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儚き運命
儚き運命_1
しおりを挟む銃士隊が作った切り株を目印に走るセレナ。
辺りは明るさを失いながら、森特有の不気味な静寂を取り戻しつつあった。
夜の帳が落ちる──。森の影達が、まるで生きているかのようにザワザワと伸び始めた。
……しかし彼女は怖れなかった。
暗がりの中を駆け抜けながら、彼女は周りの木々に守られているような気がしてならなかったから。
それはとても不思議なこと……
「ハァっ…ハァっ、…!? この、ペンダント…──」
セレナは走りながら目線を落とした。
ローに渡された宝石のペンダントは、まるでそれ自体が光を放っているかのように彼女の胸元をぼんやりと照らしている。
そこから何か……温もりのようなものを感じるのだ。
草花が彼女に語りかける
怖がる必要などないのだと。
そして「急げ」と
彼女の背中を押してくる……。
──
しかし彼女は結局、兵士達を見つける事はできなかった。
ひとりの人間にも会わないまま、絶壁のすそに空いた洞窟の入り口に辿り着く。
「──…」
其処で彼女は男達の無数の足跡を見る。
既に中に入り込んだ──それは明白。
絶望的な状況がセレナに突き付けられた。
その絶望に拍車をかけるは
穴の奥から響いてくる怒号と……銃声。
──其れは、戦の音だった。
「──駄目だ!隊を崩すなーー!!」
指揮官の声が兵士達に向けられる。
必死の形相がうかがえる──喉を殺してしまいそうな激しさで吠える人間達。
セレナの来た道を猟犬に探らせ、見付けた洞窟。
それは広い鍾乳洞へと変わり、そして行き止まりかと思われた岩壁には蔦で隠された通り穴があった。
その先へ抜けると現れた円形の大空間──ソレはまさに目的地であり、兵達は計画通り群れる狼に銃口を向けたのだ。
しかし──そんな彼等の前に立ちはだかるは、際立った大きさでその凶暴な口から牙を剥き出す
白銀の、狼。
銀狼の濁ったふたつの眼が光を放ち、天地に轟く咆哮をあげると……
それを合図に狼達は一斉に兵士に襲いかかったのだった。
「──…ハァっ、不味いです!隊列を乱され兵が散り散りに……ッッ」
「動揺するな!化け物がいることは分かっていた筈だ!訓練通りに行えーー!!」
人間が持つ銃の弱点は、一度撃てば弾込めに時間がかかることである。
それを補うのは隊を組んでの集団戦法。なのだが、異質な獣の存在がそれを不可能にしていた。
「…っあ…!! また来たぞよけろ!」
高く跳躍した銀狼は隊列を掻き回すように人間達の間に降り立つ。
巨大な身体と長い尾を回転させ周りの人間を蹴散らした。
悲鳴をあげて銃を構えた男は
その声が止む間もなく喉を喰い切られる──。
そして銀狼は間合いをとりながら後退し、他からの銃弾をかわしていく。
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