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もっと深いトコロで ※
しおりを挟む両手首を紐で縛られたミレイは、牢の壁に押し付けられた。
頭の上には、銃をぶら下げるための杭が壁からつき出しており、紐の端はその杭にしっかりと結い止められた。
「どうして?スミヤさん…!」
必然的に彼女は、腕をあげて壁ぎわに磔られたことになる。
あまりにも突然の仕打ちに、この間──彼女は抵抗すらできなかった。
「何故こんな事になってるのか理解できない……って顔だね」
硬直状態で見上げてくるミレイの頭を撫でて、微笑んでいる。
「……まぁそれもそうか」
かと思うと一瞬のうちにその声を低くして、スミヤは小さく呟いた。
瞼を伏せて……思考を巡らすしぐさ。
彼は斜め下に顔を向けると、ミレイの隣に飾られている長銃を壁から外した。
「……!?」
先ほどまでのライフルより小ぶりで、彼が片手で持ててしまう大きさの銃を──じっくりと眺めながら胸の前にかかげる。
その光景に縮こまるミレイに気付いた彼は、束の間の笑みを浮かべて口を開いた。
「でも原因は君にだってあるんだよ?……うわべだけの会話ごときで、僕がどんな男かを知ろうとするなんてさ…──」
銃を手にしたまま、一歩……さらにつめよる。
「言うなれば──…何様? って感じ」
彼女のすぐ頭上から投げ掛けられたその言葉には、愛想というものが無くなっている──。
ぶっきらぼうな低音の声に
震えすら起きてくる。
「フ…」
「……っ…?」
「君がそうするように仕向けたのも僕だから、やっぱり悪いのはこっちなんだけどね。ごめんね」
それから怯えだすミレイを一瞥して、彼はいつもの表情に戻った。
一瞬前まで " 男 " でしかなかったその声にも、普段の穏やかさが加わる。
それでも右手の銃を手放してはくれないから、彼女の恐怖は続いた。
「……、怖いの?」
「わたしを、殺す気 ですか…っ」
ミレイがなんとか絞り出した言葉。
ああ……自分はこの牢獄で殺されるのだろうか──信じていた人に。
「ハハ……殺すわけないじゃない。怪我だってさせないよ。ハルトみたいに相手を痛め付けて楽しむ趣味はないんだ」
彼女が顔に浮かべる深刻な表情を笑いながら、スミヤは銃口をそっと突き付けた。
「でも女の子の怖がる顔は、可愛いから……スキ」
胸のラインから首筋を上がった銃口が、ミレイの顎をくいと持ち上げる。
顔をあげざるを得ない彼女とスミヤの視線が絡み合った。
「フフ…いいねぇ」
ガチガチ..
ミレイの歯が細かく音を立てている。
どう考えても、中に銃弾が入っているとは考えにくい。冷静に分析する余裕があったなら気付いただろうに、彼女はそこまでの考えが回らなかった。
そして、突きつけられた凶器と同じくらいに怖いのは彼の瞳──。
澄んでいた蒼色が熱っぽく変化していく…。
まさにこれが彼の本性なのだと、認めざるを得ない。
「こうやって無防備な状態になって初めて、君の本当の姿も……さ、出てくると思うよ?」
「どうして…ッ」
「言ったでしょ?愛してるって──。ちゃんと愛してあげる。全てをさらけ出した君をね」
愛してる……?
《 嫉妬するくらい君のことを愛してる──…ってこと 》
スミヤさんのあの言葉……
嬉しかった、のに
「スミヤさんは…!! 誰が相手でも愛してるなんて言うんですか……」
「誰でもなんて失礼だね。相手はそれなりに選んでいるさ」
「同じことです!」
「……変かな」
スミヤは銃口を彼女の首元まで下ろす。
長い銃を器用に操りながら、一番上のシャツのボタンを──ピンと弾いた。
外されたボタンは横の壁まで飛んで跳ね返る。
彼は続いて二つ目のボタンも
三つ目のボタンも……銃口を使って飛ばしていく。
「確かに常識的に考えれば、愛を囁くのはひとりの人間が好ましいのかもしれないね」
僕はそれに違和感しか感じないけれど──
「ひとつより沢山のほうが良いに決まってるのに」
四つ目のボタンまで外されてしまったミレイのシャツからは、鎖骨と、ささやかな膨らみを包む白色の下着が覗いていた。
ボタンが飛ぶたびに目を閉じて震えながら、ミレイは徐々に胸元が露にされ外気に触れるのを感じていた。
「数だけ増やして質を気にしない輩がいるから否定されるんだ……。ほら、僕は」
そんな彼女の表情を楽しんだ後、スミヤは首を傾げて唇にキスをする。
「ひとつひとつを、おろそかにしない……」
軽いキスを追うかたちで、丁寧に二人のそれを重ねると……彼女の息継ぎに合わせて舌を差し入れた。
スミヤは長銃を足元に捨てる。
「ン…─、フフ‥」
じっくりと丁寧に……彼女の口内を支配する。
舌で歯列をなぞり、戸惑っている彼女の舌を巻き込んで絡ませる。
「フフ……っ ハ…」
何度も出し入れを繰り返しながら
吐息と一緒に笑みを零した。
「不思議そうな目をしているね」
「…っ、ン…ハァ……っ」
頬に添えた指で愛しむように彼女を撫でながら、なされるがままに舌を受け入れるミレイに囁いた。
「…ネェ…不思議だよね?どうして……君は抵抗できないんだろう……」
「ハァ…ハァ…っ… てい こう……?」
「手を縛られているから?いいや──…違うよね。手が使えなくったって……足で僕を蹴るなり、首をひねってキスを拒んだり……できる筈なのに」
「…そんなッ…ん──…」
ミレイの言葉を待たず、彼はすぐさま唇をふさぐ──。
“ 抵抗……そうだ、わたしスミヤさんを拒絶しないといけないのに……!! ”
「…は…ぁ…、んッ…ン」
「ン……でも君はできない
──…どうしてかわからないの?」
優しく問いかける彼は、本当に楽しそうだ。
まるで小さな子供に尋ねるような猫なで声でキスの合間に囁いている。
しかしミレイは全くわからなかった。
スミヤに指摘された後でさえ……その口付けを抗う気になれない。
繰り返されるたびに熱くなる胸。早まる鼓動。
“ この感じは…? ”
前にも、いつか……
「もう……冷静な思考も吹っ飛んじゃってるかな」
「…ハァ‥ハァ‥、ァ…」
「……思い出してごらん」
どうしてこうなってしまったのか分からずじまいの彼女に、──スミヤは答えを教えた。
「飲ませてあげたでしょう。──…紅茶」
紅茶……
そう言われた瞬間、あの薔薇にも似た変わった芳香が思い出される。
「隠し味は気に入ったかい?……ん?」
「もしかし て…、ハァ‥ハァ‥あの日も……?」
「ああ……そうだね」
それは十日前。
冷めやらぬ身体を持てあまし、ミレイが自分を慰めてしまったあの日──。
「君は部屋に帰ってしまったけれど」
スミヤの指が残りのボタンを外した。
前が完全にはだけた彼女は、その無駄のない美しい身体を彼に差し出している。
「僕の声を、顔を……想像しながら──…君の身体は何回イッてくれたのかな……」
スミヤは彼女の口から舌を引き抜き
真っ赤に色づいた彼女の首筋に顔をうめた。
「ねぇ教えてよ」
首筋の線を、舌先がツーっとつたい下りる。
ミレイが顎を仰け反らし声を漏らすと、その反った首を舐めあげて再び唇を奪った。
「……僕の…ン…指は……、…どんな…ふうに、君を汚したの?」
彼女の上唇と下唇を交互に甘噛しつつ、スミヤの手が下着ごしに胸の膨らみを揉みしだく。
「…ぁ…‥フ、う‥ん、…っ…ぁ」
五指を使ってやわやわと……。下から持ち上げ、包み込みながら。
「何処に──」
「…ハァ…っ‥ん、ン…ッ…」
「……触れていたんだい」
ミレイは少しずつ溺れていった。
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