銀狼【R18】

弓月

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討伐

討伐_4

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「──…」


 ローは消えゆく彼女を見送る。

 洞窟の中の、しんと静かで湿った空気が幽かに衣を揺らす。

 セレナの姿が見えなくなり、匂いまで奥深く遠ざかってから、彼は洞窟に背を向けた。

 反対側へと足を進める。



──…ザッ



 土を踏みしめ岩場へと向かい

 祭壇までたどり着くと石段を登り、向きを変えて段上に腰を下ろす。

 そう、それはちょうど…

 初めてセレナに出会ったあの夜。

 狼の陵辱を受け横たわる彼女を、無慈悲に見下ろしていた時と同じ様に──。



 時は来た


 もはや退くスべは無い



「──…目を覚ませお前達」



 銀狼の放った低い声が、地を這い草木を震わせる。

 それを合図に各々の寝床から狼が顔を出した。

 皆、慣れぬ昼の日に眼を眩ませながらも岩場に集まる。

 そして狼達は、祭壇上の彼を見上げた。



「今より我等が為さねばならぬこと……
 それは戦いだ、愛すべき同胞たち」



 戦い、そして殺せ


 我等の聖地を侵す輩を


 穢し、略奪を繰り返す愚かな人間達を



「其の身が傷つき肉を裂かれようとも……仲間の屍を踏み越え、最期の牙を剥き出せ」



グルル・・ッ・・・



「──私も共に闘おう」



 銀狼の目の前には既に夥しい数の狼が集まり、全身の毛を逆立て激しく唸っている。

 その中で銀狼は鉤爪のついた足をゆっくりと組み直し、表情の凍った美貌で上空を仰ぎみた───。











───…



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