あみdan

わらいしなみだし

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※20xx年 X'masEve  

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 僕は毎年家族でX'masを楽しんでいた。
 
 料理をするようになってから僕が料理担当で父は小さなプレゼントを購入する係、母はクリスマスケーキを購入する係。
 弟の颯汰は彼女が出来てからデートに忙しい筈なのに何故かX'masの日は家族で過ごせるように十七時には帰宅して料理の盛り合わせをしたり運んだりと忙しなく台所とリビングを往復した。
 皆が揃ったら両親は白ワインで僕と颯汰は梅ソーダで乾杯した。
 梅ソーダは毎年青梅が出回る時期に梅ジュースの原液を作りそれをソーダで割ったものだ。
 
 食事が終わって一段落してから父からのプレゼントが家族全員へ配られ、僕も家族全員に手編みのマフラーをプレゼントした。

 そう……X'masは我が家では毎年恒例の特別な家族団欒だった。



 今年は……違う。

 ひとりきりの部屋でこの数日で編んだ三つのマフラーを握りしめた。
 手渡しは出来ない……
 家族だけど今は会えない、会いに行けない。

 僕は……逃げた。

 中学の時と今の僕は全然変わってなかった。
 変わろうとしたのに……無駄だった……。

 逃げ場がない……

 そう思ってたのに唯一の場所を思い出して……逃げた。

 友達なんて……無理だった。
 忘れるなんて……できなかった。

 こんな弱い僕……
 砕けて千木れて消えてしまえば……
 こんなにも辛くならなかったのに……。

 抱き締めたマフラーをひとつずつA4サイズの封筒に入れ、自宅の住所を書く。
 宛先、送り先、全部同じ。
 差出人は……名字だけにした。
 届ける名前は父、母、弟、の名前を書く。

 両親は何も言わなかった。
 僕の勝手を何も聞かずに何処までも許してくれた。

 何もかも知っているかのように僕を待っていてくれてた。
 今度も待っていれくれてる。
 僕が自分の力で復活することを……。

 もう少し、我が儘を許してください。
 
 
 X'mas……みんなはどのように過ごしたのかな?
 
 ちょっと気にはなるけど……もう終わったこと。
 あの場所にもう……帰れない。

 涙はあの日に全部流した。
 もう枯れ果てたから泣くことはない。

 この場所を選んだのは僕自身。
 僕が立っていられる最後の場所……

 それが終わったら……戻るから……

 居場所なんてなくったって、家には必ず……戻ります。


 一番近いのはコンビニだったのでコンビニで発送の手続きをした。
 明日のX'mas、夕方着で申し込んだ。

 外は冷たい雨。

 X'masって晴れているかWhiteX'masのイメージなのにね。
 今年は苦い雨で世を覆っているみたいだ。

 僕の気持ち……そのもののよう。
 
 来年は……誰にでも笑顔になれたらいいな。
 そうじゃなきゃ……今の意味がない。



 じょうちゃん……

 さよならだよ……。
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