307 / 339
女人禁制の☆あみだん☆開始!
66 電話
しおりを挟む
「ただいまー」
チャイムを鳴らし玄関を開けても声が返ってこないし生活音さえ聞こえてこない。静寂そのもの。
この様子だとまだ誰も帰ってきていないみたいだ。
父は仕事で母はパート。
GWでも両親は普通の平日と変わらない。
弟の颯汰も帰ってないのはGWでも部活があるのだろう。
それとも彼女とデートかもしれない。
リビングの机に今日の戦利品、両手に持っていたパンパンに膨れている買い物袋を置いて冷蔵庫の飲み物を目指した。
いつも以上に沢山歩いたから喉が渇いて早く潤したい。
麦茶をコップに注いでガブガブと一気飲み。
「はぁー」
一声吐き出してコップを流しに置き、買い物袋を持って部屋に籠った。
駅から降りて反対側の商店街にある馴染みの手芸屋さんへ寄った俺は、そこで部活用のアクリル毛糸の並太五玉入り袋を三袋と、前回購入した麻糸で色違いのオリーブ色と鈍色を五玉ずつ購入して帰ってきたのだ。
麻糸はもちろん俺用で、この前少ない時間でなんとか編み上げた肩掛けカバンをもうひとつ編もうと思って購入した。
机の横に買い物袋を置き、ひとつの袋から麻糸を一玉取り出した。
ベッドのサイドに凭れて座りオリーブ色の麻糸を眺めた。
「細編みかなぁ……」
長編みじゃなく今度は細編みで編もうかな?そう思って呟いている途中だった。
リビングから電話が鳴る音がしたので、麻糸を机の上に置いてから慌てて部屋を飛び出して受話器を取った。
「はい……」
ここ数年から電話に出ても名前を名乗らないようにと、母からのお達しでそのようにしている。
不振な電話も多くなった昨今、最低限の防御は行うべきなのである。
「鳴海?」
聞き覚えのある声に俺は吃驚した。
「じょうちゃん?……え?……ど、どうして……?」
自宅の電話番号なんか教えたことなんかない。
部活が終わった時間だとはいえ。まだ学校にいる筈……。
「はぁ……。『じょうちゃん』って言うなってあれほど言ったのに……」
「ご、ごめん……」
思わず吃驚して出てしまったんだから……。
いつもは細心の注意を払っているから『じょうちゃん』とは言っていない。
慣れないけど仕方がないので『神崎川』と呼んでいるだけ。
そんな俺の気持ちなんかお構い無く文句を言ってくる。
「颯汰とお前、兄弟だろ?中学の時、颯汰とは同じ部活だったんだから部員の連絡網で電話番号は知ってる」
あ、そういうことか……。
ひとまず落ち着いて用件を聞いた。
「颯汰ならまだ帰ってないけど?」
「用があるのは鳴海。颯汰じゃない」
「そうなの?」
身に覚えがないんだけど……?
俺が覚えていないだけなのかな?
「サッカー部の練習試合、観に来るだろ?遠征の方は午前中の試合だから、終わったら……」
一呼吸置いた声にゴクリと喉音を鳴らして待つ俺。
俺は何を期待してるのだろう?
そういえば、観に行く約束してたんだった……!
思い出している中、耳に届いた言葉に俺は受話器を落としそうになった。
「終わったらさー、デートしようぜ!」
チャイムを鳴らし玄関を開けても声が返ってこないし生活音さえ聞こえてこない。静寂そのもの。
この様子だとまだ誰も帰ってきていないみたいだ。
父は仕事で母はパート。
GWでも両親は普通の平日と変わらない。
弟の颯汰も帰ってないのはGWでも部活があるのだろう。
それとも彼女とデートかもしれない。
リビングの机に今日の戦利品、両手に持っていたパンパンに膨れている買い物袋を置いて冷蔵庫の飲み物を目指した。
いつも以上に沢山歩いたから喉が渇いて早く潤したい。
麦茶をコップに注いでガブガブと一気飲み。
「はぁー」
一声吐き出してコップを流しに置き、買い物袋を持って部屋に籠った。
駅から降りて反対側の商店街にある馴染みの手芸屋さんへ寄った俺は、そこで部活用のアクリル毛糸の並太五玉入り袋を三袋と、前回購入した麻糸で色違いのオリーブ色と鈍色を五玉ずつ購入して帰ってきたのだ。
麻糸はもちろん俺用で、この前少ない時間でなんとか編み上げた肩掛けカバンをもうひとつ編もうと思って購入した。
机の横に買い物袋を置き、ひとつの袋から麻糸を一玉取り出した。
ベッドのサイドに凭れて座りオリーブ色の麻糸を眺めた。
「細編みかなぁ……」
長編みじゃなく今度は細編みで編もうかな?そう思って呟いている途中だった。
リビングから電話が鳴る音がしたので、麻糸を机の上に置いてから慌てて部屋を飛び出して受話器を取った。
「はい……」
ここ数年から電話に出ても名前を名乗らないようにと、母からのお達しでそのようにしている。
不振な電話も多くなった昨今、最低限の防御は行うべきなのである。
「鳴海?」
聞き覚えのある声に俺は吃驚した。
「じょうちゃん?……え?……ど、どうして……?」
自宅の電話番号なんか教えたことなんかない。
部活が終わった時間だとはいえ。まだ学校にいる筈……。
「はぁ……。『じょうちゃん』って言うなってあれほど言ったのに……」
「ご、ごめん……」
思わず吃驚して出てしまったんだから……。
いつもは細心の注意を払っているから『じょうちゃん』とは言っていない。
慣れないけど仕方がないので『神崎川』と呼んでいるだけ。
そんな俺の気持ちなんかお構い無く文句を言ってくる。
「颯汰とお前、兄弟だろ?中学の時、颯汰とは同じ部活だったんだから部員の連絡網で電話番号は知ってる」
あ、そういうことか……。
ひとまず落ち着いて用件を聞いた。
「颯汰ならまだ帰ってないけど?」
「用があるのは鳴海。颯汰じゃない」
「そうなの?」
身に覚えがないんだけど……?
俺が覚えていないだけなのかな?
「サッカー部の練習試合、観に来るだろ?遠征の方は午前中の試合だから、終わったら……」
一呼吸置いた声にゴクリと喉音を鳴らして待つ俺。
俺は何を期待してるのだろう?
そういえば、観に行く約束してたんだった……!
思い出している中、耳に届いた言葉に俺は受話器を落としそうになった。
「終わったらさー、デートしようぜ!」
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
からっぽを満たせ
ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。
そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。
しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。
そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる