこにわざわざ出向いて小競り合いの静止を図ったのだ。
大貴族の方は性格に難のある人として知られており、自身に非があろうと開き直った態度を取り、誇り高いシルヴァを激昂させて収拾がつかなくなるだろうと見越しての事だった。
国王に静止されては何も言えない大貴族。シルヴァも冷静さを取り戻して会場は静まり返る。そして国王は大貴族ととりまきに対して、シルヴァへの謝罪を命じた。
明らかに不満げだったとされているが、一応大貴族はシルヴァへの謝罪の言葉を述べ、シルヴァもそれを受け入れて事無きを得る。
シルヴァは大貴族よりも筋道を優先してラシュリー家の面目を保ってくれた国王の行為に甚く感激し、娘のシルヴィやシルヴィの兄でリール山の戦い当時の当主にあたるシルヴァン・ラシュリーといった自らの子にグレイティス王家に誠心誠意仕えるようにと言いつけ続けたのだ。
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