カフェオレはありますか?

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 誰も居なくなった玄関の鍵を閉めて、部屋へ戻る為に足を動かす。階段を上る途中、振り返り檜山の立っていた場所を見る。後ろ髪を引かれているかの様な自分の行動に、言い訳を考えるのも疲れた。飲み物を飲もうと、途中まで上がった階段を下りて、リビングに足を踏み入れる。閉まったままのカーテンを見て、ボディーガードの存在を思い出す。檜山の寝不足が僕のせいだというのは簡単に解った。部屋に転がっている携帯の事も、檜山の兄弟が学校に来たのだって、無理して起きて連絡を取り合ってた結果だ。無様だと自分を笑うのは簡単。けれど、解決はしない。ボディーガードは檜山の保護者が付けたものなのは間違いないだろう。何故か僕には甘いと言うが、ここまでされると肩身が狭く感じる。そんなに弱くはない。そう訴えたところで、今更すぎて誰も信じてはくれないだろうな。水道の蛇口を捻って、コップに水を注ぐ。半分ほど飲んで中身を捨て、息を吐きだす。今回の事は、周りに巻き込まれている状況だと言っていた。本当にそうだろうか。たらればを繰り返そうとする思考をどうにか押し込んで、夜ご飯を考える方へ無理矢理意識を逸らす。弁当箱は未来と母さんの分だけ作れば良いだろう。そこまで考えて、右手で右頬に触れる。チークキスなんて子供染みたこと、自分からしたこと無かった。なのに、檜山の顔を見ると、まぁ良いか、と、思ってしまう。
「リンゴみたいだったな」
 思い出しても少し笑えた。そもそも、チークキスを間違えるって聞いたことがない。あんなに嫌いだったのに。今では名前を呼ぶ事がある。今朝の様に守られては、安堵の息を吐く事さえも。いつか檜山茜を求めてしまうのだろうか。心の底から助けを求めてしまったら、僕はどうなるんだろう。少なくとも、今のままではいられない。それが嫌だ。それが怖い。
「普通だったら……」
 普通。自分の口から出た言葉に、軽く笑いがこぼれる。それって何だよ。未来みたいに生きることか?それとも鹿沼みたいに?皆が檜山みたいに生きてれば、それは普通と呼べるのか?僕みたいに生きる事は普通なんだろうか。いや、違うな。そもそも、僕と未来達を比べるのが間違いだ。でも、未来みたいだったら、檜山とも普通に良い友達になれたかもな。こんないびつな関係じゃなくて、もっと、世間一般の普通だったら。それが解らない僕は、普通じゃないんだ、と、思い知らされる。コップを片して、自分の思考から逃げるように台所から離れ、部屋へ向かう。期待した所で何も起こらない。願った所で叶わない。そんなのはとっくに解ってる。だから、早くに見切りを付けて背を向けて生きてきた。それはこれからも続く。続けていく。部屋に戻ってカーテンへ視線を向けるも、開けれないまま、床に置き去りにした携帯を見る。緊急時用というに相応しい、コンパクトな造りをしているなと、改めて思う。僕もこれからの行動を考えないといけない。檜山の説明では、ストーカーの件は、僕が身勝手な動きをしなければ、解決する様に手配されている、と受け止められるものだった。ピアノを弾いたのが引き金とは未だに信じられないが、その後から変化が合ったのは確かだから、今はそう思うしかない。着替えるためにネクタイをほどいて、GPSの場所を指で触る。こんなものを仕込まれてたとは知らなかった。しかも、これが僕の安全管理に繋がるとは。この携帯、盗聴機まで付いてないよな?嫌な予感に従って、電池パック等、自分で調べられそうな所は全部見たが、それらしいものは無かった。GPSは絶対付いてるよな。盗聴機を見つけるやつって、その辺の店でも買えるとかテレビで見たような気がする。でも、そういうのに関する知識はない。未来に頼む訳にも行かないし。いざ見つけたら怖がってしまうだろう。駄目元で鹿沼に頼んでみるか。メールで伝えてみると、面白そうだから買っておく、とすぐに返事があった。今日調べることは出来るか聞かれたので、早めに対策出来るならありがたいと思い、承諾する。来るのは夕方位だろうから、ひとまず着替えることにした。制服を脱いでハンガーにかけてから部屋着に着替える。ハンガーに掛かる制服は、入学したてのように綺麗で違和感があった。後日改めて保護者に感謝しに行かないとな。檜山は毎回自分の買った服を着ない僕に不満を感じる様だが、あんな値段のものを平然と着る精神力は持ち合わせていない。保護者に相談して少しずつ返金したい位だ。大量に捨てられる前から服にこだわりはなく、決まったやつばかりを着回している。それも母さんと未来がくれたやつだけで。着ないから安くするために、古着で良いって言ったんだが、上手く伝わらなかったみたいだ。好きな子がどこの誰かが着た服を着る。それに対して不快感を感じる理由が解らない。現在タンスやクローゼットの中は、着てない服が大半をめている。改めて出掛けることもないし、それに、一着が高いと解っているから余計に着難い、と言うより着たくない。冬の上着は去年母さんが買っていてくれて良かった。上着が高いだけで肩身が狭くなるところだった、と息を吐く。着替えて今日の夕飯と明日の朝食と弁当の準備をするために階段を降りる。
 家の前に居ると夕飯の準備ができた頃、鹿沼から着信があり、玄関の前にいるとの事だった。玄関のドアを開けると、ビニール袋を持って門の外に立っている鹿沼と目が合う。本当に買ってきたのか。今日の今日で。この行動力はどこから出てくるのだろうか。僕には真似できないな。左手で手招きすると、鹿沼は周りを一度見回してから門を開けた。ストーカーの事を気にしてくれている、のか?ドアの前まで着た鹿沼は、袋の中身を僕に見せてくる。
「盗聴発見隊……何故これをチョイスした?」
「関連商品の中では売上一位らしい」
 この世は盗聴機の巣窟そうくつにでもなっているのだろうか。とりあえず、このネーミングセンスは頂けないな。一人で一個使う商品にを付けるのは変だと思う。
「すげー面白そうだから、すぐ買った。親御さん居るか?せっかくなら一緒にやろうと思ったんだが」
 居たら母さんも笑顔で参加するだろうな。
「残念ながらまだだ。未来が居ないのは助かる。盗聴機とか怖がりそうだから」
「だから、連れてこなかった。明日の朝までは家族と家の中だから大丈夫だろ」
 部屋へ案内しようとしたが、鹿沼はリビングから全部の部屋を調べたいと言ってきた。僕の部屋から調べた方が確実なのに。理由を聞くと、テレビで盗聴機捜査隊的な番組を観るのが好きらしく、今回の僕の申し出は願ってもない事で、楽しみで仕方がなかったそうだ。取り扱いも確認していないから、先に理解しておきたいと言われ、リビングに通した後、二人で取り扱い説明書と睨み合った。
「これ、どこで買ったんだ?」
「トンキ」
「確かに有りそうだな」
 有名な大型雑貨店の名前を聞いて納得した後、単四電池が別売りで必要だと書いてあるのを見付ける。
「電池をセットして……」
 きちんと買ってきていた。
「因みに、僕の部屋はGPSが有るから、すぐに反応するかも」
「あぁ、ネクタイ調べてたな。屋上での事は反省せずか。全部付いてるのか?」
「残念ながら。今回の事が解決したら壊す」
「悪いが、そうしてくれ」
 鹿沼も今回の事を知っているから、外せとは言ってこなかった。未来の事を想えば当然だ。スイッチを入れた探索機は、ピッピッと、簡単な音を繰り返した後、当然の様に鳴り出す。その時点で、だろうな、と、僕と鹿沼は呟いて息を吐く。リビングから始まった捜査は、ダイニングやキッチンを回り、トイレと脱衣所やサンルーム、風呂場を調べ一階を終了した。二階に上がると、階段近くの僕の部屋に向かって、探索機の音が大きくなり左手を額に当てる。僕と鹿沼は溜め息を吐きながら、奥の部屋から探すことにした。物置からも書斎からも見付からず、当然母さんの部屋も何もなく終わる。母さんの部屋から見付かろうものなら、すぐに殺しに行くところだ。探索機を右手に持った鹿沼と僕は、ひときわ賑やかになった警告音に顔を見合わせる。僕、今まですごい部屋で生活してたんだな。
「いよいよ本拠地か」
「そうだな」
「GPSが付いていると解っている物は、廊下に出してもらえるか?」
「解った」
 僕は持っているネクタイ全てと、携帯を部屋の外に置いて、鹿沼に始めてもらうよう伝える。最初に反応したのは、臨時携帯様の充電器として渡された物だった。鹿沼は充電器を右手で持ち、見た目を確認する。僕も横から確認するが、普通の充電器にしか見えない。
「定番だな」
「そうなのか?」
 本当に盗聴されていたらしい。
「ドライバー借りれるか?」
「あぁ、待っててくれ」
 僕が引き出しを開けると探索機が反応した。とりあえず、先にドライバーを取り出し鹿沼に渡す事を優先する。
「(ドライバーが机の引き出しから出てくるのを初めて見た)その辺にも何か有りそうだな」
「人のプライバシーを何だと思ってんだ」
 ドライバーを鹿沼に渡して、ネジを外した後に充電器の中を見る。何が盗聴機か全く解らない。盗聴機を外しても充電器としての機能は保たれるんだろうか。鹿沼が言うには、これは定番タイプの盗聴機らしく、簡単に取り外せるそうだ。テレビを見ただけの知識にしては詳しいな。
「コイツを外せば問題ない」
 鹿沼は盗聴機を外して、僕に渡してきた。これが盗聴機か。盗聴機が取り外されたコンセントの中身は、機能しているのが不思議に感じるほどスカスカで驚く。これに人の生活は助けられているのか。なんか、すごいな。元に戻してもらったコンセントをあった場所に戻し、見付かった盗聴機を部屋の外に置く。次にと引き出しを調べるが、中身を取り出しても音は変わらない。
「物に反応してると思ったが」
「……引き出し、全部取り出せるか?」
「あぁ」
 取り出しはしたが、特に変化は無いように見える。
「貸してもらえるか?」
 鹿沼に渡すと、それを迷わずひっくり返す。落ちるはずの無い底板が床に落ちて、それに盗聴機が貼り付けられていた。
「良く解ったな」
「大和に進められた脱出ゲームのトリックに合ったから、試しにやってみた」
 僕は一生脱出することが出来ないな。盗聴機を受け取り、外れた板と処分する為に廊下へ放り投げる。引き出しは毎日開けているから、一センチ無いにしても、変化に気がついても良いはずなんだが。
「まぁ、身の回りの事に興味がない部分を、逆手に取ったやり方だな。ドライバー入れてた位なら、ここの引き出しはそんなに開けないんじゃないのか?」
「確かに、この引き出しはそんなに開けないか。なるほど、これは勉強になる」
「後、このボールペンだが、カメラだと思う」
「……カメラ?」
 机の上に置かれたペンたての中にあるボールペンを、鹿沼が指差してカメラだと言う。確かに、使ったことの無いボールペンだ。そもそも、いつもは学校で使っているペンケースを、家でも共有で使用している。ボールペンなんか置いて居たかどうかも覚えてない。引っ掛けの部分に丸い物が付いているのを見つけ、ボールペンを鹿沼に渡す。
「変なものは全部破棄してくれ」
「解った」
 それから、鹿沼が部屋を全て創作して出てきたGPSは、ネクタイを除いて五個、隠しカメラ二個、盗聴機六個が見つかった。
「僕のプライバシーはどこへ」
 探知機のスイッチを切った鹿沼は、見つけ出した戦利品を記念に撮影した後、僕を見て口を開く。
「一応聞いとくが」
「何だ?」
「警察呼ぶか?」
「要らんわ!」
 僕の部屋に押し入ってきた檜山は肩で息をしていた。盗聴機の音が凄過ぎて、玄関からここまで来る音に気が付かなかったな。檜山は鹿沼の側にある盗聴機の残骸に手を伸ばし、盛大に息を吐き出す。
「変な会話が聞こえて来てみれば。せっかく苦労して取り付けたのに何で取っちゃうんだよ!」
「多木崎を前にしてよくそんなこと言えるな」
「はっ!」
 自分が良い行いをしている、と言い切る姿に呆れた僕は、鹿沼に残骸の処分方法を伝える。
「その写真保護者に送っとけ」
「おう」
「おう、じゃない!」
「不法侵入までしておいて、何かを言える立場とお思いか?」
 睨み付けると、檜山は青ざめた顔でその場に正座した。今日何度目の姿だろうか。
「……あの、こ、これは愛ゆえにですね……」
「連れて帰れ」
 聞く耳は持たないと檜山を部屋から追い出す。鹿沼に襟足を捕まれながら、犯人は玄関まで運ばれていった。運ばれると言うよりは、階段を踏み外して転げ落ちた、と、表現するのが正しいな。リビングにあった鞄を手に持った鹿沼は、次を楽しみにしてる、と言って笑う。騒ぐ檜山を玄関から蹴りだし、僕に軽く挨拶してから帰って行った。玄関の鍵を掛けた後、僕は深く息を吐き出す。一分か二分檜山が居ただけであんなにうるさくなるのか。しかし、思い付きがこんなことになるとはな。にしても、檜山の戻りが早すぎる気がする。そもそも、盗聴機は聞き取れる範囲が決まっていて、檜山の家からだと受信できないはずだと鹿沼が言っていた。それが引っ掛かる。
 愛ゆえに。この世界に愛なんてないよ、茜くん。オマエの世界にはあっても、ここにはない。僕の世界に、愛なんて無いんだ。母さんだって、何度も僕を産んだことを後悔したに違いない。僕のせいであんな事になったんだ。僕なんかを産んで、僕なんかを助けるためにあんな、あんな……一生ものの傷。が背負うべき傷だった。俺のもとへ駆け寄ってくる母さんを止めていたら、新しい人を見つけて、俺を捨てることが出来たのかな。最低だな、俺。母さんがどんな人か知ってるくせに、そんなことを考えるなんて。親不孝にも程がある。何でこんなに汚いんだよ。どうして母さんと違っているんだ。同じが良いのに。全部が違う。アイツに近付いているような自分が気持ち悪い。疼く右足の怪我が、皿の音を連れてくる。耳を塞いでも離れない影から逃げるように、部屋へと駆け込む。愛が無いこんな世界じゃ、何からも救われない。解ってる。それでも、代わりの何かを求めるように、静かに頬が濡れた。泣く資格すら、無いくせに。
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