がむしゃら三兄弟  第二部・山路将監正国編

林 本丸

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第四章 賤ヶ岳合戦

柴田勝家の甥・佐久間盛政

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 この天正てんしょう十年から同十一年にかけてはたいへん雪深かったようだ。
 天正十一年の旧暦二月二十八日は、新暦でいう四月二十日なのだが、勝家は黒鍬衆くろくわしゅう(土木工事を行なう部隊)を組織して、雪かきしながら行軍する有様ありさまであったという。
 勝家主力をさし置いて、先鋒せんぽうとしてまず佐久間さくま盛政もりまさが兵をだし、三月二日(新暦四月二十三日)に、越前えちぜん北ノ庄きたのしょうを進発する。
 二日後の三月四日、勝家は北ノ庄城をでた。
 三月七日には、勝家勢は近江おうみ余呉よご木之本きのもとを放火して秀吉側を刺戟しげきした。
 翌三月八日、佐久間盛政は北近江に入り、木之本付近に進出した。つづいて秀吉が築いていた天神山てんじんやまとりでの攻略をはじめた。
 この天神山砦には、秀吉の命でかつての勝豊かつとよ老臣ろうしんであった大金藤八郎おおがねとうはちろう山路正国やまじまさくに一勝かずかつ久之丞きゅうのじょう)の兄弟がもっていた。
 ここに賤ヶ岳合戦しずがたけかっせんがはじまることになる。
 三月十日、勝家は北近江で放火をしてさらに秀吉勢をあおった。
 北近江で縦横じゅうおうに動く柴田軍をはた目に見ながら、滝川一益たきがわかずます排除後の北伊勢きたいせ残党狩ざんとうがりを進めていた秀吉であったが、さすがに柴田軍の行動を放置ほうちできなくなり、北伊勢は放っておき、その北伊勢攻略を進めていた兵をまとめて近江おうみ佐和山城さわやまじょうに入った。
 時、天正十一年(一五八三)三月十六日のことである。

 佐久間さくま盛政もりまさ――。
 父は佐久間盛次もりつぐ。母は柴田勝家しばたかついえの姉か妹という。その縁で、勝家とはあたかも親子のように成長した。
 柴田勝政かつまさは盛政の実の弟である。勝政かつまさ勝家かついえの養子となって柴田の姓を継いでいた。
 佐久間盛政は、当時の戦国武将に多い激情型げきじょうがたの人間だった。ために、どちらかといえば冷静で理詰め型であったこちらも勝家の養子だった柴田勝豊かつとよなどとは対立たいりつすることが多かった。
 ただそれで簡単に盛政の性格の善し悪しを論ずることはできない。かれのその激しい感情は、しばしば戦場では頼もしい将とうつり、かれのひきいる兵らは盛政のすがたにふるい立ったことであろう。つねに物事には、表と裏の両面がある。
 その闘将とうしょう佐久間盛政が天神山砦てんじんやまとりでに迫った。
 天神山砦には、(盛政にとっては)裏切者の大金藤八郎、山路正国、山路一勝が籠もっていた。

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