恵と凛の妄想幕末... 新撰組を捨てた男  

わらいしなみだし

文字の大きさ
上 下
8 / 14

6 秘めた想い 4

しおりを挟む
 山南さんが試衛館に身を置くことになって一番喜んだのは他の誰でもなく、きっと、絶対、俺だった。
 俺は好奇心に勝てず時間があれば必ず山南さんの許へ行き、いろんな話を強請った。

 山南さんは俺が出合った中で一番の博識者だった。
 生まれ育ちが北の方だと知った時は誰よりも親近感を持てた。
 俺はいつか住まう筈だった見も知らぬ郷の近くに山南さんは生まれ育った……
 それだけでも心が弾んで山南さんが育った郷の話を強請った。

 俺の中で山南さんが敬さんになったのはこの頃だった。
 敬さんは慈愛に満ちた眼差しでいつも俺を見ていてくれた。
 この心地良さは……近藤さんや土方さんからは得られなかったものだった……。

 ただ剣を振るい、俺の居場所が出来、それだけが全てだった俺に、それ以外にもいろんな世があることを、人の生き様はそれのみではないことを教えてくれた。

 俺は見ることさえ叶わなかった郷を、いつか敬さんと歩いてみたい……
そんな夢を描いていた。

 ……描いていたんだ!



 一度たりとて叶わない……

 こんな日が来るだなんて……!

 いろんな想いがとめどなく溢れては地面に零れ、なくなっていく……



 俺は何処で何を間違ったのだろうか……?
 
 誰も答えてはくれない絶望にただただ重い足を動かすしかなかった……

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神楽

モモん
ファンタジー
前世を引きずるような転生って、実際にはちょっと考えづらいと思うんですよね。  知識だけを引き継いだ転生と……、身体は女性で、心は男性。  つまり、今でいうトランスジェンダーってヤツですね。  時代背景は西暦800年頃で、和洋折衷のイメージですか。  中国では楊貴妃の時代で、西洋ではローマ帝国の頃。  日本は奈良時代。平城京の頃ですね。  奈良の大仏が建立され、蝦夷討伐や万葉集が編纂された時代になります。  まあ、架空の世界ですので、史実は関係ないですけどね。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)

三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。 佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。 幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。 ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。 又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。 海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。 一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。 事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。 果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。 シロの鼻が真実を追い詰める! 別サイトで発表した作品のR15版です。

艨艟の凱歌―高速戦艦『大和』―

芥流水
歴史・時代
このままでは、帝国海軍は合衆国と開戦した場合、勝ち目はない! そう考えた松田千秋少佐は、前代未聞の18インチ砲を装備する戦艦の建造を提案する。 真珠湾攻撃が行われなかった世界で、日米間の戦争が勃発!米海軍が押し寄せる中、戦艦『大和』率いる連合艦隊が出撃する。

永き夜の遠の睡りの皆目醒め

七瀬京
歴史・時代
近藤勇の『首』が消えた……。 新撰組の局長として名を馳せた近藤勇は板橋で罪人として処刑されてから、その首を晒された。 しかし、その首が、ある日忽然と消えたのだった……。 近藤の『首』を巡り、過去と栄光と男たちの愛憎が交錯する。 首はどこにあるのか。 そして激動の時代、男たちはどこへ向かうのか……。 ※男性同士の恋愛表現がありますので苦手な方はご注意下さい

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

大陰史記〜出雲国譲りの真相〜

桜小径
歴史・時代
古事記、日本書紀、各国風土記などに遺された神話と魏志倭人伝などの中国史書の記述をもとに邪馬台国、古代出雲、古代倭(ヤマト)の国譲りを描く。予定。序章からお読みくださいませ

柳鼓の塩小町 江戸深川のしょうけら退治

月芝
歴史・時代
花のお江戸は本所深川、その隅っこにある柳鼓長屋。 なんでも奥にある柳を蹴飛ばせばポンっと鳴くらしい。 そんな長屋の差配の孫娘お七。 なんの因果か、お七は産まれながらに怪異の類にめっぽう強かった。 徳を積んだお坊さまや、修験者らが加持祈祷をして追い払うようなモノどもを相手にし、 「えいや」と塩を投げるだけで悪霊退散。 ゆえについたあだ名が柳鼓の塩小町。 ひと癖もふた癖もある長屋の住人たちと塩小町が織りなす、ちょっと不思議で愉快なお江戸奇譚。

処理中です...