今更謝ってももう遅い!落ちこぼれ無能者の復讐譚~使えないスキルだと言われ『廃棄』された能力者のスキルは実は最強だった~

三浦ウィリアム

文字の大きさ
25 / 30

第9話Part.2~再会~

しおりを挟む
 俺はスキル研究室の片開き扉の取っ手を回してカンヌキをカンヌキ止めから外して少し押し開ける。これでカンヌキ止めに戻ることは無い。そして取っ手から手を離して扉を軽く押して自然に開いたように動かした。
 カンヌキがあるので扉が勝手に開くわけがないのだが、そのまま明らかに人が開けましたという動きよりはマシだと考えたからだ。

 少なくとも扉から見える範囲内では誰も居ないように見える。俺は短剣をゆっくり動かしながら透明化スキルの待ち伏せが無いかを確認したがやはり誰も居ない。そのまま中に入ると妙に静まり返っている。
 研究室内部はだだっ広い空間が広がっており、そして天井がかなり高い。10メラー以上はあり、身体能力が高い能力者に跳ばせてもおそらく天井には届かないだろう。そして階段がありちょうど半分くらいの位置で上から見下ろせるような空間が作られている。

 俺はこの研究室の様子を見てこの部屋のことを思い出した。俺はここで略取のスキルの効果を調べるために毎日毎日魔物と戦わされ続けていたのだ。食事と睡眠は与えられていたが戦闘は過酷だった。倒しやすいようにある程度痛めつけられていた魔物だったが、それでも生きるために必死の抵抗をする。
 俺が持っていたのは略取という名の謎のスキル。身体能力は改造人間としては下、そこまで強くも無い魔物にも苦戦する有様だった。だが傷の手当は丁重、傷を負えば回復術師と呼ばれる者に傷も体力も回復させられる。

 俺たち能力者と呼ばれる、胎児の頃に何らかの処置を施されてスキルと呼ばれる力を得た者は基本的に無尽蔵にそのスキルを使用できるが、普通の人間が扱える魔術と呼ばれる精霊の力を借りてなんらかの現象を起こす力は扱えない。
 回復術師はその魔術を扱って生物の身体を治療することができる者たちだ。まあ俺からすれば戦うためだけに身体を治してまた戦わせる回復術師は悪魔のようにしか思えなかったが。
 一度俺は研究員に自分たちは何故魔術は使えないのかと聞いたことがあった。研究員は知らないと言っていた。
 そして神の理を捻じ曲げた罰かもしれないと何やら詩的なことを言っていたが、その罰とやらを受けているのは俺たちだ。スキルを付けてくれなどと願った事すらないのに勝手にそんなものを付けられた挙句に罰を受けているのは俺たち。まったく理不尽な話。正直その場でぶっ殺してやりたかった。

 そんなことを思っていると奥の方に設けられている格子が開いて行く。格子は穴倉を塞いでいたもので、この穴倉には捕らえた魔物が入れられていたはずだ。
 俺は身構えて魔物の襲来に備える。種族にもよるが、人間の嗅覚よりも魔物の嗅覚の方が鋭いということは多く、透明化スキルは視覚以外は誤魔化せられないので非常に厄介になる可能性がある。

 穴倉から人影が見えてきた。人影?魔族と呼ばれる人間と造形が似ている者が居るのは聞いているが、魔族は魔物よりも高位の存在。スキルで複数の力を行使できるとはいえ油断できないと身構えていたが、その人影がはっきりとしてきた。そしてその人影は俺の顔見知り、アイシスだった。
 彼女もどうにかしてこのスキル研究室までたどり着き、妹のアイリスを捜索していた訳か。だが1人というところを見るとまだ妹は見つかっていないようだ。

「アイシス!」

 俺はやっと見つけることができた仲間に安心して、透明化のスキルを解除して彼女の名前を呼んで駆け寄る。思った通りアイシスは能力者の服を着てこの研究所の捜索をしていたようだ。一見する限りでは彼女に怪我は無いようで一安心。

「アイシス、少し無茶をしすぎだ。でも無事でよかった」

 俺は無茶をしたアイシスに無茶をしすぎだと言う。だが無事で本当に安心したと続ける。だが彼女の様子がどうにもおかしい。会った時から目の輝きは失せて目の焦点も合っているのかいないのかよく分からないという雰囲気だったが、妹との再会と能力者への憎悪といった彼女を僅かばかり繋ぎ止めていた精気すら感じさせない。

「アイ、シス……?」

 彼女は無口だ。だが話しかければいつも何かしらの返答をしてくれていたのに、今はその濁り切った目を焦点の合わない様子でこちらに向けてくるのみ。

「死ね……ッ!」

 俺がこれは妙だと思って動き出そうとした時、彼女は俺への殺意の言葉と共に鋭い手刀を繰り出してきた。避けなければ間違いなく心臓に突き刺さり死を免れ得ぬ鋭い攻撃。俺は攻撃とは逆の方へ動こうとしていたため反応が遅れてしまい、深手ではないものの右肩に傷を負ってしまった。

「アイシス!これは一体……ッ!」

 俺は間違いなく俺を始末しようとしたアイシスにどういうことだと強い口調で問うが彼女からの返答は手刀。彼女は俺に対して明らかに殺意と憎悪を向けている。これはあの男を文字通り死人に鞭打つまでに報復したあの時の彼女と似たような様子だった。
 彼女からこれだけの憎悪を向けられる理由は分からない。まずは話してほしいが今の彼女にそのつもりは全く無いらしい。そんな時だった。

「殺せ!殺せ!」

 かすかに明らかに俺やアイシスとは違う何者かの声が聞こえたのは。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...