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月夜の陵辱
月夜の陵辱_1
しおりを挟む身体の自由がきかない。
そんな中、背後から近付く獣達の気配にセレナは震え上がった。
「お‥…願い…‥許し て…‥」
声すらも……満足に出てはくれなかった。
無惨に破かれた菖蒲色のドレス──
その上に寝かされた裸の彼女は、さながら花の絨毯に置かれた生け贄の乙女と言ったところか。
セレナを放置して立ち上がった男はふわりと衣を翻し、向きを変えると祭壇の石段を登っていく。
そして数段上がったところで再び向きを変え、横たわるセレナを見ながら腰を下ろした。
「──…」
その顔は笑っている──。
グルル・・・・
「ひっ──ッ」
獣の声はもう…すぐ後ろまで迫っていた。
振り返ることも逃げることもできないセレナ。
“ このままわたしは狼に喰われてしまう ”
その苦しみ…想像すらできない恐怖に支配される。
ベロッ
「…ぅッ──」
手始めに、ドレスを剥がれ露わになった彼女の背中を、生暖かい舌がひと撫でする。
セレナは身体を固くした。
あたたかい濡布のような大きな舌が、背骨と肩甲骨の間を往復する。
柔らかそうなご馳走をひと思いに食べるのは勿体無いらしい…。
だからだろうか。その狼は歯を立てない。
次こそと痛みを覚悟するセレナだが、鋭い物に皮膚を破られる感覚はまるでこなかった。
その間にも数匹の舌が彼女の背、肩、脚を立て続けに這い始める。
おぞましさ、気持ち悪さ。
それらの感覚が死への恐怖と合わさりながらセレナの心を身体とともに縮こまらせた。
レロ・・・・
「…ン…っ…」
前に回り込んだ狼は、臍から脇腹をゆっくりと舐め上げる。
しなやかに曲がった腹はちょうど狼の前に投げ出された形で、憐れな生け贄は味見をされる屈辱に、抵抗もできず堪えるしかない。
彼女はぎゅっと目を閉じた。
閉じた目の暗闇の中。
セレナは今頃自分を心配して探し回っているであろう、父の姿を思い浮かべる。
そして優しい街の人達。
“ ごめんなさいお父様…!! こんな…こんな死に方をするなんて、わたしは本当に親不孝者だわ……っ ”
命乞いまでしたあげく、ひとおもいに死ぬことすらできず
得たいの知れない化け物に裸にされ……
こうしてゆっくりと噛み殺されるだなんて──いったいどんな悪夢だろうか。
……しかし、自身の死を嘆くセレナは
さらなる悪夢が待ち受けていた事を、この直後に知ることになる。
「……ッ‥ん」
彼女を取り囲んだ五、六匹の狼達は、当然ながら嘆くセレナを気に掛ける事はない。
背中、脇、太股、足の指…。
顔と首以外の全ての場所を、生温かい舌が丹念に舐めまわす。
“ どうしてこんな仕打ち… ”
セレナは徐々に、心の何処かに違う焦りが生まれてくるのを感じた。
“ 食べるのなら……早くして……!! ”
そんな風にさえ思った。
何故なら…
「…ン………ぁ……」
ただ気持ち悪いだけであったその舌も、こうもしつこく舐められたら……必然的に違う感覚を与えてくるからだ。
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