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第四巻

オシオキ

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「どうした? いきなり気分が悪いとか」

「……シッ、静かに」


 階段を上がり、奥の畳間に入った二人。

 後ろ手に障子を閉めたリュウは、焔来の身体を畳のうえにおさえつけた。


「おいおい怒ったのか? あんなのおふざけだろっ」


 リュウにのしかかられて身動きの取れなくなった焔来が、苦く笑いながら抗議する。


「落ちつけって!」

「僕は怒ってなんていないよ」


 焔来を押さえつける腕力は、いったいどこの誰が病人なんだと文句を言いたくなる強さだ。


「──…ただ…少しムカッとしたから、気晴らしに焔来を襲おうかなーって思っただけ」

「やっ、やっぱり怒ってるだろ!」

「全然、まったく、これっぽっちも」

「うそつけ!」


 危機感を覚えた焔来が手足を動かして抵抗するも、それより早く動いたリュウの手が着物の合わせを開いてしまう。

 現れたふたつの乳首の片方に、リュウの唇がかぷりと喰らい付いた。

 とっさに声をあげた焔来の口を手でふさぎ、妖艶な口許でリュウが笑う。


「大きな声出したら…下の人間どもに、ばれるよ?」

「……っ」


 だったら早くそこ退けろよ

 そう言いたい焔来の不平を察しているのかいないのか、何食わぬ顔でリュウは行為を続行した。

 頼りない衣の裾をまくりあげ、下帯を取られてしまえば、リュウの前に視線を遮るものは何もない。

 急所を掴まれ、甘い震えが背筋を走り抜ける。

「…ぅ…ちょ、まて…!」

 大きく開かされたなめらかな太ももは、リュウの膝によって閉じないように固定された。

 そのまま唇で乳首を…片手で下半身を愛撫される。

 その手が柔く肉筒を撫で、鈴口を指で押すのだからたまらない。

 焔来の腹の底には甘い熱が灯り、吐息が零れ、抗いの声に嬌声がまじる。 


「‥ぅ、ぁッッ‥‥だ、だめだ‥っ……ハァっ、リュウ…っ」

「声……おさえて」

「ハァ、ハァっ、いいかげん に……しろ」


 焔来は歯を喰い縛る。

 ピチャピチャと舌を出して胸の突起を舐ぶるリュウと目を合わせると、彼は熱っぽく頬を弛ませて、長い睫毛の下に瞳を隠した。

 この綺麗な顔を──突き返すことができない。

 悔しいやら恥ずかしいやらで涙目の焔来は、押し退けようと力をこめた手を諦めて下ろすしかなかった。


「──…っ」


 しかし、自身の先端を焼けつく感触が包んだ途端

 焔来は全身を強張らせて呻いた。

 思わず戻した視線の先には、自分の脚の間に顔を埋めるリュウのあられもない光景がある。

 こればかりは堪えられそうになく、焔来は即座に腕を伸ばす。


「…何してんだ!‥そんな‥こと‥ッッ‥…」

「……っ」

「やめろっ…‥…離れ、ろ…//」


 彼の端整な唇が自分の欲の塊を包んでいるのが許せなく、頭を引き剥がそうと必死だった。


「…ッ─……嫌がらないで…っ…、ハァ……焔来、気持ちいい よね…」

「ちが…っ、ハァ、ハァ、だめ…‥だ‥‥ぁっ…!」

 
 リュウに言われなくても、痛いくらいに張りつめたそれは自覚している。

 敏感な裏筋を舌のざらつきで撫でられるたびに大きく脈打ち…呆気なく弾けそうなんだ。

 でも、…いや、だからこそ駄目だ。

 リュウは大切な存在なんだ。

 汚い劣情をリュウの口内に注ぐわけにはいかない。

 焔来は彼の額を押し、黒髪を引っ張り、同時に喉を仰け反らせた。

 されるがままでは駄目なのだと頭を満たす警鐘が、色めく吐息に塗り替えられる。

 焦る焔来には冷や汗が滲み、肌が栗立つ。

 与えられる愛撫は激しさを増し、ずるりと奥まで深く呑み込まれて小さな唇に肉竿を圧っされた。

 焔来の尻がきゅっとひきつり、床から持ち上がって切なげにわななく。


「‥はぁッ、はぁッ‥…、‥‥や‥めろよぉ」 

「……っ」

「で る‥‥出る、から、……やめ‥‥っ」


 声を抑えなければならないことも忘れて、焔来の懇願は余裕の無さを露呈する。

 舐めしゃぶる舌を執拗に蠢かされ、尖らせたそれを鈴口へねじ込まれ、爪の先まで煮えてしまいそうな熱に翻弄されて…

 とどめとばかりに大きく開けた口で快楽の急所をじゅうじゅうと吸われて、痺れた腰骨が溶け落ちそうになる。


「‥‥も……っ‥我慢、できな‥‥//」

「出して」

「あっ‥‥ぁぁ‥‥ぁぁっ!‥‥んんんっ」


 そしてついに…伸びてきた掌に口を塞がれた焔来は

 大きく震えた後、箍(タガ)が外れたように堪え続けた欲情を迸らせた。

 一度解放を許してしまうと、下腹の衝動は止められない。繰り返し吐き出され続けるものがリュウの唇を濡らし、波に合わせて焔来の身体をひくつかせる。


 ゴク....っ


「──…ッッ、は‥‥!?」


 霞む意識の中──喉を鳴らす音を聞いて、焔来はあまりの羞恥に一気にのぼせ上がった。


「…っ……リュウ!」

「ふ、ぅ…──ッ…。……なに?」

「ばかやろっ!…の─…ッ…飲むなよ!」


 リュウの口に出してしまった後ろめたさが彼を襲う。

 そして…恥ずかしさ以外の感情で胸がざわざわと昂る。それらをはね除けるために、焔来は相手を睨み付けた。


「そんな顔して……まだ足りないの?」

「……!」


 睨まれたリュウのほうは、ひどく甘い目付きで返してくる。

 唇をぬぐうその表情に反省している気配はない。


「怒るなんて怖いなぁ。焔来は」

「ハァ、ハァ……怒ってたのは、お前だろ」


 気だるい脚を動かして仰向けの身体を反転させた後、脱がされた着物を掴んで息を調える。

 それでも恥ずかしさは残っているので、リュウと目を合わせることはできなかった。





「──…変だね。部屋の外が騒がしい」

「な…!?」

「焔来の声が聞こえちゃったかな」

「……!ま、まずい…」

「クス……、落ち着いて。騒ぎの原因を確かめてくるから」


 その時、部屋の外の異変に気付いたリュウが背後の障子に振り返る。

 焦燥する焔来──対してリュウは、ずいぶんと楽しげであった。






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