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第2章~2回目の小学生~
第5話Part.2~治癒の聖女・フェリス・ペルート~
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「ここでフェリスさんの資料が見られるそうですね。」
「フェリス診療院ってことはフェリスさんと関係が?」
診療院の中に入ると、マリアがここに来たかった理由を教えてくれた。名前からしてもフェリスと関係があることは明白で、マリアに聞き返してみると、診療院の奥から優しそうな女性の声が聞こえてきた。
「その通りです。ここはかのフェリス・ペルート様がリール山の戦いで治療活動を続けた場所なのです。」
優しそうな声の主は30代くらいでこの国の国教であるケクラン教の修道服を着た女性だった。髪型は頭に被った布のようなもので分からない。しかし神に仕える敬虔な教徒といった穏やかで心優しい雰囲気を感じさせる美しい女性だ。
修道女が出てきたと言うことはここは教会と治療施設が併設された施設のようだ。
「もしかして、リール・ア・リーフ初等学校の子たちかしら。」
「え?ええ、そうです。」
「まあ!もうそんな季節なのですね。毎年この季節にリール・ア・リーフ初等学校の子がフェリス様のお話を聞きに来るのですよ。」
修道女は俺とマリアがリール・ア・リーフ初等学校の生徒と分かるとにこやかな顔から嬉しそうな笑顔を見せて、毎年リール山の戦い関連でフェリス・ペルートのことを聞きに来るのだと教えてくれた。
俺たちは修道女に教会の奥に案内され、古い紙の束を見せてくれた。紙の束に糸を通してバラバラにならないようにした紙の束。
そして1番上の比較的新しい厚紙に【フェリス・ペルート看護日誌】と書かれていた。
これはフェリス・ペルートがここで続けた医療活動の日誌らしい。どうやらフェリス・ペルート本人が書いたそのままのもののようだ。
「こ、こんなに貴重な物見せてもらっていいんですか?」
「大丈夫ですよ。保護魔術が掛かっていますので。」
俺はどう考えても貴重な当時の資料を見せてもらえることに恐縮したが、どうやらこの看護日誌には保護魔術が掛かっているらしい。
防御魔術の応用で劣化や多少の衝撃や水、火などから守ることができる魔術が保護魔術と呼ばれている。
俺とマリアはそれを聞いて安心し、2人でフェリス・ペルート看護日誌を読み始めた。
「これは……。」
「はい……。」
俺とマリアは看護日誌を読み進めていくに連れて口数が少なくなっていった。看護日誌であって日記では無い為、症例や治療が淡々と書かれているだけのものの筈なのだが、それでもフェリス・ペルートの苦悩や悲痛の叫びが聞こえてくるようだった。
毒の魔物にやられた兵を自身の魔術では治せず見殺しにしてしまった時、治療が終わったと思いきや翌日に見るも無残な姿で戻り手の施しようが無かった時……。
書きながら手が震えたのか字が乱れていたり、涙の跡にインクが滲んで残っていたり、紙をくしゃくしゃにしてその後に再び書いたような状態の紙があったりと、見ているだけで胸が締め付けられるようだった……。
「フェリス診療院ってことはフェリスさんと関係が?」
診療院の中に入ると、マリアがここに来たかった理由を教えてくれた。名前からしてもフェリスと関係があることは明白で、マリアに聞き返してみると、診療院の奥から優しそうな女性の声が聞こえてきた。
「その通りです。ここはかのフェリス・ペルート様がリール山の戦いで治療活動を続けた場所なのです。」
優しそうな声の主は30代くらいでこの国の国教であるケクラン教の修道服を着た女性だった。髪型は頭に被った布のようなもので分からない。しかし神に仕える敬虔な教徒といった穏やかで心優しい雰囲気を感じさせる美しい女性だ。
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「もしかして、リール・ア・リーフ初等学校の子たちかしら。」
「え?ええ、そうです。」
「まあ!もうそんな季節なのですね。毎年この季節にリール・ア・リーフ初等学校の子がフェリス様のお話を聞きに来るのですよ。」
修道女は俺とマリアがリール・ア・リーフ初等学校の生徒と分かるとにこやかな顔から嬉しそうな笑顔を見せて、毎年リール山の戦い関連でフェリス・ペルートのことを聞きに来るのだと教えてくれた。
俺たちは修道女に教会の奥に案内され、古い紙の束を見せてくれた。紙の束に糸を通してバラバラにならないようにした紙の束。
そして1番上の比較的新しい厚紙に【フェリス・ペルート看護日誌】と書かれていた。
これはフェリス・ペルートがここで続けた医療活動の日誌らしい。どうやらフェリス・ペルート本人が書いたそのままのもののようだ。
「こ、こんなに貴重な物見せてもらっていいんですか?」
「大丈夫ですよ。保護魔術が掛かっていますので。」
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防御魔術の応用で劣化や多少の衝撃や水、火などから守ることができる魔術が保護魔術と呼ばれている。
俺とマリアはそれを聞いて安心し、2人でフェリス・ペルート看護日誌を読み始めた。
「これは……。」
「はい……。」
俺とマリアは看護日誌を読み進めていくに連れて口数が少なくなっていった。看護日誌であって日記では無い為、症例や治療が淡々と書かれているだけのものの筈なのだが、それでもフェリス・ペルートの苦悩や悲痛の叫びが聞こえてくるようだった。
毒の魔物にやられた兵を自身の魔術では治せず見殺しにしてしまった時、治療が終わったと思いきや翌日に見るも無残な姿で戻り手の施しようが無かった時……。
書きながら手が震えたのか字が乱れていたり、涙の跡にインクが滲んで残っていたり、紙をくしゃくしゃにしてその後に再び書いたような状態の紙があったりと、見ているだけで胸が締め付けられるようだった……。
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