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6 秘めた想い 4
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山南さんが試衛館に身を置くことになって一番喜んだのは他の誰でもなく、きっと、絶対、俺だった。
俺は好奇心に勝てず時間があれば必ず山南さんの許へ行き、いろんな話を強請った。
山南さんは俺が出合った中で一番の博識者だった。
生まれ育ちが北の方だと知った時は誰よりも親近感を持てた。
俺はいつか住まう筈だった見も知らぬ郷の近くに山南さんは生まれ育った……
それだけでも心が弾んで山南さんが育った郷の話を強請った。
俺の中で山南さんが敬さんになったのはこの頃だった。
敬さんは慈愛に満ちた眼差しでいつも俺を見ていてくれた。
この心地良さは……近藤さんや土方さんからは得られなかったものだった……。
ただ剣を振るい、俺の居場所が出来、それだけが全てだった俺に、それ以外にもいろんな世があることを、人の生き様はそれのみではないことを教えてくれた。
俺は見ることさえ叶わなかった郷を、いつか敬さんと歩いてみたい……
そんな夢を描いていた。
……描いていたんだ!
一度たりとて叶わない……
こんな日が来るだなんて……!
いろんな想いがとめどなく溢れては地面に零れ、なくなっていく……
俺は何処で何を間違ったのだろうか……?
誰も答えてはくれない絶望にただただ重い足を動かすしかなかった……
俺は好奇心に勝てず時間があれば必ず山南さんの許へ行き、いろんな話を強請った。
山南さんは俺が出合った中で一番の博識者だった。
生まれ育ちが北の方だと知った時は誰よりも親近感を持てた。
俺はいつか住まう筈だった見も知らぬ郷の近くに山南さんは生まれ育った……
それだけでも心が弾んで山南さんが育った郷の話を強請った。
俺の中で山南さんが敬さんになったのはこの頃だった。
敬さんは慈愛に満ちた眼差しでいつも俺を見ていてくれた。
この心地良さは……近藤さんや土方さんからは得られなかったものだった……。
ただ剣を振るい、俺の居場所が出来、それだけが全てだった俺に、それ以外にもいろんな世があることを、人の生き様はそれのみではないことを教えてくれた。
俺は見ることさえ叶わなかった郷を、いつか敬さんと歩いてみたい……
そんな夢を描いていた。
……描いていたんだ!
一度たりとて叶わない……
こんな日が来るだなんて……!
いろんな想いがとめどなく溢れては地面に零れ、なくなっていく……
俺は何処で何を間違ったのだろうか……?
誰も答えてはくれない絶望にただただ重い足を動かすしかなかった……
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