銀狼【R18】

弓月

文字の大きさ
上 下
52 / 63
掲げた使命

掲げた使命_5

しおりを挟む


「止まって!」


 青年たちに向けていた震える切っ先は

 ゆっくりと……彼女の首にあてがわれた。


「──…ッ」

「行かせてくれないと…この場で死ぬわよ」


 セレナの喉元で放たれた鋭利な輝きに、驚愕した二人は凍りついたように動きを止める。


「わたしは剣の素人だけど、自分の喉をかき切るぐらいはできるわ……」

「お、落ち着けってセレナ様……」

「早く退きなさい」

「……っ」

 セレナの異常な行動の、その迫力にただただ圧倒されるばかりだ。

「──…そこを退いて!」

 彼女に鋭く睨み付けられ二人は背筋に寒気を覚えた。

 何故なら彼女は決して冗談ではない……その覚悟がひしひしと伝わってくるからだ。


 無数のトゲで肌を刺されるように、はっきりと。


「今戻っても手遅れです!! きっとッ…あちらは戦場だ…っ…!! あ…危ないですよ!」

「──…それでも行くわ」

「…っ…何故ですか?」

「……」


 何故って、そんな

 正当な理由なんてない

 正しい答えなんて見つからない

 今の想いを口走ったら…誰もがわたしを侮蔑する



 けれど

 わたしは、" 彼 " のことを……!!




「二人はこのまま街に帰って」

 セレナはを持つ手に力を込める。

「絶対に……追って来ないで」

 固まった彼等を見据えたまま後ずさった。

 そして──

 ある程度の距離ができると、短剣を片手に背を向けて走り去った。

 セレナの目は揺れていない。その背中は迷い無かった。

 " 彼 " が居る場所を目指して──。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...