あみdan

わらいしなみだし

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女人禁制の☆あみだん☆開始!

66 電話

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「ただいまー」

 チャイムを鳴らし玄関を開けても声が返ってこないし生活音さえ聞こえてこない。静寂そのもの。

 この様子だとまだ誰も帰ってきていないみたいだ。 
 父は仕事で母はパート。
 GWでも両親は普通の平日と変わらない。

 弟の颯汰も帰ってないのはGWでも部活があるのだろう。
 それとも彼女とデートかもしれない。

 リビングの机に今日の戦利品、両手に持っていたパンパンに膨れている買い物袋を置いて冷蔵庫の飲み物を目指した。

 いつも以上に沢山歩いたから喉が渇いて早く潤したい。
 麦茶をコップに注いでガブガブと一気飲み。

「はぁー」

 一声吐き出してコップを流しに置き、買い物袋を持って部屋に籠った。

 駅から降りて反対側の商店街にある馴染みの手芸屋さんへ寄った俺は、そこで部活用のアクリル毛糸の並太五玉入り袋を三袋と、前回購入した麻糸で色違いのオリーブ色と鈍色を五玉ずつ購入して帰ってきたのだ。

 麻糸はもちろん俺用で、この前少ない時間でなんとか編み上げた肩掛けカバンをもうひとつ編もうと思って購入した。

 机の横に買い物袋を置き、ひとつの袋から麻糸を一玉取り出した。
 ベッドのサイドに凭れて座りオリーブ色の麻糸を眺めた。

「細編みかなぁ……」

 長編みじゃなく今度は細編みで編もうかな?そう思って呟いている途中だった。

 リビングから電話が鳴る音がしたので、麻糸を机の上に置いてから慌てて部屋を飛び出して受話器を取った。

「はい……」

 ここ数年から電話に出ても名前を名乗らないようにと、母からのお達しでそのようにしている。
 不振な電話も多くなった昨今、最低限の防御は行うべきなのである。

「鳴海?」

 聞き覚えのある声に俺は吃驚した。

「じょうちゃん?……え?……ど、どうして……?」

 自宅の電話番号なんか教えたことなんかない。
 部活が終わった時間だとはいえ。まだ学校にいる筈……。

「はぁ……。『じょうちゃん』って言うなってあれほど言ったのに……」

「ご、ごめん……」

 思わず吃驚して出てしまったんだから……。
 いつもは細心の注意を払っているから『じょうちゃん』とは言っていない。
 慣れないけど仕方がないので『神崎川』と呼んでいるだけ。

 そんな俺の気持ちなんかお構い無く文句を言ってくる。

「颯汰とお前、兄弟だろ?中学の時、颯汰とは同じ部活だったんだから部員の連絡網で電話番号は知ってる」

 あ、そういうことか……。
 ひとまず落ち着いて用件を聞いた。

「颯汰ならまだ帰ってないけど?」
「用があるのは鳴海。颯汰じゃない」
「そうなの?」

 身に覚えがないんだけど……?
 俺が覚えていないだけなのかな?

「サッカー部の練習試合、観に来るだろ?遠征の方は午前中の試合だから、終わったら……」

 一呼吸置いた声にゴクリと喉音を鳴らして待つ俺。
 俺は何を期待してるのだろう?
 そういえば、観に行く約束してたんだった……!

 思い出している中、耳に届いた言葉に俺は受話器を落としそうになった。

「終わったらさー、デートしようぜ!」
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