恵と凛の妄想幕末２ とある事件

第二部 建白書

第十二話 ２ 了

あのお方と話をしてみたい。
いろんな門を渡り歩き、剣術を学んだと噂で聞いている。
俺の知らない世界を沢山経験していろんな知識を持っている……。
あの方と一緒に仕事がしたい。
まるで恋をするかのように……ずっとその想いを胸に秘めていた。

あのお方は総長の身で俺はしがないただの監察方。
叶わぬ事だと……ずっと諦めていた。

それが……
ある出来事が俺を山南様に引き合わせてくれた……！

俺はこの好機を逃したくなかった。
彼らに出来ることをしたいと思って看続けたが、ずっと辛かった。
でも、それは自分の意思というよりも医師の息子であると云う立場、
強迫観念のような義務的な思いだった気がする。

そんな俺が本心で
「最後まで看たい」と、
貴方と一緒に……と、意思を持った。

本当ならそんな時間など有り得ない……
俺の任務は他の隊士とは違う、特殊任務だ。
それでも身体の許す限り無理をしてでも時間を作った。

憧れの人と少しでも一緒にいられる……。
この空間が嬉しかった。
何よりも心地よく、得難いものであった。

絶対言わない……俺だけの秘密。

二人を看続けるのは苦しく辛いことばかりだったが、
山南様は彼等と俺にも同じように尽くし……癒してくれた。
傷の痛みで苦しみ続ける彼等。
それを看て苦しんでいる俺。
そんな俺たちの拠り所になってくれた……。

局長の近藤さんに呼び止められた。

「山崎、隊務が終わったら俺の部屋へ来い……」

……まただ。
今度は何の任務だろう？

大坂だけは、嫌だな。
またあの遊郭に行くことになるかもしれないから。

近藤さんにすべてを捧げ、ついていくと誓った日から
俺は近藤さんのものになった。

それでも……心の一部までは……捧げられない！

山南様に合わせてくれた奇跡……。
心にはこれがある。

どんな務めも俺は淡々とこなせる。

忠実に。


了