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12 屯所までの道のり 6
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「ねぇ、敬さん…」
沖田は呟くように話しかけた。
無言で過ごすには刻があまりにも無駄な使い方だと思ったからだ。
そう、限られている。屯所までの道のりは沖田にとっては僅かな刻であった。
「何だい…」
穏やかな声が沖田の心を切なくさせる。
思わず走馬灯のように昔に想いを馳せてしまうのだ。
だからつい、こんな言葉がポツリと出てしまう。
「あの頃が…あの頃が一番楽しかった…」
どうして、こうなったんだろう?ただ、生きていく為、強くなる為に、京に来ただけなのに……。
沖田には納得出来なかった。どんなに考えても山南さん……敬さんが屯所から抜け出し、新撰組を捨てようとしたなんて……今でも隣にいる山南さんを見上げたって信じられないでいた。
「そうだな…」
山南はポツリと呟いた。
この僅かな刻が山南にとってとても大切なもののように思えたのは確かなことである。
あの頃を振り返るのにはいい刻かもしれない……。
しかし沖田の心中は複雑だ。
どうして…敬さんと別れる事に…それも法度破り…考えたくない!考えたくないよ、敬さん…
「そんな顔するな、総司。お前は笑顔の方が似合うんだから」
やるせないような今にも泣き出しそうな顔をしている沖田を見ると、抱き締めてやりたい気持ちになる。だが、もう二度とそのようなことは叶いはしないのだからわざわざ思い出のようなものを作って苦しめてしまうのも如何なものだと考えてしまう山南であった。
泣きそうな顔をしよって…そうさせたのは俺か…
「………」
「懐かしいなぁ~道場で皆と汗を流した日々…」
言葉が詰まる沖田を余所に山南は語り始めた。
「酒を呑み交わしながら、この先の将来について誰しも分け隔てなく
討論しあった日々…余りにも昔になった…」
ついこの前の出来事だと思っていたが、余りにも時代の流れが早すぎる。たった数年があっという間に感じるとは…
山南には山南にとってどうしてもやるせなく悔しい思いがあったのである。それを口にすることはないということはわかっていたとしても……。
沖田は呟くように話しかけた。
無言で過ごすには刻があまりにも無駄な使い方だと思ったからだ。
そう、限られている。屯所までの道のりは沖田にとっては僅かな刻であった。
「何だい…」
穏やかな声が沖田の心を切なくさせる。
思わず走馬灯のように昔に想いを馳せてしまうのだ。
だからつい、こんな言葉がポツリと出てしまう。
「あの頃が…あの頃が一番楽しかった…」
どうして、こうなったんだろう?ただ、生きていく為、強くなる為に、京に来ただけなのに……。
沖田には納得出来なかった。どんなに考えても山南さん……敬さんが屯所から抜け出し、新撰組を捨てようとしたなんて……今でも隣にいる山南さんを見上げたって信じられないでいた。
「そうだな…」
山南はポツリと呟いた。
この僅かな刻が山南にとってとても大切なもののように思えたのは確かなことである。
あの頃を振り返るのにはいい刻かもしれない……。
しかし沖田の心中は複雑だ。
どうして…敬さんと別れる事に…それも法度破り…考えたくない!考えたくないよ、敬さん…
「そんな顔するな、総司。お前は笑顔の方が似合うんだから」
やるせないような今にも泣き出しそうな顔をしている沖田を見ると、抱き締めてやりたい気持ちになる。だが、もう二度とそのようなことは叶いはしないのだからわざわざ思い出のようなものを作って苦しめてしまうのも如何なものだと考えてしまう山南であった。
泣きそうな顔をしよって…そうさせたのは俺か…
「………」
「懐かしいなぁ~道場で皆と汗を流した日々…」
言葉が詰まる沖田を余所に山南は語り始めた。
「酒を呑み交わしながら、この先の将来について誰しも分け隔てなく
討論しあった日々…余りにも昔になった…」
ついこの前の出来事だと思っていたが、余りにも時代の流れが早すぎる。たった数年があっという間に感じるとは…
山南には山南にとってどうしてもやるせなく悔しい思いがあったのである。それを口にすることはないということはわかっていたとしても……。
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作者様は沖田に山南を見逃して欲しかったのか、沖田にこそ捕まえて貰って欲しかったのか、半々というところでしょうか。
マスケッター様、
感想ありがとうございます!
そしてお返事が遅くなり大変申し訳ございません。
マスケッター様の仰る通り、沖田さんは半々の気持ちだと思っています。
ジレンマに苛まれながらも任務を全うしなければいけない……
山南さんが本気で逃げないのなら自分の手で連れ帰りたい。
私は史実で山南さんを沖田さんが一人で追いかけ、
連れ戻してるという場面だけでそう思えたのです。
叶うのでしたら……二人で白河藩を歩いて欲しかった!
また、何かありましたらコメお待ちしています。