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第五章

狂宴

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「なぁにがやめてーーだ!やめるか?やめるか?はぁっはぁっ…やめるわけないだろうがよォ!」

「アっハ‥っ!ああ、ゃ、…やだぁぁ‥!!」

 酒臭い部屋の中心で大勢の見物人の目に晒される中、巨漢に怒鳴りつけられている子供。

 オメルだ。

 仰向けのオメルは頭上で両手を拘束され、左右の男に膝を抱えられ、腰を高々と持ち上げられていた。

 そして──広げた下肢の間に陣取っている男は、ウルヒで間違いない。

「はぁっはぁっはぁっ…!」

「‥…ぅゥ─ア、ああッ//…‥あ…アっアっ…や、やめってええ…!!ああ、ああーーッ!」

 裸体に剥かれた小さな身体の抵抗を奪い、自身の腰を荒々しく打ち付けている。

 毛で覆われた汚らしい尻たぶが揺れるサマが、シアンの立つ場所から丸見えだ。

「‥あっアアア!!……いやぁ!やあああ…//」

 オメルは必死に逃れようとしている。

 だがオメルがいくら疲弊した手足をばたつかせたところで、それは彼の四肢を掴む男達の手を僅かにわずらわせるだけ──。

 結果オメルに許されているのは、幼い男根を上下左右に振り乱し、無様に喘ぎ鳴くことのみ。

 未熟な後孔に凶悪な竿が出入りする光景は、虐待以外の何物でもない。

 乱暴に扱われ息も絶え絶えなオメルは力尽きる寸前だった。

「アっ‥アっ‥!! もぉむり‥…」

「…っ…ん?おい!締まりが悪いぞ小僧?また目ぇ覚ましてやろうか!?」

「ひっ!やだアレだめッ…──ああ!」

 抱えられた身体がされるがままに揺さぶられ出すと、それを不服に感じたウルヒが残酷な指示を仲間に出す。

 オメルが絶望の悲鳴をあげると

 ニヤリと嘲笑う男達の手が──少年の弱い箇所をいっせいにくすぐり始めた。

「あっひひ!ヒッ、ヒヤァァ‥ッッ!!やっやめっ!やめっ!ひゃめてええ!」

 膝を持ち上げる男に、内腿と足裏を。
 手を拘束する男には無防備に晒したわきを擽られる。

「…ッ‥ひぐううう、は、あはは!!ダッメ、いき、いき がっ!ひ、ひひ…ッッ‥ひいい!!」

「はははは!大喜びじゃねえかぁ」

「ちっがう!チガッ──あはぁ//あははははッ!」

 涙を流しながら顔をひきつらせ、場違いな笑い声を響かせるオメル。

 何かを訴えるたびに飲み込めなくなった唾液が口から垂れ、真っ赤に震えている顔を伝い落ちる。

「ああッひいいいいーー!‥ッ やめ、てえええ」

「おーおー頑張るなぁ…!! …ッ…いいぞ、もっと…」

「…──!?‥ヒャッッ// ああああーー!!」

 とどめとばかりにウルヒの片手がオメルの男根を掴まえて上下に扱き始めた。

「やっだああああッ!ヒャッッア、アッ//‥‥あ//──ッあああっヒッ、ヒッ、ヒィッ、あは、あはははは‥ッッ」

 強制的に送り込まれる快感に怯え、絶望して絶叫する。

 だが無慈悲な責め苦によってそれは笑い声に変えられてしまう。

 それがどれだけ辛いかも知らず──見物人は遠巻きに嘲笑うだけで、助けに入る者はいなかった。


 
 助けに入らないのは──シアンもまた同様だった。

 彼はつとめて冷静な顔でこの陵辱ショーを眺めている。

「──…ッ」

 しかしその心境は…完全に平静とまではいかなかった。

 隣で仏頂面をつらぬく副官に皮肉を込めて話しかける。

「まだ日も落ちきらぬうちからこの様な行為にふけるとは…ずいぶんしつけの良い事ですね。太陽神の目がある間、性交は禁止されている筈では…!?」

「……ふん、心配には及ばんぞ。性交とは " 人 " を相手にするものだ。貴様らは人ですら無いからな」

「……」

 信仰などとっくに捨てたシアンにとって、太陽神に何を見られようが関係ない。

 だが彼はこの茶番が不快だった。快楽に泣き叫ぶ少年というのはシアンにとって見慣れた光景だ。ただ、この陵辱の引き金は十中八九自分であるから──

 無関心をつらぬけられる訳がない。


「ゆっ…るじてぇぇッ!あははははッ…はッ!はぁっはぁっ‥ゆるじ、てっ……ヒャッッ…//」

 オメルの絶叫が変わらず続いている。

 もう気持ちよいのと苦しいのと擽ったいのとで混ぜこぜになった頭と身体は切り替えができず、暴力的な悦楽の境地にずっと押し上げられたままだ。

 ウルヒの手の内で破裂したほとばしりも、終わりがわからず垂れ流し状態。

 その淫液はすっかり色を失い透明で──もう吐き出すのも限界であると男達に訴えている。

「ひいいい!ひいいーーッッ!…‥もっ‥//
オレッ おかひぃく‥なっちゃううう!!」

「ははっはあ!おかしくなる?さっさとなれよ!」

「…あっひゃああ// ひゃはははッ‥‥だめああ!」

「ハァ…っ…もー少しで出してやるから我慢しなァ!」

《 おかしくなる 》

 相手を喜ばす常套句だ。売春宿で毎夜のように使い倒されてきた言葉。

 だがオメルのこれは演技ではなく

 本心から絞り出されたこの言葉が、彼がいったいどれだけ長い時間を…こうして責め苦に晒されているのか、どれだけ危険な状態であるかを象徴していた。

「…ハァハァハァっ‥よぉし!いいぞいいぞォ…もっと締めろ!」

 オメルのモノを容赦なく上下に摩擦しながら、腰の動きを速めたウルヒ。

 もはやその目はオメルを見てすらいない。奴にとってオメルは無機物の淫具と変わらないのだ。

 加減を知らない、独りよがりな……

「あははははッ…‥アッ// ああ!おおーーっ…‥あひぃっ!ひひひっヒヒヒヒヒヒッ‥イヒヒヒヒーー!」

 そんな責めは悲しき獲物から人間性を剥ぎ取り、心の崩壊を招いている。意味のある言葉を奪い、獣の雄叫びに近い声が溢れ出す。

 そこまでしても男達の手は赤く染まった肌を淫猥に撫で上げ、性感帯に仕立てた皮膚の薄い箇所を丹念にくすぐるのをやめない。

 小さいながらも張りつめた男根をひたすら虐めぬき、発情させるのをやめない。亀頭と幹をもみくちゃにして激しく扱き続ける。

「‥イヒッアアッ…ははははははっ!‥アアッ// ああん// あはぁ!…あぁぁぁぁぁー!‥イグーー!」

 オメルは言葉にならない哀願を──喉が裂けんばかりの鳴き声を響かせながら、汗にまみれた裸体を仰け反らして絶頂する。


 勝手に速さを増して打ち付けられる剛直も、引き抜かれる気配は無い。


「──…」


 シアンはそれらを見詰めて立ち尽くす。

 彼の反応を伺う副官の視線が注がれていようが、そいつに掛け合っても意味が無いと知った今──

 シアンはこの狂った宴の全容を目と耳に焼き付け、そして、いつまでも冷めた自分自身と見詰めあっていた。


「……………ハァー」


 沈黙する口から、溜息に近い吐息が零れる。


「……………」


 オメルの泣き声が、耳に五月蝿い


「……………」


 調子にのって喚く醜い大男が、不快極まりない


「…まだまだッ…ハァ、勝手に死ぬなよーー!?」

「アッ!アアーー!‥ひゃはははッはッはッ…//
 ‥ガっハ、はははひ‥ッッ‥ひぃ…イグ」

「……………」


ビグッッ...


 痙攣する足に血管が浮いて辛そうだ。

 連続で絶頂に達したオメルが、大きく口を開ける。


「‥ゃ‥─ぁ゛‥‥ぁぁぁーーッ」

「──…」

「…‥ヒィ‥‥ッ───シ‥‥ァン」

「……!」


「‥シ‥ぁん──ッ ‥しぁ゛ん‥‥!!」


 息を吸う事を忘れた口から……


 シアン───


「…………オメル」


 とても微かな声で、彼は名を呼ばれた。




 だから、仕方がなかった。

「……ッ」

 シアンは連中の輪の中に飛び込んだ。

 突如現れた彼に見物人達が気を向ける前に、シアンは誰のものか知らないクルチ(三日月刀)を床から拾う。

 鞘にささったそれを右手に持ち、ウルヒの背後から近付いた。

「は!?……おぶっ!」

「退いて下さい…!!」

 彼が狙ったのは男の膝裏。

 それほど強くない力で押すように叩けば、呆気なくウルヒは背面に倒れた。

 オメルの後孔から肉竿が抜け、ドサリと尻もちを付く。

「…っ…な、な!?……お前……!!」

「──…」

「──ヒッ」

 シアンが、クルチの鞘を床に落とした。

 そんな彼に冷たい目で見下ろされ、思わず怒鳴ろうとしたウルヒの声が喉で止まる。

 見物していた隊員達は、それまで弛めていた顔を一気に緊張させて各々の武器に手を添えた。

「‥ヒッ、ング‥ッ‥…?‥‥シ、‥ア ン‥‥?」

 狂乱の無限ループから突然解放され、霞んだ視界にシアンを見たオメルが朦朧もうろうと呟いたが……

 今はオメルを気にかけられる状況じゃない。



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