女王の目覚め

青森遥

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私は、眠る。生まれ変わる為に… その2

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 僕は、トレド。僕は、これから、選ばれた者だけが行けるあるところに行く。
 上流階級だけの集い。頭がよくて、容姿も優れた、裕福な家の出身だけが集えるのだ。
 僕らの優秀な頭脳を子々孫々残す為にできたシステムと聞いている。
 僕は今、誇らしさで一杯だ。

 俺は、サム。憂鬱だった。今日遂にあの儀式に行くよう通知が来た。
仲間内では、とても甘美なところだそうだが、帰って来た者はいないと噂されている。
まさに逃れられない運命の時だ。明日がその日だ。


 中年で、でっぷりして、お金だけは沢山ある役人の私は、遂に手に入れたチャンスに心躍る気分だ!
 今回は、ユニアがこの儀式に参加するそうだ。
 もちろん、私は、ユニアに会いたいがため、相当な大枚を積んだ。今日、あの子に会える…。
 私は、国のこの人口管理システムの総元締めだ。
 選りすぐれた、美しい娘達を管理しているうち、中でもとびきり美しいユニアに私は、年甲斐もなく恋をし、心を奪われていた。たぶん、ユニアが今後トップになるだろう。
 本来は、私は、ここに呼ばれるべき身分の人間ではない。ただ、特別に金と地位があるということで、無理にねじ込めたのだ。
 もちろん、これが私の最期の恋で、この後、私は、元に戻れない運命であることを知っている。
 こうでもしない限り、身分が低く、見た目も劣る私は、、恐らく、何の役にも立たず、人知れず、ヒッソリ死にゆく運命だった。
 
 私は、この屈折した思いを存分、ユニアにぶつけるつもりだ。どんなにこの時を待っただろうか。私の今までのすべての財産を今晩使い果たすのだ…。
それは、惜しくない。そして、どうかユニアが私の子を宿してくれますように!

 広い会場は熱気でむせかえるようだった。とは言っても、全て仕切りで覆われ、誰とも出くわすこともない。ただ、監視役の侍女を除いては。 
 私は、もう、何度も妄想して求めていたユニアを目の前にした。彼女は、薄い透き通る布をかけられただけの姿で眠っている。
 私は、ユニアの美しさに息を呑んだ。そして、幸福を感じた。
今まさに私とユニアの疑似恋愛がはじまる・・。私の命と引き換えに。
私は、侍女になるべく我々を見ないよう指示した。侍女に邪魔して貰いたくないのだ。1mmたりともだ…。
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