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第八章

ウッダ村の民兵

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 タラン侍従長の指示でウッダ村に集められたという平民達──。

 対帝国の臨時的な兵隊か。だが今見たかぎり、彼等に兵隊としての価値は無い。まともに訓練を受けていないのだ。

 そんな連中を数だけ集めて
 奴がやろうとしているコト──。


「……」


 シアンは来た道を戻りつつ、建物の内部に耳をすませて思索していた。




「……。──…、…あーあ、だりぃなあ。こんな暑いなかで棒切れなんて振ってられっか?」

「ははは、サボってるお前が言うなや」

「こんな訓練のマネごとさせて何がしたいのかね貴族さまは。戦は起こらないって言ってたろ?」

「はぁぁぁ、こんなことならアイツらと一緒に王都に付いてけばよかったかもな」

「あっちの仕事を選んだヤツらは今ごろどうしてんだか」

 建物内部からは、訓練をぬけ出た連中の会話がコソコソと聞こえてくる。

「失礼、今の話を詳しく聞いても?」

「…っ!?」

 そこへ躊躇ためらいなく飛び込んだシアン。ぎょっと驚いた男達が建物の入り口へいっせいに振り向いた。

 そこに立つのは歳若い青年。

 その服装は、隊服ではない。

「な、なんだ、近衛兵じゃあない…よな?おどかすなよ…っ」

「すみません」

「肝が冷えちまったぜ。誰だお前さん」

「僕は先ほど村に到着したばかりで、名をシアンと申します」

「シアン?へんな名だな。顔立ちも妙に……」

 聞かれた相手が貴族ではなかったことにひと安心する面々だが、知らない顔のシアンに対して完全には警戒を解かない。


「それより話を戻しますが『王都へ付いて行けば』とは何の事でしょう。集められた人々はここにいるのが全員ではないのですか?」

「…っ…なんだってそんなこと気にするんだ。お前さんが知らないってんならわざわざ話すまでもねぇ」

「そう言わず教えてください。王都に行った方々は、そこで何を?」

「しつけぇな。そんなの聞いて何か企んでるのか?」

 先ほどの会話──。民兵の駐屯地が王都ジゼルにもあるということなのか?

 シアンは即座に尋ねたけれど、男達は答えようとしない。シアンを信用していないのだ。

 だったら──

「余計な詮索しねぇで仕事を探しに来たんならまず近衛兵のとこ行きな。食いもんの支給もそこである」

「確かに僕は仕事を求めてきましたが、ただ、皆さんの言う仕事とは全く違います」

「??」

「よければ……そうですね、試してくださっても構いませんよ?」

「お前…──!そうかその肌の色……」


 相手の警戒を和らげる手段は

 信頼を得るか、もしくは、さげすみを受けるか。


 ……その、どちらかだ。




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