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討伐
討伐_4
しおりを挟む「──…」
ローは消えゆく彼女を見送る。
洞窟の中の、しんと静かで湿った空気が幽かに衣を揺らす。
セレナの姿が見えなくなり、匂いまで奥深く遠ざかってから、彼は洞窟に背を向けた。
反対側へと足を進める。
──…ザッ
土を踏みしめ岩場へと向かい
祭壇までたどり着くと石段を登り、向きを変えて段上に腰を下ろす。
そう、それはちょうど…
初めてセレナに出会ったあの夜。
狼の陵辱を受け横たわる彼女を、無慈悲に見下ろしていた時と同じ様に──。
時は来た
もはや退く術は無い
「──…目を覚ませお前達」
銀狼の放った低い声が、地を這い草木を震わせる。
それを合図に各々の寝床から狼が顔を出した。
皆、慣れぬ昼の日に眼を眩ませながらも岩場に集まる。
そして狼達は、祭壇上の彼を見上げた。
「今より我等が為さねばならぬこと……
それは戦いだ、愛すべき同胞たち」
戦い、そして殺せ
我等の聖地を侵す輩を
穢し、略奪を繰り返す愚かな人間達を
「其の身が傷つき肉を裂かれようとも……仲間の屍を踏み越え、最期の牙を剥き出せ」
グルル・・ッ・・・
「──私も共に闘おう」
銀狼の目の前には既に夥しい数の狼が集まり、全身の毛を逆立て激しく唸っている。
その中で銀狼は鉤爪のついた足をゆっくりと組み直し、表情の凍った美貌で上空を仰ぎみた───。
───…
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