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舞台2ー25 終幕1

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 客はそれを見てどよめいた。
 それから暫くしてから大きな歓声が上がったのだ。

 客ははじめて魅せられたのだ。
 指だけでイカされてしまう姿を……失神する姿を……。  

 客は多いに盛り上がった。
 だが、それを失墜させる言葉が客席に降りかかってくる。

 くったりして気を失っている那智を大切そうにそっと抱き上げた主の辰は客席に向かって深々とお詫びをした。

「本日の通常の舞台はこれにて終了とさせていただきます」

 客席からはどよめきと落胆の溜め息が聞こえてくる。

 那智の肌襦袢は一枚。
 いつもなら那智の中に入って交ざりあった統括の正が放った肌襦袢が一枚ある筈なのだ。

 だが、那智を拡張をしたのは主の辰でそんなものは存在しない。
 それも指だけで那智を昇天させたのだから。
 指だけで簡単にそうさせる主の手腕は並大抵のものではない。 

 那智は客たちの落胆が零れる中、なにも知らずに主の腕の中で気を失っている。

「カウントダウンもあったし……」
「いつもとは違う楽しみもあったから」
「しょうがないか……」

 那智のファンたちが諦めたような声を出して肌襦袢のオークションを待つことにした。
 どんなことがあっても最後まで舞台を楽しむファンは礼節を弁えている。暴言を吐いたり暴れたりしない。

 客達が静まるのを見計らって辰は客席を隅々見渡す。
 常連の客が殆どの筈なのに何故か今日は見慣れない客が三人程いるのを目視した。

「肌襦袢のオークションは暫しお待ち戴きたく存じます。たった一枚ではお客様も御満足出来兼ねましょう。きっと気に入るような品をお届けいたします」


 
 客席がざわめく中、最後の舞台は主によって強制終了した。

 那智は那智なりに舞台を大切にしている故のカウントダウンだったとのに……。

 見世物小屋の主の辰は、それを許さなかったのだった。
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