銀狼【R18】

弓月

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獣の愛

獣の愛_5

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「…んんっ…──ぁ」

「…っ…愛が欲しければくれてやろう」

「‥‥‥!?…んッ」

 口腔に侵入した舌を強引に深くねじ込まれ、唇は密着し、セレナは呼吸もままならない。

 逃げ惑う彼女の舌もすぐに捕まりきつく吸われる。

 押しのけようと男の胸板を押すが意味はなく、彼女は思わず爪を立てた。

ギリッ...

 銀狼の陶器のような白い肌に深紅の血がにじむ。

 それでも彼は気にする素振りを見せなかった。


「‥‥ハァ‥‥…ンむ…う」

「……」

「……ッ…!‥‥ハァ‥‥ぁッハァ‥‥」


 やめて…こんな

 こんな、甘いキスをしないで……!!


 激しさがやんだかと思えば優しく絡んでくる男の舌──。

 余裕のないセレナは従順にそれを舐めるしかなく、目頭をじんわりと熱くしながら翻弄され続けた。



「‥‥は ぁ‥ッ…」


「……ふっ…」



・・・・チュッ‥



 不意に、唇が離れた。



 赤く潤んだセレナの瞳を

 銀狼が覗きこむ。




「愛してやろうか……。
 ツルギのような…──獣の愛で」




 まるで、洞穴の天井からポトリポトリと滴り落ちる水玉のように、一音、一音をゆっくりと……男はセレナに囁いた。






.....




「──…っ」


 獣の愛──


「…何…を、言っているの……?」

「──…」


 切れ長の目が、彼女を試すように妖しく見つめてきた。

 ──人離れしたその、美しい眼。


「……!? 」


 動揺して泳ぐセレナのブルーの瞳に、口角を上げてふわりと笑った銀狼の顔が映りこむ。



 そして男の、グレーの瞳が…。



「───」



 それを見つめるセレナの身体から

 ……徐々に力が失われていった。 



 力を抜き取られ、その場に立っていられなくなる。


「…‥あ‥‥?‥ハァ…‥‥‥ッ」


 これは昨夜と同じ現象──

 いや、まるきり違うものだ。

 崩れるセレナの身体を支え、銀狼はもう一度、彼女に唇を重ねた。

「‥ん、‥…ふ‥‥」

 男と目を合わせた瞬間、昨夜は恐怖で全身が縮こまったというのに……

 今の彼女は……彼の醸し出す空気に包まれて、その安堵に身を任せようとするかのような──。





《 くれてやる……獣の愛を

 ──ツルギのような、危険な愛を 》





「‥ハァ…‥‥ぁぁ‥‥」




 セレナの目が蕩けていく。

 男の腕に、ゆっくりと身を任せていく……。






「──…娘、お前の名は何という」


「‥‥‥?」


「名だ……お前の名を、私に教えろ……」


「‥‥な‥まえ‥」



 意識が少しずつ怪しくなる中

 瞼を下ろした彼女は、問われるままに素直に答えていた。



「‥‥セレ ナ‥‥よ‥‥」


「…そうか…、セレナ…」


「──…」


「……堕ちろ……私の元へ」



 銀狼の声に導かれ、セレナの意識は暗闇へと堕ちていく。






──





 其処に在るのは


 恐怖と、不安と……



「──…」



 底無しの冷たさ。






 尚もわたしを魅了する





 深い哀しみの美しさ───。











───…







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