今更謝ってももう遅い!落ちこぼれ無能者の復讐譚~使えないスキルだと言われ『廃棄』された能力者のスキルは実は最強だった~

三浦ウィリアム

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第3話Part.2~利用される命~

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 俺とアイシスは能力者の1人を拉致した。この男のスキルは『完全記憶能力』だ。後方に位置取りして移動中も指示を飛ばしていたのもこの男。様々な情報を握っていることは想像に難くない。
 今の俺たちに一番必要なものは情報。そろそろ能力者たちが廃棄の森で行方知れずになることが極端に増えたことに気づきそれを調査するために力を入れて能力者を派遣してくるのは目に見えていた。
 リーダーが1番情報を持っているであろうことは分かっていたが、分かりやすいスキルの者を派遣してくれて助かった。

「さて、お前の知っている情報を教えてもらおうか?」
「は?何のこ……ガッ。」
「俺の聞いたことにだけ答えろ。お前が完全記憶のスキルを持っているのは分かっている。」

 この期に及んでもとぼけようとする能力者の腹にアイシスが一発蹴りを入れる。彼女のスキルは対能力者限定の防御力無視の攻撃。いくら強化されていようと何の意味も無い。まずは淡々と、お前のことは知っていると脅す。

「素直に話せば命だけは考えてやってもいい。まずはアイリスという能力者を知っているか?」
「し、知らない。」
「嘘をつくな!」
「ガッ。あああああああッ。」

 まずはアイシスの妹、アイリスのことについて尋ねたが男は知らないと答えた。だがこの男が嘘をついているのか本当のことを言っているのかは判断がつかない。何しろ尋問をするのは初めてだ。
 俺はひとまず嘘をついていると判断して男の腕に爪を刺す。基本的に後方任務だからか痛みに慣れていない様子で簡単に声を上げる。

「これでお前は死ねなくなった。」
「何を言ってる……。」
「こういうことだ!」
「アアアアアアアアアアアアアッ!!」

 アイシスに命じて男の腕を離断させた。文字通り身を裂く痛みが男の身体を襲って、男は悲鳴を上げる。だが不思議な事に男の腕はみるみるうちに再生していった。まるで不死者のように。
 これは俺の不死と毒手のスキルを併用した技。効果時間のほどはまだ分からないものの一定時間相手を不死者にすることができる。

「不死者の末路は知っているだろう?知らないわけがないよな?俺もそうだがこの子の恨みはもっと深い。勢い余っても死なないからこれほど都合が良いものはねえよなあ?」

 自分たちが肉壁として酷使していた不死者と同じ能力を強制的に付与され、そして嘘をつけば自分がどうなるかを否応なく教えられる。死にはしないが痛めつけられれば当然痛みはあるし、身体の再生の際にも耐えがたい苦痛が襲う。当然この男もそれを知っているので、恐怖のあまり歯をカチカチ鳴らしながら怯える。
 
「だ、だ、だ、だが、あ、アイリスって能力者は、ほ、本当に知らないんだ。し、信じてくれ。」

 命乞いをするように必死でアイリスを知らないという男。嘘をついていると思ったが本当に知らないらしい。それならば仕方がない。あまり痛めつけすぎて壊れられても困る。
 俺はそこから研究所内部の構造やこの男のように能力者の中でもリーダークラスに位置する者の数、他の能力者のスキルといったものの情報を引き出す。
 さてとりあえず今俺が聞きたい情報は全て仕入れた。あとは始末をするだけだった。

「よし、ご苦労。じゃあ褒美に助けてやろう。」
「あ、ありがとう。ありがとう。ガッハッ……。」
「よかったなぁ、楽に逝けて。お前のスキルは有用だ。ありがたく貰っておくぞ。」

 命は考えてやるとは言ったが救うとは言っていないし助けてやるというのはこの苦痛から解放してやるという意味だ。まあそもそもコイツを放してやる義理など全くないしスキルも非常に有用だ。コイツは俺に捕まった時点でもう死んだようなものだった。

「コイツの名は……チッ分からんな。奪った者の記憶まではさすがに再現されないか。仕方がない。」
「これでアイリスを……!」
「いや、内部の地図が必要だな。構造は分かったが複雑なのか説明が下手なのかよく分からなかった。だから次は地図を持ってこさせよう。」

 情報を仕入れたことで研究所に行こうと逸るアイシス。だが男の説明がよく分からなかったのと地図があった方が迷わずに行動できると考え、アイシスを窘める。
 明らかに不満そうな色を見える。当然だ。やっと肉親を救えると思っても何度も俺が止める。そして俺は所詮他人だ。それに俺は兄弟など居ない。いや、奴らに創られたのだからある意味能力者たちとは兄弟なのかもしれないが、彼女らとはまるで違う。
 そんな男がこうして止めたところで「関係無いから好きに言えるよね。」となるだろう。だが彼女も1人で曖昧な構造の情報だけで突っ込むほど愚かでもないのでこうして俺に不満を飛ばすしかないのだ。

「ここで少し待っていてくれ。」

 俺は再びテレポーテーションの力を使って飛んだ。
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