上 下
10 / 10

更新

しおりを挟む



カタカタ、カタ、カタ、カタ....

カタ


 おや、変だな。


 あんなに五月蝿かった頭の中が、一転して静かになっていく。

 秒針が止まりそうだ

 壊れる寸前の壁掛け時計のように──。

 決して時間は、止まらないけれど。





カタ、カタ、カタ





 ねぇ?


 僕の愛しいお嬢さん。


 君が何と言おうとさ、僕はやっぱり人間になりたかったよ。


 人間は君が言うように、嘘つきで、卑怯で欲深くて、弱い存在かもしれないけれど。


 それでも、誰もが……僕より自由に生きていた。


 つらい過去や、忘れたい記憶を引きずりながら


 そんな苦しい日々の中で


 愛したい人を、愛していたんだ。


 ねぇ……僕は、どうしてマスター以外を愛してはならないのか。


 何故  自身を愛しては……いけないのだろうね。





 この憤りが……ああ、そうか


 これが本当に感情なら、まっさらになった後も、君に愛を誓えるのに。


 更新されたその先で──君と同じ景色を、記憶に刻んでいけたのに。












(完)





しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...