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第9話Part.2~再会~
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俺はスキル研究室の片開き扉の取っ手を回してカンヌキをカンヌキ止めから外して少し押し開ける。これでカンヌキ止めに戻ることは無い。そして取っ手から手を離して扉を軽く押して自然に開いたように動かした。
カンヌキがあるので扉が勝手に開くわけがないのだが、そのまま明らかに人が開けましたという動きよりはマシだと考えたからだ。
少なくとも扉から見える範囲内では誰も居ないように見える。俺は短剣をゆっくり動かしながら透明化スキルの待ち伏せが無いかを確認したがやはり誰も居ない。そのまま中に入ると妙に静まり返っている。
研究室内部はだだっ広い空間が広がっており、そして天井がかなり高い。10メラー以上はあり、身体能力が高い能力者に跳ばせてもおそらく天井には届かないだろう。そして階段がありちょうど半分くらいの位置で上から見下ろせるような空間が作られている。
俺はこの研究室の様子を見てこの部屋のことを思い出した。俺はここで略取のスキルの効果を調べるために毎日毎日魔物と戦わされ続けていたのだ。食事と睡眠は与えられていたが戦闘は過酷だった。倒しやすいようにある程度痛めつけられていた魔物だったが、それでも生きるために必死の抵抗をする。
俺が持っていたのは略取という名の謎のスキル。身体能力は改造人間としては下、そこまで強くも無い魔物にも苦戦する有様だった。だが傷の手当は丁重、傷を負えば回復術師と呼ばれる者に傷も体力も回復させられる。
俺たち能力者と呼ばれる、胎児の頃に何らかの処置を施されてスキルと呼ばれる力を得た者は基本的に無尽蔵にそのスキルを使用できるが、普通の人間が扱える魔術と呼ばれる精霊の力を借りてなんらかの現象を起こす力は扱えない。
回復術師はその魔術を扱って生物の身体を治療することができる者たちだ。まあ俺からすれば戦うためだけに身体を治してまた戦わせる回復術師は悪魔のようにしか思えなかったが。
一度俺は研究員に自分たちは何故魔術は使えないのかと聞いたことがあった。研究員は知らないと言っていた。
そして神の理を捻じ曲げた罰かもしれないと何やら詩的なことを言っていたが、その罰とやらを受けているのは俺たちだ。スキルを付けてくれなどと願った事すらないのに勝手にそんなものを付けられた挙句に罰を受けているのは俺たち。まったく理不尽な話。正直その場でぶっ殺してやりたかった。
そんなことを思っていると奥の方に設けられている格子が開いて行く。格子は穴倉を塞いでいたもので、この穴倉には捕らえた魔物が入れられていたはずだ。
俺は身構えて魔物の襲来に備える。種族にもよるが、人間の嗅覚よりも魔物の嗅覚の方が鋭いということは多く、透明化スキルは視覚以外は誤魔化せられないので非常に厄介になる可能性がある。
穴倉から人影が見えてきた。人影?魔族と呼ばれる人間と造形が似ている者が居るのは聞いているが、魔族は魔物よりも高位の存在。スキルで複数の力を行使できるとはいえ油断できないと身構えていたが、その人影がはっきりとしてきた。そしてその人影は俺の顔見知り、アイシスだった。
彼女もどうにかしてこのスキル研究室までたどり着き、妹のアイリスを捜索していた訳か。だが1人というところを見るとまだ妹は見つかっていないようだ。
「アイシス!」
俺はやっと見つけることができた仲間に安心して、透明化のスキルを解除して彼女の名前を呼んで駆け寄る。思った通りアイシスは能力者の服を着てこの研究所の捜索をしていたようだ。一見する限りでは彼女に怪我は無いようで一安心。
「アイシス、少し無茶をしすぎだ。でも無事でよかった」
俺は無茶をしたアイシスに無茶をしすぎだと言う。だが無事で本当に安心したと続ける。だが彼女の様子がどうにもおかしい。会った時から目の輝きは失せて目の焦点も合っているのかいないのかよく分からないという雰囲気だったが、妹との再会と能力者への憎悪といった彼女を僅かばかり繋ぎ止めていた精気すら感じさせない。
「アイ、シス……?」
彼女は無口だ。だが話しかければいつも何かしらの返答をしてくれていたのに、今はその濁り切った目を焦点の合わない様子でこちらに向けてくるのみ。
「死ね……ッ!」
俺がこれは妙だと思って動き出そうとした時、彼女は俺への殺意の言葉と共に鋭い手刀を繰り出してきた。避けなければ間違いなく心臓に突き刺さり死を免れ得ぬ鋭い攻撃。俺は攻撃とは逆の方へ動こうとしていたため反応が遅れてしまい、深手ではないものの右肩に傷を負ってしまった。
「アイシス!これは一体……ッ!」
俺は間違いなく俺を始末しようとしたアイシスにどういうことだと強い口調で問うが彼女からの返答は手刀。彼女は俺に対して明らかに殺意と憎悪を向けている。これはあの男を文字通り死人に鞭打つまでに報復したあの時の彼女と似たような様子だった。
彼女からこれだけの憎悪を向けられる理由は分からない。まずは話してほしいが今の彼女にそのつもりは全く無いらしい。そんな時だった。
「殺せ!殺せ!」
かすかに明らかに俺やアイシスとは違う何者かの声が聞こえたのは。
カンヌキがあるので扉が勝手に開くわけがないのだが、そのまま明らかに人が開けましたという動きよりはマシだと考えたからだ。
少なくとも扉から見える範囲内では誰も居ないように見える。俺は短剣をゆっくり動かしながら透明化スキルの待ち伏せが無いかを確認したがやはり誰も居ない。そのまま中に入ると妙に静まり返っている。
研究室内部はだだっ広い空間が広がっており、そして天井がかなり高い。10メラー以上はあり、身体能力が高い能力者に跳ばせてもおそらく天井には届かないだろう。そして階段がありちょうど半分くらいの位置で上から見下ろせるような空間が作られている。
俺はこの研究室の様子を見てこの部屋のことを思い出した。俺はここで略取のスキルの効果を調べるために毎日毎日魔物と戦わされ続けていたのだ。食事と睡眠は与えられていたが戦闘は過酷だった。倒しやすいようにある程度痛めつけられていた魔物だったが、それでも生きるために必死の抵抗をする。
俺が持っていたのは略取という名の謎のスキル。身体能力は改造人間としては下、そこまで強くも無い魔物にも苦戦する有様だった。だが傷の手当は丁重、傷を負えば回復術師と呼ばれる者に傷も体力も回復させられる。
俺たち能力者と呼ばれる、胎児の頃に何らかの処置を施されてスキルと呼ばれる力を得た者は基本的に無尽蔵にそのスキルを使用できるが、普通の人間が扱える魔術と呼ばれる精霊の力を借りてなんらかの現象を起こす力は扱えない。
回復術師はその魔術を扱って生物の身体を治療することができる者たちだ。まあ俺からすれば戦うためだけに身体を治してまた戦わせる回復術師は悪魔のようにしか思えなかったが。
一度俺は研究員に自分たちは何故魔術は使えないのかと聞いたことがあった。研究員は知らないと言っていた。
そして神の理を捻じ曲げた罰かもしれないと何やら詩的なことを言っていたが、その罰とやらを受けているのは俺たちだ。スキルを付けてくれなどと願った事すらないのに勝手にそんなものを付けられた挙句に罰を受けているのは俺たち。まったく理不尽な話。正直その場でぶっ殺してやりたかった。
そんなことを思っていると奥の方に設けられている格子が開いて行く。格子は穴倉を塞いでいたもので、この穴倉には捕らえた魔物が入れられていたはずだ。
俺は身構えて魔物の襲来に備える。種族にもよるが、人間の嗅覚よりも魔物の嗅覚の方が鋭いということは多く、透明化スキルは視覚以外は誤魔化せられないので非常に厄介になる可能性がある。
穴倉から人影が見えてきた。人影?魔族と呼ばれる人間と造形が似ている者が居るのは聞いているが、魔族は魔物よりも高位の存在。スキルで複数の力を行使できるとはいえ油断できないと身構えていたが、その人影がはっきりとしてきた。そしてその人影は俺の顔見知り、アイシスだった。
彼女もどうにかしてこのスキル研究室までたどり着き、妹のアイリスを捜索していた訳か。だが1人というところを見るとまだ妹は見つかっていないようだ。
「アイシス!」
俺はやっと見つけることができた仲間に安心して、透明化のスキルを解除して彼女の名前を呼んで駆け寄る。思った通りアイシスは能力者の服を着てこの研究所の捜索をしていたようだ。一見する限りでは彼女に怪我は無いようで一安心。
「アイシス、少し無茶をしすぎだ。でも無事でよかった」
俺は無茶をしたアイシスに無茶をしすぎだと言う。だが無事で本当に安心したと続ける。だが彼女の様子がどうにもおかしい。会った時から目の輝きは失せて目の焦点も合っているのかいないのかよく分からないという雰囲気だったが、妹との再会と能力者への憎悪といった彼女を僅かばかり繋ぎ止めていた精気すら感じさせない。
「アイ、シス……?」
彼女は無口だ。だが話しかければいつも何かしらの返答をしてくれていたのに、今はその濁り切った目を焦点の合わない様子でこちらに向けてくるのみ。
「死ね……ッ!」
俺がこれは妙だと思って動き出そうとした時、彼女は俺への殺意の言葉と共に鋭い手刀を繰り出してきた。避けなければ間違いなく心臓に突き刺さり死を免れ得ぬ鋭い攻撃。俺は攻撃とは逆の方へ動こうとしていたため反応が遅れてしまい、深手ではないものの右肩に傷を負ってしまった。
「アイシス!これは一体……ッ!」
俺は間違いなく俺を始末しようとしたアイシスにどういうことだと強い口調で問うが彼女からの返答は手刀。彼女は俺に対して明らかに殺意と憎悪を向けている。これはあの男を文字通り死人に鞭打つまでに報復したあの時の彼女と似たような様子だった。
彼女からこれだけの憎悪を向けられる理由は分からない。まずは話してほしいが今の彼女にそのつもりは全く無いらしい。そんな時だった。
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