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淫らな罠
淫らな罠_4
しおりを挟む銀狼は彼女の顔を覗きこみ、ほてった頬に手の甲を添える。
「まだ熱いか…」
「…っ…もう、ハァ、…無理……!! 」
厭気を抜くためと言われてもこれ以上あの荒療治を続けられては精神がもたない。
怯えるセレナは咄嗟に脚を閉じた。
「──…そうであろうな」
「?」
だが意外なことに銀狼は頷いた。
セレナがそう答えるのは重々承知と言いたげな口調で、彼は頬から手を離す。
長い睫毛で隠された瞳を俯かせ──
そしてセレナの手元に転がされた果実の皮を手に取った。
「それさっきの実の…」
「セリュスの果皮だ」
首を傾げたセレナの前で、臼桃色の皮から残った実の部分を剥ぎ取っていった。
「ハァ……ハァ……どうする、の?」
「セリュスの果皮は解毒の作用をもつ」
「えっ…」
「残った厭気はこれで解毒できる」
「──…!」
解毒──?
ああ、だから森の小鳥はこの実を食べても平気だったのか、と
セレナの疑問が解けたところで……
” それなら、そもそも “
納得できない事が増えてしまった。
銀狼がセレナに皮を差し出したが、彼女はすぐに受け取ろうとしない。
「どうした。この程度の渋味も我慢できないのか、人間は」
「そうではなくてっ…! …そんな便利な方法があるならどうして先に教えてくれなかったの……?」
「……」
「……あ、あんな方法……使わなくてもよかったのに……!!」
「…あんな方法?」
「だからッ…// さっきの……っ」
言葉に詰まるセレナ。
彼女の口に、銀狼は果実の皮を押しこむ。
「……むッぐ」
「……黙って食べろ、セレナ」
そして渋い皮の味に顔をしかめたセレナに、小馬鹿にした様子で口の端を上げた。
また、弄ばれた…!
「ひどい人ね、あなたって……」
「フっ…」
セレナが何か言おうとすれば次の果皮が押し込まれる。
やりどころの無い羞恥を胸に、彼女は大人しく食べるしかなかった。
───
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