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第七章
宴の終わり
しおりを挟む「…はぁっ…流石に反応が無くなってきたか?」
「イッてるのかどうかわからないなこれじゃあ…。目は開いてるか?目ぇ開けたまま気絶してないだろうな」
「こっちのガキはっ……はぁっ、はぁっ、もう気絶しちまってるぞ、はは…!!」
すっかり夜がふけた頃、宿舎の食堂では未だに宴が続いている。
シアンの尻から抜け落ち床に転がされたクルチ。
拡げられたその穴は、代わりに男の肉棒をくわえ込んでいた。
グチ!グチュ!グチュ!
「‥‥‥ッ‥…ハァ‥‥ハ、‥…ァ‥ッッ‥‥」
「おっ……おっ、締ま る……!! 」
「ははっお前もう出したのか?次は俺に代われ」
意識があるのか定かでないが、奥を突くごとに柔壁が肉棒を締め上げるから、死んでいないことだけは確かである。
半分ほど開いた目から焦点の合っていない瞳が覗いているが、誰を見ているのか……何を見ているのか……本当に、どこかに感情を飛ばしてしまっているらしい。
オメルも似たような状態だが彼はすでに気を失った後だった。
「…どうした?声が聞こえんが」
「ああ副官!こいつっ…さすがにバテちまったみたいですね…!」
「気絶したのか?それでは意味がないだろう」
「別にこのままでも十分具合はいいですがっ……あ、いや」
「……」
抵抗しないシアンに腰を打ち付ける男は、副官に睨まれて肩をすくめる。
「眠っているなら叩き起こせ!叩いて駄目なら顔を水に沈めてやれ!」
「…っ…しかし水瓶はほとんど空です」
「ならば司令部の地下から運んでくれば良いだろう。おい、ウルヒ!」
「──…んあ?…な、なんですかァ」
「貴様が行け!水瓶をひとつ持ってこい」
「う、えええ」
椅子に座る副官はその足元で寝そべるウルヒを叩き起した。
真っ先にシアンに突き立て精を全て搾り取られていたウルヒは、かなり嫌々だが重たい腰を上げた。
「地下牢へ探しに行け」
「…チッ…面倒くせぇ…」
「……何か言ったか?」
「何も言ってないですよっ!持ってきますって」
そして副官への小言を呟きながら急かされる形で食堂の出口に向かった。
衣服を乱した見苦しい状態のまま、酒に酔ってフラフラと進む。
今も犯されているシアンとオメルを背後に、扉に手を掛けた。
「…ったくなんで水瓶なんか」
ギィ...
───…ドンッ!
「んっ…、あ…!?」
だがウルヒが外へ足を踏み出した時、扉向こうの何者かとぶつかった。
「邪魔くせぇ場所に立ってんじゃねえ!早く退け!」
ぶつかった反動で後ろに下がったウルヒは、悪態をついて相手を見下ろした。
……が
「……ん?…んん?」
見下ろしたのだが、その先に相手の顔は無い。
「ん、…っとー……!!」
「──…」
「お前、は……」
槍兵師団いちの巨体であるウルヒは、恐る恐る……目の前の男を見上げていた。
「ウルヒ?何をぐずぐずしている」
後ろで副官に急きたてられるが押しのけようにも相手はびくとも動かない。
食堂の出口でもたつくウルヒは、逆に相手に突き倒された。
「う…っ!!」
「──…これはいったい何の騒ぎだ」
「……!」
床に倒れたウルヒを意に返さず、現れた男はその目を副官に向けている。
ほろ酔いの副官は足を組んで悠々と構えていたのだが。……相手を数秒の間見つめた直後に、みるみる顔から色を失った。
「どうして貴方がここに……!!」
「貴様──槍兵師団の副官だな。この状況はなんだ」
「あ、いや、これは、その」
椅子から跳ねるように降りた副官が、誤魔化しようのない惨状を横目に、二の句が継げず頭を下げた。
そんな副官の頭部を睨み付け、さらに食堂の中を見渡した男が、部屋を震わすほどの大声を放つ。
「この馬鹿騒ぎを説明しろと言っている!!」
瞬間──皆がいっせいに喋るのを止め声の主へと振り返り、シアン達を犯す手も止まった。
「ぁ……バ…ッ…、バヤジット・バシュ…!?」
「…っ…騎兵師団の将官か?何故…!!」
「──…」
兵士達が一様に青ざめていく中、その間をぬうように男は歩みを進める。
そして集団の中心に、衣服を剥ぎ取られぐったりと動かないシアンとオメルを見付けた。
「……!! 呆れた連中だ……!!」
シアンに被さる兵士を掴んで投げ飛ばす。飛ばされた兵士は席に向かって頭から突っ込み、机に並ぶ酒器のことごとくを割って台無しにした。
男はその場にしゃがんで、シアンの顔に軽く触れる。
「生きているか?」
「‥…ッ‥‥ハァ、…‥ァ‥、ァ‥‥‥?」
「意識は、あるな…」
彼はシアンとオメルをひとりずつ肩に乗せると、倒れた二人を連れて出口へ戻っていく。
頭を下げて縮こまる副官の前を通り過ぎ、怒りを込めた低音で静かに言い捨てた。
「貴様らの処遇は追って伝える故、覚悟していろ」
「…っ…か、かしこまりました…」
出口を塞いで転がるウルヒを横へ蹴飛ばし、突如現れたその男はシアン達を担いで去って行った──。
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